ジャック・マーは中国当局に「消された」のか? 中国を逃れた不動産王の予言が話題に

2021年01月06日 11時35分37秒 | 社会・文化・政治・経済

1/5(火) 17:07配信

ニューズウィーク日本版

<2カ月にわたって公の場に姿を現さず、ツイッターも更新していないアリババ創業者に何が起こっているのかをめぐり、憶測が飛び交っている>

ジャック・マーはどこに行った? Charles Platiau-REUTERS

中国の電子商取引大手アリババと傘下の金融会社アント・グループの創業者である馬雲(ジャック・マー)が行方不明になっている──複数のメディアがこう報じたことを受けて、ソーシャルメディア上では、米在住の中国人不動産王が「マーは殺されるか収監される」と予想した動画が拡散されている。【イワン・パーマー】

●不動産王・郭文貴の予言を見る

500億ドルを超える純資産を保有し、かつては中国の富豪ランキングのトップに君臨したマーは、ここ2カ月ほど公の場所に姿を見せていない。審査員として出演もしていた起業家育成コンテスト番組「アフリカズ・ビジネス・ヒーローズ」も、11月に行われた最終回の収録には参加せず、代わりにアリババ幹部の彭蕾(ルーシー・ペン)が代役を務めた。

英フィナンシャル・タイムズ紙は、マーの番組降板は「スケジュールの調整がつかなかったため」と報道したが、同番組の最終回に出演したある起業家は、「中国ではジャック・マーの周辺で何かが起きているようで、代わりの人物(ペン)が出演した」と述べた。

<金融規制の批判が原因か>

マーが「行方不明」になっていることには、彼が2020年10月に上海での演説で、中国の金融規制当局を「老人クラブ」と批判したことが関係しているのではないかと言われている。彼は上海の会合で、「現在の金融システムは産業化時代の遺物だ」と批判。「私たちは次の世代と若い人々のために、新しいシステムをつくらなければならない。現在のシステムの改革をすべきだ」と主張した。

そこで改めて注目されツイッター上で拡散されているのが、2019年9月に収録されたあるインタビュー動画だ。インタビューを受けているのは、中国指導部の汚職疑惑を暴露し、2014年に国外逃亡した不動産王の郭文貴。金融メディア「リアル・ビジョン」のインタビューで2019年9月にアリババの会長を退いたジャック・マーの今後について聞かれた郭は、「道は2つしかない」と指摘している。「中国の大富豪の末路は、収監か死。そのいずれかだ」と語った。インタビューを行ったカイル・バスはこう聞き返した。「つまりマーは刑務所に行くか、殺されるかだ、ということですね」

郭はさらに、アリババ傘下の民間金融会社アント・フィナンシャル(現在はアント・グループ)が中国政府にとって「大きな問題」を引き起こしていると指摘した。同社は中国の銀行制度に打撃をもたらしており、中国政府としてはアントを「なくしたい」のだと述べた。

<ツイッターも2カ月更新なし>
実業家で投資家のジェイソン・カラカニスはツイッターにこの動画を投稿し、「これはわずか1年前のインタビューだ。ジャック・マーはどこに?」とコメントした。保険会社キュラセルの創業者ヘンリー・マスコットはこう書いた。「この人物は、ジャック・マーが中国共産党によって収監または殺害されるだろうと予想した。そして1年と少し経った今、マーは2カ月にわたって行方が分からない」

中国の規制当局は2020年12月、アリババについて独占禁止法違反の疑いで調査を開始した。(マーが上海で演説を行った直後の)11月には、世界最大のIPO(新規株式公開)になると予想されていたアント・グループのIPOも阻止した。

マーは2020年10月10日に、英ウィリアム王子をはじめとする世界の投資家たちと共に環境賞の「アースショット賞」に協力すると投稿して以来、ツイッターを更新していない。

<【タイムライン】「消えたジャック・マー」の足跡>
2020年10月

ジャック・マーは10月24日に上海で開催された公開討論会に出席。中国の金融システム規制を「老人クラブ」と呼んで中国の当局者たちの神経を逆なでしたものと思われる。

マーは、次のようにも述べた。「古い方法で未来を規制することはできない。中国にはシステミック・リスクはない。そもそも金融システムがないからだ。システムの欠如こそが(中国の)リスクだ」

2020年11月

10月のフォーラムの後、マーは中国の金融規制当局者たちから非公開(密室)の会合に呼び出しを受けた。その翌日の11月3日、当局は中国と香港で予定していたアント・グループのIPO(新規株式公開)を延期させた。

会合で何が議論されたのかは不明だが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、アント・グループは、少なくとも344億ドルの調達が見込まれていたIPOに応募していた投資家たちに、応募資金を返金する計画だと述べた。上場予定時期のアント・グループの評価額は、3000億ドルを超えていた。

中国の当局者たちは、アント・グループが中国で独占的地位を築く可能性を懸念したとみられている。またマーの10月の発言も、事態を複雑にしたのではという憶測がある。

2020年12月

12月20日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、マーが中国の規制当局に「国が必要とするなら」アント・グループの一部を譲渡すると申し出たと報じた。だが当局者たちはマーの申し出を退け、信用格付け事業の再編を要請し、さらに同社の一連の違反行為を摘発したと言われている。

アント・グループからの声明発表はあったものの、マーの姿が確認されることはなかった。同社は、規制当局からの要請に応えるために「調整」作業部会を設置しているところだと述べた。

