国際開発学辞典

2019年03月21日 15時13分25秒 | 社会・文化・政治・経済
 
国際開発学会 (編集)

商品の説明

内容紹介

火種にならない国際支援、人的支援を含む効率的な援助とは何か。

現地とどのように合意形成を行うか。

諸分野にまたがる国際開発学を写真や図を交えながらそれぞれの専門家が1項目2pで解説。経済・政治・社会学・人類学、さらには教育学・経営学・農学・工学などにもまたがる国際開発学の全貌を概観できる。

「読み物として、背景や事例を論じつつ説明してくれる」事典。

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国際開発学会は、法学、政治学、経済学、経営学、社会学、教育学、文化人類学、工学、農学、医学等、従来各学問分野で発展してきた開発問題に関する知識、経験体系を集約 し「国際開発学会」という横断的な学術的研究組織として活動を展開しています。また、この学会活動を通じて開発研究および開発協力に従事する人材の養成に 貢献することを目的としています。



会長挨拶

 
 
 2000年に新しいミレニアム(千年紀)が始まってから15年にわたり、ミレニアム開発目標(MDGs)が国際開発の旗頭の役割を果たしてきました。
MDGsは、前世紀の国際開発の反省の上に立ち、究極目標として貧困削減を掲げました。
MDGsは、国際開発の理想主義を象徴しており、先進国の援助サークルであるOECD/DACも、MDGs達成のために「援助効果向上」や「援助協調」といった理念を掲げました。
これらの理念と対照をなす、国益や経済的動機は、この時期、国際開発の表面には現れませんでした。この時期には、国益や経済的動機を明示的に国際開発の理由とすることについては、誰しも躊躇がありました。
 
 ミレニアム開発目標適用期間の後半から現在にかけて、このような理想主義に対する反動が生じているように見えます。
2015年にMDGsが「持続可能な開発目標(SDGs)」に引き継がれてからは、よりこの反動が強まっています。
反動の中心は自国第一主義や単独行動主義(unilateralism)です。
SDGsはその対象範囲が広く、縛りも弱いため、誰もがそれぞれの目的のために依拠可能です。
その普遍性原則(universality)のため、MDGsと異なり、先進国も受益対象となっています。
 
 このようなSDGsの広い対象範囲設定によって、(それが意図されたかどうかは別にして)SDGsの時代になってから、開発途上国の人々の貧困削減への関心は、相対的に弱められています。
私は、国際開発学会(JASID)の会員は、世界の人々に対して、開発課題がまだまだ深刻な状態にあることを、強く主張していくべきだと考えています。
貧困による栄養不良、資金も人員も不足している教育環境、治療も予防も不十分な感染症対策、視覚的にも嗅覚的にも明らかな廃棄物処理問題、足を踏み入れるのに躊躇する住居群、日常的な犯罪・暴力リスク、天災への備えの脆弱さ、性別・出自等に基づく不平等、といった開発課題は、地球上の何十億もの人々にとって、今日でも死活的な問題です。
これらの課題に対する取り組みの成果は、前世紀や、MDGs時代に、一定程度上がりました。それでもなお、完全に課題解決を遂げるだけの努力はまだまだ必要です。
 
 これら開発課題に実践的に対処する学問の学際的団体である国際開発学会の会員は、常に現実の開発途上国の問題に対して、発言の面でも実践の面でも積極的に関わっていくべきです。
私はJASIDの会長として、会員の皆様が、日本社会や国際社会に対して積極的に発言したり、実際に国際協力にたずさわったりすることを促したいと思います。
JASIDは学際的な団体ですから、会員同士が協力し、知恵を分かち合うことにより、より効果的な貢献を行うことができます。
そしてそのような協力のスコープは、韓国国際開発協力学会(KAIDEC)のような海外の学会にまで広がっています。
 
これまでの国際開発により、多くの開発途上国において、かなりの程度の貧困削減、社会開発が成し遂げられてきました。国際社会の一員として、私たちもそのことを誇りに思ってよいと思います。
しかし、そのような目標達成が、いまだ道半ばであることも我々は知っています。貧困、非識字、差別、強制移住・労働、紛争・暴力、環境破壊、地球温暖化といった課題はまだまだ大きな開発課題として残っています。私の任期の間、私は学会の旗振り役として、これらの課題に対して会員の皆様と共に取り組みたいと思います。1990年に本学会が設立されて以来、過去9期の会長がなさってきたように、私もJASIDの先頭に立って、国際開発の課題解決に尽力することを、ここに誓います。
 
2017年11月25日
第10期会長
山形辰史
 


開発研究に携わる関係者の皆様は、本学会においてますます研究と交流を深めていって頂けたら幸いです。

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