

ベンジャミン・クリッツァー (著)
現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著
──帯文・東浩紀
ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。
哲学といえば、「答えの出ない問いに悩み続けることだ」と言われることもある。だが、わたしはそうは思わない。悩み続けることなんて学問ではないし、答えを出せない思考なんて意味がない。哲学的思考とは、わたしたちを悩ませる物事についてなんらかのかたちで正解を出すことのできる考え方なのだ。(…)
この本のなかでは、常識はずれな主張も、常識通りの主張も、おおむね同じような考え方から導きだされている。それは、なんらかの事実についてのできるだけ正しい知識に基づきながら、ものごとの意味や価値について論理的に思考することだ。これこそが、わたしにとっての「哲学的思考」である。(…)倫理学のおもしろさ、そして心理学をはじめとする様々な学問のおもしろさをひとりでも多くの読者に伝えることが、この本の最大の目的である。(「まえがき」より)
【目次】
■第1部 現代における学問的知見のあり方
第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない
第2章 人文学は何の役に立つのか?
第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか?
■第2部 功利主義
第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない
第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由
第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義
■第3部 ジェンダー論
第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか?
第8章 「ケア」や「共感」を道徳の基盤とすることはできるのか?
第9章 ロマンティック・ラブを擁護する
■第4部 幸福論
第10章 ストア哲学の幸福論は現代にも通じるのか?
第11章 快楽だけでは幸福にたどりつけない理由
第12章 仕事は禍いの根源なのか、それとも幸福の源泉なのか?
終章 黄金律と「輪の拡大」、道徳的フリン効果と物語的想像力
──帯文・東浩紀
ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。
哲学といえば、「答えの出ない問いに悩み続けることだ」と言われることもある。だが、わたしはそうは思わない。悩み続けることなんて学問ではないし、答えを出せない思考なんて意味がない。哲学的思考とは、わたしたちを悩ませる物事についてなんらかのかたちで正解を出すことのできる考え方なのだ。(…)
この本のなかでは、常識はずれな主張も、常識通りの主張も、おおむね同じような考え方から導きだされている。それは、なんらかの事実についてのできるだけ正しい知識に基づきながら、ものごとの意味や価値について論理的に思考することだ。これこそが、わたしにとっての「哲学的思考」である。(…)倫理学のおもしろさ、そして心理学をはじめとする様々な学問のおもしろさをひとりでも多くの読者に伝えることが、この本の最大の目的である。(「まえがき」より)
【目次】
■第1部 現代における学問的知見のあり方
第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない
第2章 人文学は何の役に立つのか?
第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか?
■第2部 功利主義
第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない
第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由
第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義
■第3部 ジェンダー論
第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか?
第8章 「ケア」や「共感」を道徳の基盤とすることはできるのか?
第9章 ロマンティック・ラブを擁護する
■第4部 幸福論
第10章 ストア哲学の幸福論は現代にも通じるのか?
第11章 快楽だけでは幸福にたどりつけない理由
第12章 仕事は禍いの根源なのか、それとも幸福の源泉なのか?
終章 黄金律と「輪の拡大」、道徳的フリン効果と物語的想像力
著者について
ベンジャミン・クリッツァー(Benjamin Kritzer)
1989年京都府生まれ。2014年に大学院(修士)を修了後、フリーターや会社員をしながら、ブログ「道徳的動物日記」を開始(2020年からは「the★映画日記」も開始)。
1989年京都府生まれ。2014年に大学院(修士)を修了後、フリーターや会社員をしながら、ブログ「道徳的動物日記」を開始(2020年からは「the★映画日記」も開始)。
批評家として、倫理学・心理学・社会運動など様々なトピックについての記事をブログやWebメディアに掲載。
論考に「動物たちの未来は変えられるか?」(『atプラス 思想と活動』32、太田出版、2017年)、「ポリティカル・コレクトネスの何が問題か アメリカ社会にみる理性の後退」(『表現者クライテリオン』2021年5月号、啓文社書房)、「ウソと「めんどくささ」と道徳」(『USO 3』、rn press、2021年)などがある。