12月27日、同社はCNBCに宛てた声明で次のように述べた。「当社は金融規制当局者たちの助言と手助けに感謝している。今回の調整はアント・グループにとって、事業基盤を強化し、規制を完全に順守しつつ成長を遂げていくための、そして引き続き社会の利益のため、小規模事業のための革新に重点を置いていくための機会である」

4日後の12月31日にはフィナンシャル・タイムズ紙が、マーが審査員として出演を予定していた起業家支援番組「アフリカズ・ビジネス・ヒーローズ」の最終回に参加しなかったと報じた。最終回の収録は11月だった。

マーは同番組の審査員ページ、および番組のPR動画の両方から削除された。

2021年1月

1月4日、アリババの広報担当者はロイターに対し、マーが同番組に参加しなかったのはスケジュールの調整がつかなかったためだと説明したが、それ以上のコメントは控えた。

 

 

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中国、コロナ調査団入国なお認めず WHOトップ「失望」

2021年01月06日 11時35分37秒 | 医科・歯科・介護

1/6(水) 3:33配信

ロイター

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、中国が依然として新型コロナウイルス発生源を巡る国際調査団の受け入れを許可していないことに「深く失望」していると述べた。北京のワクチン登録所で3日撮影(2021年 ロイター)

[チューリヒ 5日 ロイター] -     世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、中国が依然として新型コロナウイルス発生源を巡る国際調査団の受け入れを許可していないことに「深く失望」していると述べた。

テドロス事務局長は、中国当局が調査団の入国に必要な最終認可をしていないことをこの日把握したとし、コロナ起源に関する調査が「WHOの優先課題であると再度明確にする」と強調。中国当局と連絡を続けていると語った。

調査団は過去24時間以内に中国に向かい、5日から調査に着手する計画となっていた。

WHOの緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は「ロジスティックおよび行政上の問題にすぎず、数時間以内にも解消されることを望む」と述べた。

*内容を追加しました。

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ワクチン接種の2日後…医療関係者の女性死亡

2021年01月06日 11時35分37秒 | 医科・歯科・介護

1/6(水) 7:28配信

テレビ朝日系(ANN)

 ポルトガルで医療関係者の41歳の女性が新型コロナウイルスのワクチンを接種した2日後に死亡しました。

 地元メディアによりますと、ポルトガル第2の都市ポルトにある腫瘍(しゅよう)学研究所で働いていた41歳の女性は、同僚らとともに先月30日にファイザーなどが開発した新型コロナのワクチンの接種を受けました。

 大みそかの夜には家族と一緒に食事をしましたが、翌日の今月1日午前、ベッドの上で死んでいるのが見つかりました。

 ワクチン接種の際や接種後も大きな副反応はなかったということで、ワクチンが原因で死亡したのかどうかは分かっていません。

 家族は、女性に健康上の問題はなく元気だったと話していて、当局は死因を調べることにしています。

 

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玉川徹氏、緊急事態宣言の発令濃厚もバッサリ「なぜ感染爆発まで。まだ国会は開いていない」

2021年01月06日 11時26分40秒 | 社会・文化・政治・経済

1/6(水) 10:21配信

スポーツ報知

6日放送のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜・午前8時)では、菅義偉首相が新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、東京都など1都3県に緊急事態宣言を発出する方向で検討に入ったことを報じた。

 コメンテーターで同局の玉川徹氏は「(分科会が)感染爆発に入ったとの見解を5日に示すわけです。なぜ感染爆発まで待たなければいけなかったのかというのが、本当に疑問」と指摘し、「番組でも11月くらいから緊急事態宣言を出すのであれば早い方がいいと、繰り返し言っていた。批判の声もありましたが、ここまで山が大きくなってしまったら、仮に緊急事態宣言が出されて感染が収まっていくとしても、長い時間がかかってしまう」とコメントした。

 その上で「例えば臨時国会の時に、特措法の審議もできたはず。まだ国会は開いていないですけど。こういう状況でも18日まで待って、それから2月頭の成立。そこまでどうするんだという話も含めて、何で先々と手を打っていけないんだというのが率直な思い」と対応が遅いことを繰り返し指摘した。

報知新聞社

 

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田原総一朗「国民甘く見たしっぺ返し 今さら焦るあきれた菅内閣」〈週刊朝日〉

2021年01月06日 11時23分18秒 | 社会・文化・政治・経済

1/6(水) 7:00配信

AERA dot.

田原総一朗氏(C)朝日新聞社

 菅義偉内閣の支持率が急落した。政府の新型コロナウイルス感染拡大への対応のまずさが要因と思われる。ジャーナリストの田原総一朗氏は、菅内閣の見通しの甘さにあきれているという。

【写真】「ポスト菅」で一番人気はこの人

*  *  *
 12月21日に朝日新聞が報じた菅義偉内閣の支持率は39%で、前回11月の56%から17ポイントも急落した。そして不支持率は11月の20%から35%と大きく増えた。菅内閣が発足した9月時点での支持率は65%、不支持率は13%だったのである。

 何よりも菅内閣は「Go Toトラベル」の全国的な一時停止について、「勝負の3週間」と国民に強調しながら、その最後の週の12月14日まで何もしなかった。おそらくは毎日新聞が12日に報じた支持率40%への急落を知って、慌てて「停止」を決めた。朝日新聞の調査では、タイミングが「遅すぎた」は8割にも上っている。国民のほとんどが怒っているのである。

