Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ブランドトマト

2008-10-07 12:25:38 | 農村環境
 先ごろ祭りで生家を訪れた際、ご馳走として並んだものは、兄が飯田からの帰りに途中の大型店などで購入してきたものだという。かつては身近にもあったそうした商品を扱う店も、今はだいぶ姿を消してしまった。40年ほど前なら地域にあった農協支所や食料品店。30年前から20年前なら町にあった地元の共同大型店舗。10年前あたりから怪しくなって、地元にはなかなか思うような商品を扱う店はなくなった。もちろんわたしも生家から出て暮らしているからここ数年の傾向というものは解らない。同じ町でしかも近いとろこにはなかなかないため、隣の村のスーパーを利用するようになったという話は聞いていた。そこも当初の経営とは形を変えて運営しているようだが、駒ヶ根駅前で営業している店と同じ系列でやっているというから、村のスーパーといってもそこそこの店である。我が家からもそう遠くないということもあって、妻が実家通いをしない時なら利用する第一候補かもしれない。

 そんな第一候補の店へコーヒー飲みがてら妻は買い物に出かけた。ふだんは実家の農業勤務の傍らでそうした買い物は済ませているから、それほど買い物というほどのものではないが、久しぶりに我が家から実家通いとは違う目的で出かけていった。これを観光と我が家ではいう。ようはそのくらいしか妻にとってのいわゆる外出はないからだ。その店にはマイカップを持参で行くと、150円でコーヒーが飲める店がある。久しぶりに行く妻は「もう無くなっているかも」と心配していたが、まだ営業をしていたらしく、帰りにはコーヒーを購入してきた。さっそくわたしは封を開けて香り豊かなコーヒーを飲むことになった。

 妻は帰り道に片桐西原の赤そば祭りにも寄ってきた。前々から赤そばが評判になっているものの、家の近くだと言うのに見たことがないという。すぐそこだから帰りに見てくれば、と言ったところ寄ってきたというのだ。そこで完璧に観光客の一人となって赤そば畑を観察してきたようだ。加えて祭りで売られていたトマトジュースが安売りしていたといって手に入れてきた。以前にも触れたことがあるGOKOアグリファクトリーで生産されたトマトのジュースだという。わたしもその後結局飲んだこともなかったのでとても興味深かった。妻も実家に持っていって飲んだらみんなが「美味しい」と言って飲んだらしく、高級ジュースに感激していた。ということでわたしも飲んでみたのだが、第一印象は「軽い」という感じである。いわゆる従来のトマトジュースのようなどろどろとした重さはない。わたしに言わせると「土っぽくない」というものである。確かに高級感があって人気を得そうだが、750mlで1260円という値段ではなかなか手が出ない。そんな高級ジュースに添付されていたパンフレットを見ていて「唖然」としたのである。そこには、

“「子供たちに安心して食べさせられるものを」をモットーに農産物の加工業界を切り拓いてきた○○○○氏の工房とのコラボレーション。着色料や添加物は一切不使用。‘樹なり完熟とまと’のうまさや力強さが見事に活きています。”

とある。○の部分は個人名が記されているがあえて表示しなかった。営業妨害になってはいけないというわたしの計らいである。妻の家と○○氏は関係がある。妻は○○の名前が明記されている加工ジュースは絶対に買うことはない。それを我が家でパンフレットを見ていてようやく気がついたのである。わたしはてっきりGOKOアグリファクトリーで加工まで手がけているのだと思ったら、なんとこれほど高級なジュースなのに加工は妻の実家の近くの農産加工場。これは本当にわたしもびっくり。「美味しい」と言っていた妻も少し幻滅したようだが、それでもこの美味しさは「トマトのせい」と言い聞かせていた。しかし、前述したような売りの「子供たちに安心して食べさせられるものを」というフレーズはしぼんでしまった。

 ○○氏について「農産物加工のカリスマ」などと紹介されているという。だいたいがどこかに地域おこしのカリスマという人もいたが、つき合ってみるとずいぶん怪しい人が多い。


 以前にも触れたようにこのトマト工場は、「土を使わず、工場内をできるかぎり無菌状態へ近づけることにより薬品の使用を極度に減少させています。廃液循環利用などのクローズドシステムを採用した環境保全型工場です」という。工場からは土の匂いはしないが、商品になるまでにきっと土の香りをふんだんに交えているのかもしれない。以前にも自らこんなことを書いた。「衛生的といえばそのとおりなのだが、そこからは土の香りはまったくしない。超衛生的なトマトと、土臭いトマト、何年もすると、前者のトマトでないと若者が食べなくなるかもしれない」。まさにそんな雰囲気が十分にあると感じたトマトジュースである。
 ちなみに、妻に言わせると本当のトマトジュースはこんな具合に「軽い」という。
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