それでも誰にも頼らず、夜の街をさまよったり、SNS(交流サイト)上で、その日泊まる場所を探している。
関係をつくるのは難しく、支援につながること自体を選んでもらえない場合が多い。
特定非営利活動法人 BONDプロジェクト
創設者ルポライターの橘ジュン氏は、30年近く前から、終電が終わっても新宿や渋谷の街に留まっている少女たちを見て「なぜここにいるのか」気になり、声をかけ、彼女たちの思いに耳を傾けてきた。
話を聴くうちに、少女たちは家にも学校にも居場所が無く、トラブルに巻き込まれていても信頼できる相談相手もいないことがわかる。
それを記事にして世の中に発信していたが、目の前にいる少女たちに自分たちが出来ることは何か?と2009年にBONDプロジェクトが始まった。
渋谷を中心とした街頭パトロールやアンケートの実施。必要によってはシェルターでの一時保護。少女たちの「声」を伝えるフリーマガジンVOICESの発行。
メールや電話での相談の受付。そして弁護士や行政機関、医療機関などの専門家へ繋ぐ。活動の中心はSNSを使用した相談になりつつあり、LINE相談を週5回行っている。
いずれの活動でも本人に直接会って「大丈夫。一緒にどうするか考えよう」が活動の基本。これまでに3,000人以上の少女たちの相談にのってきた。
2006年の頃から「VOICESマガジン」というフリーペーパーを自費出版で発行していて、私はライターで、パートナーでカメラマンのケンと2人で街に出て、気になる子に声をかけて話を聴かせてもらっていました。
渋谷、新宿の街、バスの中や新幹線でも気になった子がいれば、VOICESを見せながら「こういった本を作っている者なんだけど…」と、声をかけてました。深刻な問題を抱えている女の子たちと出会い、だんだんと聴いて伝えるだけではどうにもならない子との出会いも増えて、相談を受けられる体制を作って活動していこうと、「10代20代の生きづらさを抱える女の子のための女性による支援」BONDプロジェクトを2009年に設立しました。
終電が終わってから街に出て、気になる子に声をかけていたので、「帰れないけど、今日はどうするの?」と聞くと、家出している子が多かった。
親から暴力を振るわれていて家に帰りたくないとか、母親の彼氏が家にいるから嫌だとか家出の理由はさまざま。
「夜の街は危険もいっぱいあるから気を付けてね、なにかあれば連絡してね」と、携帯番号を交換しながら、出会いを繰り返していました。
帰れる場所、自分らしくいられる場所、ホッとできる時間…。感覚的な意味合いでの「居場所」を求める少女たち。
行くあてもなくどうしていいかわからずに立ち止まり、一人佇んでいる子、家族や人間関係で悩んでいたり、住む場所がない、仕事がない、お金がない、頼れる大人がいないと口にする子もいました。
ある16歳の女の子の言葉を紹介します。
「家出するほど家が嫌なんだよ。家出したいと思わない環境が羨ましい。そんな家庭に生まれたかった」。
親から邪魔者扱いされたり、「生まなきゃよかった」と、言われたり、自分の分だけ食事が用意されていなかったり、暴力を振るわれたり…。
一見、外見や話し方からでは想像もつかないような壮絶な虐待家庭で育った女の子もいます。
しんどい、逃げたいと思って家出をすれば、世間では非行という行動に捉えられますが、生きるために家出をする子もいるのです。
「シングルマン」という映画のワンシーンに好きな台詞があります。
「ほんの数回だけ他者と真の関係を築けたことがある。それだけが僕の人生に意味を与えてくれた」。
女の子たちとこんなふうに意味のある時間は過ごせないかもしれないけれど、家族でも学校の先生や友だちでもない私たちが、少しでも安心できる存在になれたらいいなって思っています。
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