 しかも、「一時停止」を決めた日、「5人以上の会食は控えるように」と呼びかけながら、王貞治氏や杉良太郎氏など8人での会食を行っていた事実が、新聞、テレビで報じられた。まったく真剣味がない、と国民は憤った。このことを「問題だ」とする答えは66%あった。

 それにしても、菅内閣はなぜ、毎日新聞が支持率急落を報じるまで、「自粛」とばかり繰り返し述べていたのか。私は改めて、政府が新型コロナウイルス禍に対しての世論調査をしていなかったことを知って驚いた、というよりあきれた。

 いやしくも民主主義をうたう政府ならば、国民の心情を常に捉えていなければならないはずで、ことコロナ禍での国民の悩みや苦しみは細やかにつかんでいなければならず、どの国の政府でも世論調査をしているはずである。それをやっていないとはどういうことか。

 私は4月7日に安倍首相(当時)が緊急事態宣言を行った後に、安倍氏に会ったときのことを思い出した。まず安倍氏に、なぜ緊急事態宣言が欧州各国や米国に比べて、約1カ月も遅れたのか、と問うた。

「緊急事態宣言などすると、基本的人権を損ない、プライバシーを侵害する。さらに日本は世界の先進国の中で最も財政事情が悪く、新聞やテレビが、このままでは10年近くで財政が破綻する、と報じていた。緊急事態宣言をすれば財政破綻が早まるだけだ、と多くの閣僚、野党が反対していた」

 と安倍氏は答えた。

 ところが、日本よりも民主的で、財政事情が悪い国々が緊急事態を発している。調べると、現状は新型コロナと人類の戦い、つまり有事であることがわかった。日本は敗戦後、戦争をしない国、いわば有事がない国とされてきたわけだ。

 また、他国は緊急事態時に罰則規定があるのに、日本にはない。なぜかと問うと、「日本は憲法で緊急事態を認めていないのだ」と安倍氏は答え、そして、「日本の国民は、政府の言うことに素直に従ってくれるので、罰則規定がなくても大丈夫なのだ」と説明した。

 そういえば、米国や欧州では、緊急事態宣言が発せられれば、生活の基盤が損なわれると、大掛かりなデモが発生していた。だが、日本ではデモなど生じていない。安倍氏が言った通り、国民は政府の言うことに従っていて、自粛警察という言葉さえ広まっている。

 だから、菅内閣もコロナ禍でも世論調査を行っていないということになるのか。つまり、国民を甘く見ていたわけで、そのしっぺ返しを受けている、ということか。しかし、事態は深刻である。

※週刊朝日  2021年1月15日号

■田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 

 

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第4波に勝つワクチンの実力 専門家「東京五輪、日本だけの開催なら…」〈週刊朝日〉

2021年01月06日 11時19分11秒 | 医科・歯科・介護

1/6(水) 8:02配信

AERA dot.

感染者増に警鐘を鳴らす新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社

 コロナ禍で迎えた2021年。変異種の発生に、早くも第4波を懸念する声が出ている。

【写真】「東京五輪はスポンサーも望んでないのでは?」と語る政治家はこちら

 昨年末、新型コロナの変異種が発見されたとの報道が世界を駆け巡った。感染力は従来のウイルスよりも最大1.7倍あるとされ、英国で感染が急拡大。オランダやデンマーク、豪州などでもこの変異種が見つかった。

 多くの国が英国からの受け入れを禁止する中、日本も出入国緩和策の対象から英国を除外すると発表し、入国制限を強化した。

 大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之医師がこう警告する。

「すでに英国の変異種が日本にも上陸している可能性があります。これからも継続して入ってくると、感染が止められなくなる恐れがあります。他国からの渡航者を含め、空港での水際検査を徹底する必要があります」

 東京や大阪など大都市圏の新規感染者数は高水準のままだが、明るい兆しもある。宮坂医師によれば、第3波が収束に向かっている可能性があるという。無症状者を除いた、東京都の「発症日別による陽性者数の推移」を見ると、12月中旬をピークに減少している。

「無症状者を含めた新規感染者数は、検査数の増減に左右されます。死者と重症者が減ればいいので、発症日別の流行曲線でピークを見て、感染の状況を判断するのも一つの方法です」

 感染症が流行し始めてピークに至るまでに要した期間と、そこから収束に向かう期間はほぼ同じであることが多い。

「患者数が増え始めたのが10月下旬ごろですから、2カ月近くかかっています。ですから収まるのは2月中旬か下旬でしょう」

 ただ、変異種が入ってくれば、「第4波の引き金にもなりかねない」と警戒する。現時点では変異種の病原性が高まっているというデータはないが、感染者が増えれば重症者や死亡者も増える。ただでさえ逼迫(ひっぱく)している医療現場に、これ以上の負荷をかければ医療崩壊につながりかねない。

 医療ガバナンス研究所の上昌広医師がこう危惧する。

「日本は東アジアでは新型コロナを最も蔓延(まんえん)させた国です。台湾では海外からの帰国者に外出禁止を義務付け、違反者には多額の罰金などを科しています。日本はそんな厳しい検疫措置をしていないから、また水際作戦に失敗するのでしょう。変異種を流入させてしまえば、爆発的に感染者が増えるかもしれません」

