Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「おさんやり」①

2019-08-16 23:44:48 | 民俗学

ヨイソレ

 

 送り盆の16日、箕輪町の天竜川左岸にある南小河内で「おさんやり」という行事が行われる。かつて「大堰とともに」と題して3回に分けて南小河内のことについて記した。その際にもこの行事のことについて触れている。昭和62年に訪れたものだから、これもまた昨日記したように、「32年前」のものだ。

 さて、午後8時くらいからと聞いて、少し早めに行ったが、集落内の四辻ではセレモニーが行われていた。箕輪町長と教育長、そして議会議長が挨拶をされていた。昭和62年にこのようなセケモニーがあったと記憶していない。町の無形民俗文化財に指定されているということ、そして地区がこの行事にかける思いもあって、今のような形になったのだろうか。セレモニーが終わるとその前段でも盆踊りが踊られていたようだが、盆踊りが始まった。伊那節や木曽節が定番のように踊られたが、おさんやりの始まる直前には「ヨイソレ」が踊られた。音楽の入らない、素朴なもので、もちろん口頭で唄は歌われる。動きもそれほどなく、派手な踊りではない。題名になっている「ヨイソレ」は唄の掛け声からきている。南小河内独自のものというが、似たものは「エーヨー節」と言われてあちこちで踊られた。「新盆の迎え」の中で六道地蔵尊で踊られた踊りについて触れた。

たむらからきて ありゃこのさわぎ

 おゆるし下さい おむらかた

 サ ヨーイ ソレ

(返し歌)

たむら若いしゅう よくきてくれた

 さぞやぬれつら エーヨー まめの葉で

というものだったが、ここにも「ヨーイソレ」の掛け声が入っている。もちろん歌詞はどこでも同じようなものが歌われたから、むしろ踊りが独特ということになるのだろう。『南小河内区誌』(南小河内区誌編集委員会編 2019年)踊りの図が掲載されている(339頁)。フリーハンドで描かれた図ははっきりいってイメージがわかないので、図に添え書きしてある説明をここに引用してみる。

①円の中心に向いて右足を前へ1歩踏みこみ、両手は左右斜め下へ払う。

②左足へ体重を移して戻り

③胸の前で手を打つ。両足は揃っている。

④円周の左を向き、右を前に出して軽く地面を叩くように空足を踏む。手は脱力して下げている。

⑤右足を下ろして体重をかける。

⑥左足を出して空足。

⑦左足を下ろして体重をかける。

⑧体を円の中心よりやや右へ向け、右足を右後ろに下げて1歩踏む。(踊りは右回り)

と言った具合に繰り返していくようだ。手の動きがないのが特徴らしい。

 歌詞がたくさん掲載されている。例えば

ギスじゃあるまい瓜ばかくれて なんで糸目が出るものか

盆にゃおいでよ八月盆だ 死んだ仏も盆にゃ来る

他村若い衆よく来てくれた さぞや濡れつら豆の葉で

これらは周辺でもよく聞かれたもの。そして、最後に歌うものが

あまり長いと大座が冷める ちょいとここらで一休み

だという。このほか卑猥なものはどこにでもあった。

うちの母ちゃん洗濯好きで 夜の夜中に竿探す

差した盃 中見て上がれ 中にゃ鶴亀五葉松

と言ったもの。

続く


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