道徳とは、人生をいかに生きるべきかを示す規範である。
そして、哲学が本来目指すところも、正しい生き方の探求であるはずだ。
だが、現代の哲学は過度に専門化し、今や哲学は「答えの出ない問いに悩みつづけること」であるかのような印象すらある。
本書は、隘路に迷い込んだ現代哲学を、原点に立ち戻らせる試みとも言える。
著者は道徳を扱う哲学である倫理学の知見を主に踏まえ、生き方の規範と物事の価値について根源的な問い直しを、さまざまな角度から展開している。
「哲学的思考とは、私たちを悩ませる物事について何んらかのかたちで正解を出すことができる考え方」という著者の信念を、実践して見せるのだ。
<幸福とは何か>という最大級の難問に、正面から挑んでいる。
道徳は<よく生きるための知恵>として鮮やかに蘇生させる。(原)
左翼思想を知ろうとなると
肯定的か否定的かでしか語られず
そういったものを求めていないものにとって
俯瞰的に思想家達が一体何を考えどのような問題があるかを理解するのに助かる。
道案内としては◎であるが。
そのような捉え方ができる著者であるからこそ著者なりのもっと踏み込んだ主張なり考えが欲しかった。
肯定的か否定的かでしか語られず
そういったものを求めていないものにとって
俯瞰的に思想家達が一体何を考えどのような問題があるかを理解するのに助かる。
道案内としては◎であるが。
そのような捉え方ができる著者であるからこそ著者なりのもっと踏み込んだ主張なり考えが欲しかった。
善悪の問題から幸福や人生の問題など、哲学的なテーマが、進化論や心理学を主とする自然科学の観点からわかりやすく紹介されています。
参考文献は多数ありますが知識量や権威を誇示するようなところもなく、各文献の重要なポイントがわかりやすく引用されています。
文体は素直で、若者らしさが感じられます。特にロマンティック・ラブについて語る9章が面白く読めました。
ぜひ、多くの方に読んでもらいたいです。
参考文献は多数ありますが知識量や権威を誇示するようなところもなく、各文献の重要なポイントがわかりやすく引用されています。
文体は素直で、若者らしさが感じられます。特にロマンティック・ラブについて語る9章が面白く読めました。
ぜひ、多くの方に読んでもらいたいです。
この10年ほどで話題となっている哲学系トピックについて、著者がピックアップした書籍の内容を丁寧かつ分析的にキュレーションした本という印象を受ける。(ただし、私は個人的嗜好から、著者が最も力を入れているであろう第3章については読めずにこのレビューを書いている)
「なるほど、こういった問題ってこの文脈や文献で議論されてるんだな」と知見や、逆に、「お、確かにそういった議論ってこれまでされてなかった気がする...」という気づきを与えてくれる。
個人的には、男女の道徳観の差異についてはずっと悩んでいたので、本書で紹介されていた「正義の倫理」「ケアの倫理」の議論は目から鱗だった。
「なるほど、こういった問題ってこの文脈や文献で議論されてるんだな」と知見や、逆に、「お、確かにそういった議論ってこれまでされてなかった気がする...」という気づきを与えてくれる。
個人的には、男女の道徳観の差異についてはずっと悩んでいたので、本書で紹介されていた「正義の倫理」「ケアの倫理」の議論は目から鱗だった。
まず自分はフェミニストというものが嫌いである。
そして鶏肉が大好きで、週に何度も冷凍から揚げをつまみにビールを飲んでいる。
書評ブログからこの本を見つけ、何か新しい知見が得られそうですぐさま手に取った。
古今東西の哲学、倫理学の書における考え方を整理してあり、"今"と"これから"を生きるための思考の前提となるように、あとがきにもある通り"中庸"な立場から解説し、時たまやんわりと(決して決めつけたり、断定するわけではない)著者の考えが挟まれる構成が、無学な癖に否定的な自分にもなじんでいった。
期待していたジェンダー論にはもちろんだが、「何を今さら…」と読み始めた第四部の幸福論が一番面白く感じられた。
社会的な生活を営む大人であればそれぞれの価値観で独自の幸福論はあるものであろうが、これについても古来からのいくつかの考え方を示し、対比し、そして著者の視点を交えることで、改めてこれを読み手に「幸福とはなにか?」を考えさせる内容であった。
現状、アカデミックな組織に属さず、恐らく一社会人として多くの読書により得られた知見を整理し、このような文章にまとめられた著者には感服する。
次回作も必ず読ませていただきたい。
(鶏肉のから揚げをビールで流し込みながら)
書評ブログからこの本を見つけ、何か新しい知見が得られそうですぐさま手に取った。
古今東西の哲学、倫理学の書における考え方を整理してあり、"今"と"これから"を生きるための思考の前提となるように、あとがきにもある通り"中庸"な立場から解説し、時たまやんわりと(決して決めつけたり、断定するわけではない)著者の考えが挟まれる構成が、無学な癖に否定的な自分にもなじんでいった。
期待していたジェンダー論にはもちろんだが、「何を今さら…」と読み始めた第四部の幸福論が一番面白く感じられた。
社会的な生活を営む大人であればそれぞれの価値観で独自の幸福論はあるものであろうが、これについても古来からのいくつかの考え方を示し、対比し、そして著者の視点を交えることで、改めてこれを読み手に「幸福とはなにか?」を考えさせる内容であった。
現状、アカデミックな組織に属さず、恐らく一社会人として多くの読書により得られた知見を整理し、このような文章にまとめられた著者には感服する。
次回作も必ず読ませていただきたい。
(鶏肉のから揚げをビールで流し込みながら)
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