 感染者が増えても、大半は無症状だ。無症状感染者は活発に動くので感染を広げることがわかっている。ところが、日本は医療や介護、公共交通機関、小売業などに従事するエッセンシャルワーカーを含め無症状の人には、無料で受けられる行政検査を実施していない。上医師が続ける。

「第4波は必ず来ます。このままでは緊急事態宣言やロックダウンで一気に感染者を減らすしかなくなる。収束している間に、検査で無症状の陽性者を隔離するのが最大の再発防止策ですが、それをしないから、また感染爆発をくり返す。経済的にも二番底、三番底が待っていて、破滅していくパターンです」

 今心配なのは、現在開発されているワクチンが効かなくなることだ。

 ワクチンはウイルスを攻撃する抗体などを体内の免疫細胞に作らせるためのものだが、変異したものに対応できるのだろうか。宮坂医師が解説する。

「(ウイルスが人の細胞に侵入する際に使う)ウイルス表面の突起状のたんぱく質には9カ所の変異がありますが、免疫系が異物と認識する目印は他にたくさんあるのでワクチンが効かなくなる可能性は極めて低い」

 ワクチンの有効性も期待できそうだ。臨床試験で米ファイザーのワクチンの予防効果が95%、英アストラゼネカが平均70%、米モデルナは94%に上った。日本政府は、この3社から計2億9千万回分の供給を受けることで合意している。

 懸念されるのは安全性だ。米国で27万人余りに1回目の接種をした時点で、6人に強いアレルギー症状であるアナフィラキシーショックが起きた。

「コロナワクチンが怖いのは、強いアレルギー反応を起こす物質が何か、原因がわからないまま接種を受けなければならないことです」

こう危機感を募らせるのは、新潟大学名誉教授の岡田正彦医師だ。その上で次のように指摘する。

「さらに気になるのはもっと長期的な副作用です。過去に人工の遺伝子を注射する治療で、がんや原因不明の病気になるケースが起きました。今回も遺伝子を使ったワクチンが、人間の遺伝子のどこかに組み込まれて、将来、発がんなど悪さをする可能性がゼロとは言えないのです」

 少なくとも、がんの最短の潜伏期間である5年間は追跡調査が必要だと強調する。また、ワクチン接種で、かえって感染症を悪化させる「悪玉抗体」ができる恐れも指摘されてきた。だが、極めて多数の人がワクチン接種後にコロナに感染しないと、そのリスクは見えてこない。

 日本にワクチンが入ってくるのは、2月か3月ごろになると思われる。引き続き安全性を慎重に見極めていくしかない。

 7月から予定されている東京オリンピック・パラリンピックは開催できるのだろうか。宮坂医師がこう指摘する。

「日本だけで、あるいは観客を限ってやるのなら可能です。完全に近い形で開催できればうれしいのですが、五輪に限らず経済を動かせば感染者は必ず増えます。ゼロリスクはあり得ない。長い目で見て感染リスクのほうが上回るのなら、慎重に判断するべきでしょう」

 第3波を抑え込んだとしても第4波が来る可能性は高いようだが、コロナの流行はいつまで続くのだろうか。

「その後、小さな波をいくつかつくりながら、次第に収束に向かっていくと見ています」

 まだしばらく、withコロナでの生き方を模索する時間が続きそうだ。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日  2021年1月15日号

 

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「飲食店の制限だけでは1ヶ月で感染者は減らない」 8割おじさんが厚労省“非公開”のシミュレーションを公開

2021年01月06日 11時12分25秒 | 医科・歯科・介護

1/5(火) 18:21配信

BuzzFeed Japan

「強めの制限をかけなければ、感染者数は減らないし、宣言期間も長引くことになる」と心配する西浦博さん

新型コロナウイルスの感染拡大が首都圏で止まらず、7日にも1都3県を対象に正式決定すると見られている緊急事態宣言。

【動画】「これ以上感染が続くと…」尾身会長が年の瀬に伝えたメッセージ

政府は飲食店の営業時間短縮などに限定して進めようとしているが、その方針では効果が期待できないと心配しているのが、理論疫学を専門とする「8割おじさん」こと京都大学大学院教授、西浦博さんだ。

現状、どの程度の制限をかけたら、感染者はどうなるのか。西浦さんが出したシミュレーションを元に、BuzzFeed Japan Medicalは日本で打つべき対策について単独インタビューで尋ねた。

※インタビューは1月5日午前Zoomで行い、その時点での情報に基づいている。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

緊急事態宣言は何を目的にするのか?
ーー菅首相が緊急事態宣言を検討することを表明し、7日にも正式決定すると報じられています。飲食店の時短営業などに限定するとのことですが、このタイミングで、この限定的な宣言発令についてどのように受け止められていますか?

緊急事態宣言を打つ時に、

1.どこをゴールにして
2.どういう内容を
3.どれぐらいの期間

打つかということが重要になるんです。

「どういう内容を」というのは、世界でも「これをやれば完璧だ」ということは科学的に細かにわかっているわけではありません。もちろん、大まかな対策内容の区別による評価は行われています。

例えば、飲食店を中心に伝播(感染)が起こっているだろうということは想像できているのですが、観察情報の限界があります。

全ての感染が数として把握できているわけではありませんから、飲食店対策に加えて交通機関停止の前倒しの要素が加わったらリスクはこれぐらいになる、という評価はできているわけではない。

これぐらい時間が経ってもなかなかその全貌を把握するのは難しいのです。

これまで感染リスクの「急所」として専門家が指摘してきた飲食店の制限のみでいいのかということに関心が持たれているのだと思います。まずその前に、緊急事態宣言がどういう目的で発令されるかを理解していただかなくてはいけません。

厳しい対策を打たなければ、実効再生産数は十分に下がらない

縦軸は東京都の実効生産数で、横軸が現状からどれぐらいの比率へ減らすか。赤色が最も厳しい制限をかけた場合で、実効再生産数は0.65倍にまで落ちるという想定。政府が現状打ち出している限定的な制限だと実効再生産数は1前後で感染者は横ばいとなることを見込んでいる

ーー先生が今回出した最新のシミュレーションを見ながらご説明いただけますか?

