検証 毎日新聞 2022/7/19
銃撃事件直前、安倍晋三元首相の演説現場に立つ山上徹也容疑者とみられる男性=奈良市の近鉄大和西大寺駅周辺で8日午前11時22分ごろ、久保聡撮
奈良市内で参院選の街頭演説をしていた安倍晋三元首相(67)を銃撃した山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=は、現場で警察官に取り押さえられた。
抵抗するそぶりはほとんど見せず、暴れることもなく終始無言だったという。その姿にはむしろ、脱力感さえ漂っていた。山上容疑者は白昼堂々、安倍氏を銃撃することにどんな「意味」を見いだそうとしていたのか。
大渕憲一氏 銃撃は「誤った方向で自分の存在意義かけたか」
深掘り 大治朋子
毎日新聞 2022/7/18 11:31
大渕憲一・東北大学名誉教授(社会心理学)=本人提供
奈良市内で参院選の街頭演説をしていた安倍晋三元首相(67)を銃撃した山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=は、現場で警察官に取り押さえられた。抵抗するそぶりはほとんど見せず、暴れることもなく終始無言だったという。その姿にはむしろ、脱力感さえ漂っていた。山上容疑者は白昼堂々、安倍氏を銃撃することにどんな「意味」を見いだそうとしていたのか。
人の攻撃性や犯罪心理に詳しい大渕憲一・東北大学名誉教授(社会心理学)に話を聞いた。【大治朋子】
独善的視点からの「世直し」的な思考も
今回の事件の背景には、特定の宗教団体への強い恨みがあるようだ。宗教団体トップへの襲撃を計画したり、安倍晋三元首相を狙ったりしており、なるべく目立つ形でやりたいという気持ちもあったのかもしれない。
安倍氏を標的とするようになった過程はまだ分からないが、宗教団体トップが狙いにくかったというこ…
犯行を「一つのパフォーマンス」ととらえ、捕まらないことよりも「見せ場」を重視する。
テロに共通するような、独善的視点からの「世直し」的思考もあったのかもしれない。
そこには「より大きな社会問題として告発した」という「義憤」のような感情と、同時に「自分の存在を社会にアピールしたいうゆがんだ自己顕示欲」も垣間見える。
ゆがんだ正義感に基づき物事を暴力的に解決しようとする暴力的過激主義の根底には、「自己実現の感覚」がある。
そんな「世直しの聖戦」を自己犠牲のもとに完遂することが「天命であり、使命」と思い込んでいく。
共通する過激化プロセスの「起点」は、個人的な苦悩や不満だ。
やがて社会性や政治性を帯びて「大義」として昇華され、第2のステップ、物語の生成へとつながっていく。
「自分=善」「他人=悪」といった善悪二元論に発展。
心理学で「非人間化」と呼ばれる認知のゆがみで、自身を「巨悪に一人立ち向かう英雄」と見なし、使命感を燃やすのだ。
その過程で、犯意を漏らしたり、思想を書いて残したりすることもある。
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