Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「分水工を探る」其の20

2019-11-27 23:11:41 | 分水工を探る

「分水工を探る」其の19より

■鷽ノ口円形分水

令和元年11月27日撮影

 

 現在は佐久穂町となっているが、大岳と小山は旧佐久町、佐口は旧八千穂村にあたる。この三つの村の農業用水として大岳川から引かれていた用水は、藤蔓を物差しとして水口の幅を測って水を分けていたと言われ、これを「藤蔓分水」と称したという。江戸時代からあるという分水方式であるが、正確さに欠けることもあり、水争いは絶えなかったという。昭和27年に始まった県営事業によって開田と用水改良が行われ、現在鷽ノ口にある円形分水(円筒分水)が造られたのだという。直径6メートルほどの円形の水槽の真ん中に、逆サイフォン式に水を噴出させ、外周に47個ある直径10センチほどの穴から水を流して分水しているもので、形式は西天竜の円筒分水工と同様である。大岳への分水が28穴、小山は3穴、佐口は13穴という割合で配分されている。分水工の脇に立てられている説明板によると、完成は昭和28年3月だったという。

 逆サイフォンの入口にあたる場所に現在は除塵機が設置されており、ゴミが円形分水工の中に入らないように工夫されているが、実際の穴の様子を見ると、すべての穴から用水が流れておらず、頻繁に穴を塞いでしまうようにゴミが流れ込んでいるのかもしれない。穴の径が10センチほどと小さいことにより、塞がりやすいともいえる。これと似た分水工に「艶三郎の井」として知られている伊那市荒井にある円筒分水工がある。同様に小さな円形の穴から流水しているものだが、艶三郎の井は横井戸から入った水を分けているもので、ゴミが流れて来ない。したがって穴が小さくともゴミによって塞がるということはない。円形分水でありながら、それぞれの水路にはゲートが設けられている。止水用のゲートなのだうが、西天竜には例を見ない姿である。ようはゲートがあれば用水量調整はゲートでも可能となる。


コメント    この記事についてブログを書く
« 「自分は正しい」か | トップ | 大日向へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

分水工を探る」カテゴリの最新記事