緊急事態宣言では、どこまで強い政策を打つかによって、1人当たりが生み出す二次感染者数である「実効再生産数」を下げるかということが重要です。この値が1を切らないと感染者は減っていきません。

緊急事態宣言で何をするかが、結果に直結します。それをどれぐらいの期間続けて、最後のゴールをどこに据えるかが非常に重要です。この3つの要素で考えていかなければいけません。

12月半ばの東京都の実効再生産数を見ると、平均して「1.1」で推移しています。これはこれまで色々な流行対策をした結果の数値です。飲食店の時短も午後8時にする前に、まず午後10時までにしていますね。また流行状況のニュースを見て、人の流れも少しは減ったわけです。その結果としての「1.1」です。

つまり、何も手を打たずに流行している場合と比較すると、相当増加のスピードは抑えられているはずで、ゆっくり増えているのです。ただし残念ながら増えるのが止まらない。対策が不十分で下げ切れないので、今回、強い対策で下げなければいけないわけです。

どこまで下げるのかをわかりやすく示そうと試みたのがこのグラフになります。

縦軸は実効再生産数です。横軸は、流行対策の下で実効再生産数が相対的に何倍になるかを示しています。

現状の対策のままで変わらない場合を白の矢印で指しています。それが1.1です。青、黄、赤の矢印は、対策の強さによって実効再生産数がどれぐらい下がるのかをみなさんにビジュアルで見ていただくために示したものです。

青は限られた場での接触減が効いた場合です。

一方、赤はもっとも強い対策が打たれた場合を想定しています。緊急事態宣言下で飲食店以外でも屋内接触が避けられた場合に相当します。

狭く密度の高い屋内で伝播が起こりやすいことはわかっているので、飲食の場以外で言えばスポーツジムや発声の起こる場や締め切った会議室など、屋内の場で家族以外のメンバーと一定時間以上過ごすような機会を積極的に削減した場合が赤です。

第1波の緊急事態宣言中の実効再生産数は0.54~0.57ぐらいでした。

このグラフでは0.65倍ということで赤の矢印は指していますが、1.1に0.65をかけると実効再生産数は0.7ぐらいになります。0.5台が今回の緊急事態宣言で達成できるかと言えば厳しいと考えています。ですので、これぐらいの値を想定しています。

ーーなぜ今回は達成が難しいのですか?

12月の東京の主要な繁華街の人の流れを見ると、ほぼ減っていません。今は第1波の時と比べ、接触が起きているリスクの高い場に声が届きにくくなっています。要請ベースでの制限という限界もあるでしょうから、インセンティブ(動機付け)が上乗せされないと効きにくいと思っています。

きつい政策を打っても、0.65倍ぐらいにしか抑えられないというリアリズムを前提として加味したのが私のシミュレーションです。

厳しい対策を打てば打つほど下がる
ーー今回の流行で集団感染が起きている病院や介護施設は人との接触を減らせませんよね。閉めるわけにはいかないです。赤色はどこまでの接触削減を想定しているのですか?

緊急事態宣言の原則は、エッセンシャルワーカー(生活維持に欠かせない職業)は動きますよということなんです。病院や高齢者サービスで必要不可欠な部分は割けません。一方、家族との接触などは相当みなさん我慢されています。

そういうもの以外の割ける接触を割くというのが赤に相当する厳しい対策です。例えばフィットネスクラブでの利用者同士の距離を開けたり、利用を分散させたり、対面で寄り合うミーティングはたとえ飲食をしなくてもオンラインでやったりなどです。

赤と青の間の黄色は根拠はありませんが、これぐらい達成できたらこうなるということを検討するために中間値くらいを示しています。0.8ぐらいです。

当たり前ですが、厳しい対策を打てば打つほど実効再生産数は下がります。一方で、社会経済的なインパクトは強くなります。

第1波の時に行なっていた余分な対策は改善されると思います。制限しなくてもよかった接触ですね。

ーー例えばどういう接触ですか?

同調圧力が日本でありましたが、人の目を気にして必要のない制限をしていたところがあります。例えば屋外で公園ですれ違うことさえ後ずさりして避けていた人がいます。1人で勤務しているのにルールにしたがって休んだ人もそうです。

そういう無駄な努力は省いた上で何をしていくか。感染症学に加えて公衆衛生学や経済学のそれぞれの専門家の先生方が参加しながら、分科会を中心に相当頭をひねって話し合っています。

私は、それぞれの強度の対策が仮に効果をあげた時に、ここから先の未来がどのような見通しなのかを示します。また、今皆さんが緊急事態宣言に期待する効果のレベルと予想にはギャップがあるので、それを伝えながらどうすべきか考えて頂きたいのです。

政府が示している限定的な制限の効果は薄い

年頭記者会見で緊急事態宣言の検討を表明した菅首相

ーー青で示している限定的な政策は、政府が現状で示している飲食店の営業時間短縮などに制限を限定した場合に近いということですか?

最終決定ではないが、菅首相が年頭会見で述べたぐらいの対策では感染者数は減らないとシミュレーションされている

菅首相が年頭会見で言って、報道で漏れ伝わっている範囲だけ、つまり、あくまでも飲食業に限定することにこだわるなら青に近いです。だけど、漏れ聞こえる内容が最終決定ではないと思います。今、専門家内でも官邸周辺でも、詳細を議論して詰めているところです。

飲食の場面のみに制限を限り、他のところは何もしないなら、仮に減ったとしても青ぐらいしか減らない、というのが上の図が示していることです。つまり、実効再生産数は1程度までしか減らず、感染者は減りません。

一方、4日夜に東京都知事は「外出自粛をお願いする」という話をしました。それは限定的な介入よりも相当に広範囲な介入ですね。

緊急事態宣言で何をするかについては、為政者たちの間でもまだ考えにギャップがあります。必ずしも菅首相が少ししゃべった飲食のみという話だけを元に、今後、青の状況が起こるとは言えません。

ただ、飲食のみだったらそれぐらいの薄い効果になるリスクが十分にあるということです。

ーー下がることは下がるけど、感染者は減らないレベルだということですね。

実効再生産数が下がることと、流行が抑えられることは違うのですね。

ーー1を切らないと減らないですからね。

現状の0.95倍になったとしても、実効再生産数は1を上回りますので、感染者が上向きの調子は変わりません。しかし、0.9倍だったらほぼ横ばいです。今の多めの感染者がそのまま続くということです。なかなか厳しいという科学的事実から目をそらさずに計画を立てなければいけません。

宣言の期間は1ヶ月で十分か?

実効再生産数が限定的な対策で少し下がる場合、中間的な対策でそこそこ下がった場合、厳しい対策でかなり下がった場合別に、目標達成までどれぐらい期間が必要かシミュレーションしたグラフ。ゆるい対策ではいつまで経っても感染者数は減らないことが示されている

ーー報道各社の報道では、緊急事態宣言の期間は1ヶ月を想定しているようです。これについてはどう考えますか?

それについてはこのグラフを見てください。

宣言期間のスタートが仮に1月8日だとして、目標とするのを東京都がステージ2相当、つまり、1日の新規感染者の報告数が2桁になるのをゴールとします。

このグラフは実効再生産数がどのぐらい減るか、先ほどのグラフで言えば青相当(0.95、0.90)、黄色相当(0.80)、赤相当(0.65倍)の対策を打った場合、どれぐらい目標までの期間がかかりそうかシミュレーションしたものです。

政府が現時点で示しているような限定的な制限で、0.95倍なら新規感染者数は今後も緩やかな上昇をしますし、0.9倍ならほぼ横ばいでしかない。

中間的な対策をうって0.8倍まで引き下げても、年度内には100人未満になりません。

広範囲に厳しい対策を打って0.65倍になると、2月25日くらいにやっと100人未満になります。

ーーかなり時間がかかりそうですし、強めの対策を打たないといつまでも成果が出ないというシミュレーションなのですね。

宣言期間自体はどんな対策を打っても第1波の時よりも長くならざるを得ません。1か月で済ますにはロックダウンのように外出を禁止するような接触減をしないといけませんが、それは日本ではできないのです。最速でも2ヶ月はかかる、というのが結論ですね。

急所だけを狙う政策だと、仮に実効再生産数が1未満に下がっても1に近い値になるので、長く対策を続けることが必要になります。仮にずっと続けるならば、年度が開けても、宣言が終わらないことを覚悟しなければならないかもしれません。

データに基づいたオープンな議論が必要

前回、第1波の緊急事態宣言時に西浦さんが示したシミュレーション。「人との接触を8割削減」を訴える西浦さんに対し、政府は「7割」にこだわったが、それでは2倍の期間がかかると押し戻した

ーー前回の緊急事態宣言でも、西浦先生がシミュレーションを出さなければ、政府は緊急事態宣言で何を目標として、何をやればどのぐらいの成果が見込めるか見通しは持っていなかったわけですね。

その通りです。日本の緊急事態宣言は特措法に基づく要請ベースのもので、目標数値もありませんでした。そこにシミュレーション(数値計算)を初めて示したのが、第1波でした。「1か月を超えてずっと続くような宣言は厳しい」と考えて、1ヶ月で終えるにはどうしたらいいか考えて示したのです。

今回も、政府がデータに基づいた政策決定をしない状況はあまり変わっていません。何を目標として、どんな手を打つのかは、専門家が考えて火中の栗を拾う。そんな構図は全く改善されていません。今後の政策決定の課題であり続けていると思います。

政府に関わる専門家の中では、未来の動向を理詰めで示せるのはおそらく僕しかいない。

それがたとえ厳しい見通しでも、例えば、前回、政府がこだわった「人の接触7割削減」では2ヶ月かかりますという意見は、こうやって数値計算を出さないと伝わりません。政治家が経済に目がくらんで日和った政策を打って失敗してからだと遅いのです。

声が届く間に、専門家が明確に伝える、というのが僕の大事な役割だと思っています。全く得をしませんが......。

ーーこのシミュレーションは、厚労省のアドバイザリーボードに出すのですよね。

明日(6日)招集なのですが、厚労省にまず出して検討してもらったのですが、「非公開資料として扱います」ということでした。

緊急事態宣言に関しては、アドバイザリーボードのリスク評価の範疇ではなく、特措法を施行するための諮問委員会がありますし、本来なら、その前に分科会がアドバイスをして具体的な政策について提言するという位置付けもあるということです。

リスク評価に関わるような計算だけでも諮問する会議にアドバイザリーボードがコメントすべきではなかろうというのが厚労省の説明でした。分科会の先生方には年末年始にも提示して議論はしています。政府にこのシミュレーションが提示されるかはわかりません。

ーー先生しかこういうデータを示せる専門家がいないのに、国民に共有するのに厚労省が消極的なのは意味がわかりません。国民の協力が必要なのに。

緊急事態宣言はそもそも厚労省主体ではないということなので、厚労省が公表の責任を負うよりは、僕が勝手に公表する位置付けにしたい、またはするしかないのだと思います。

僕はオープンに議論していくべきだと考えていますので、こうやって取材していただいたり、自分で本を出したりして裏で行われた議論を透明化しようとしています。

おっしゃる通り、痛みを伴う接触減は、今回必要になります。国民も経済界も合意をした上でやるしかない。そうであれば、理詰めの部分のプロセスも透明化することが必要だと思います。

【西浦博(にしうら・ひろし)】京都大学大学院医学研究科教授
2002年、宮崎医科大学医学部卒業。ロンドン大学、チュービンゲン大学、ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授、北海道大学教授などを経て、2020年8月から現職。

専門は、理論疫学。厚生労働省新型コロナウイルスクラスター対策班で流行データ分析に取り組み、現在も新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードなどでデータ分析をしている。

趣味はジョギング。主な関心事はダイエット。

岩永直子

 

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元カープ北別府さん、白血病に「勝つぞ」 闘病…体重20キロ減

2021年01月06日 11時06分49秒 | 野球

1/6(水) 6:01配信

中国新聞デジタル

北別府学さん

 広島東洋カープのエースとして活躍した野球解説者の北別府学さん(63)にとって、昨年は白血病との闘いの1年になった。治療は成功したものの、まだ後遺症がある。大きな病と対峙(たいじ)し、平穏に朝を迎えるありがたさを実感しているという。どんな闘病生活を送り、何を感じたのか。赤ヘルのレジェンドに聞いた。

【一覧】北別府さん闘病の歩み、現役時代の写真も

 <昨年1月に「成人T細胞白血病」を公表し、抗がん剤治療を始めた>

 プロ野球のスタートは2月のキャンプイン。数カ月で治るものじゃなく、野球解説の仕事もできなくなる。いろんな臆測が流れるより、はっきり公表した方がいいと思った。発表してから、多くの人の励ましの声が届いた。ありがたかった。こんなに大げさになるとは思わなかったけど。

 60歳まで大した病気もしたことがない。当時はほとんど体調も変わらず、血液の数値が悪くなっていると言われても「本当かな」という感じだった。そうして始まった抗がん剤治療。つらいと聞いていたが、しんどくはなかった。個人差はあるんだろうけど、髪が抜けるくらいで済んだ。

 <抗がん剤治療のための入退院を繰り返した後、5月に次男の造血幹細胞を移植した>

 血液の型(HLA)の一致率が高い次男にドナーになってもらった。新型コロナウイルスがまん延した頃だった。ドナーが見つからなくて苦労している人もいるでしょう。そんな中でほぼ計画通り、抗がん剤治療から幹細胞移植へと進めたのはありがたかった。

 けど、この治療がきつかった。熱が上がるし、だるい。かゆみも出る。抗がん剤治療は自分には大したことがなかったので、移植も大丈夫かなと思っていたが大違い。2週間はご飯も食べられなかった。口内炎がひどくて、水分も取れない。味も分からなくなった。入院中の2カ月で体重が20キロくらい落ちた。

 同じ九州出身の担当の先生とは話が弾んだ。若いけど何でも言える存在だった。こっちもしんどいけれど、看護師さんたちもしんどいよ。夜中のトイレなどで呼び出すわけだから。ここまで来られたのはスタッフのおかげ。それと、本人にはなかなか言えないけれど、当たり前と思っていた女房の存在は大きかった。本当に感謝している。

息子の細胞が暴れているようで…

2019年10月、東京でのトークショーで話す北別府さん

 <退院後に63歳の誕生日を迎えた>

 ほっとした。家ってこんなにいいところなんだと思った。病院でも良くしてもらったけれど、ずっと点滴を下げていて縛られている感じもあったからね。

 でも退院してしばらくは体調のいい日はあまりなかった。熱が出たり、湿疹が出たり…。拒絶反応は治る過程で出るというけど、息子の細胞が暴れているようでね。薬もごっそりある。喉の調子が悪いとのみ込むのもつらい。

 入院が長かったので筋肉が戻ってこない。脚を踏ん張ることができず、こける恐怖感がある。あれだけ走り回った人間が歩くのにも苦労している。びっくりするくらい衰えた。それに新型コロナウイルスは怖い。免疫の落ちている人間がとりつかれたら終わり。若い人たちも新型コロナを軽く見ないでほしい。

 <12月には、白血病の細胞が検査で見られなくなる「寛解」に。だが、移植した細胞が患者の体を攻撃する状態は続く>

 これからの目標はまず、本来の元気な体に戻すこと。焦る必要もないだろうけど、キャンプに間に合うように体調を整えたい。(コーチをしている福山市の)英数学館高などの子どもたちに野球を教えたい。そしてドナー制度の充実のために何かができれば。骨髄バンクに登録していても、会社を休めずにドナーになれないこともある。移植で完治する人が増えることを願っている。

 完全復帰はもう少し先になりそう。病気になって気付いたのはね、前の日と体調が変わらずに、朝、すっと起きられるのは本当にありがたいことだということ。これからも自分は勝つぞという気持ちで病気と向き合っていきますよ。人間は諦めたら気力も体力もなくなってしまう。同じように大きな病気になった人には、生きるという気持ちを強く持ってほしいと伝えたい。

 【きたべっぷ・まなぶ】57年、鹿児島県生まれ。宮崎・都城農高から76年にドラフト1位で広島東洋カープに入団。「精密機械」と呼ばれた制球力を武器に11年連続で2桁勝利をマークした。通算213勝を挙げ、94年に引退。12年に野球殿堂入り。

中国新聞社

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入院時は陰性→一転陽性相次ぐ 感染初期、検査すり抜け

2021年01月06日 11時03分20秒 | 医科・歯科・介護

1/6(水) 10:30配信

朝日新聞デジタル

昨年11月にクラスターが発生した北海道医療センター=2020年12月17日、札幌市西区

 北海道内の医療機関で新型コロナウイルスの感染が続いている。その中には入院時に患者に行ったPCR検査では陰性だったにも関わらず、後に陽性と分かり感染が広がった事例があった。医療機関は従来の水際対策に加え、ウイルスが内部に持ち込まれた後の感染対策にも神経をとがらせている。

【写真】入院当初陰性だった妊婦が、後に陽性と判明した旭川赤十字病院=北海道旭川市


     ◇

 北海道医療センター(札幌市西区)では昨年11月、院内で患者や看護師ら16人が感染するクラスター(感染者集団)が発生した。

 同センターによると、最初に感染が分かった看護師2人が担当した患者の中に、新型コロナの感染者がいた。この患者は、別の病気で入院した際に行ったPCR検査では陰性だったが、退院後に陽性が判明した。潜伏期間などを考えると、入院時にはすでに新型コロナに感染していた可能性が高いという。

 同センターではこの結果を受け、入院時に行っていたPCR検査だけでは院内での感染を防げないと判断。新たな入院患者に対しては、検査で陰性であっても10日~2週間ほどは個室で過ごしてもらい、再度の検査で陰性を確認した後に、他の患者がいる部屋に移す対策を取っている。

 旭川赤十字病院(旭川市)では昨年12月7日、産婦人科に入院した女性が発熱し、PCR検査で陽性が判明した。幸い院内での感染は広がらなかったが、濃厚接触者にあたる医師ら14人が2週間の自宅待機となった。分娩(ぶんべん)予定の妊婦は他院に引き受けてもらい、一部の手術を中止する事態となった。

 同院では妊婦を受け入れる際、検査で新型コロナの陰性を確認するようにしていた。この女性が昨年11月26日に来院した時は、遺伝子検査(LAMP法)で陰性だった。その後に発熱の症状が出たため、市保健所のPCR検査を受けたところ、陽性が判明した。

 同院では当時、PCR検査機器の納入が遅れていたこともあり、若干感度が劣るとされるLAMP法を用いていた。ただ、新型コロナの感染初期は十分な量のウイルスが排出されず、どちらの検査でもすり抜けることがあるという。同院の牧野憲一院長は「PCR検査をしても、入院後に陽性に転じるリスクはゼロにはならない。水際対策だけでは限界があるということを痛感させられた」と話す。

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ノーベル賞の日本薬「イベルメクチン」、新型コロナ致死率80%減少効果=英国・韓国報道

2021年01月06日 10時40分50秒 | 医科・歯科・介護

1/5(火) 11:15配信

WoW!Korea

駆虫剤イベルメクチン、48時間以内に新型コロナウイルスを抑える? (画像提供:wowkorea)

ノーベル賞の日本の抗寄生虫薬「イベルメクチン」が新型コロナウイルス致死率を最大80%まで減少させるとの主張が提起された。

【関連写真】この記事の写真をもっと見る

 4日(以下、現地時間)英国「デイリーメール」によると英国リバプール大学のウイルス専門学者アンドリュー・ヒル博士が全体臨床試験資料を総合分析した結果、イベルメクチンが投与された患者573人の中では8人、プラセボ(偽薬)が投与された患者510人の中では44人が死亡したことがわかった。

 イベルメクチンは1970年代に開発された駆虫剤として、頭ジラミなどの寄生虫感染治療に広く使用されている。

 イベルメクチンを新型コロナウイルス治療薬として研究している科学者らは、この薬が新型コロナウイルスのライフサイクルを妨害するものと見ている。

 同件についてヒル博士は「イベルメクチンは患者の身体で新型コロナウイルスが除去されるのにかかる時間を大きく短縮させることがわかった」と説明した。

 このような臨床試験はエジプトでも行われているが、症状が軽症の患者200人のうちイベルメクチンが投与された100人は5日で新型コロナウイルスが消えた反面、プラセボが投与された100人は10日かかったという。

 重症患者200人を対象に進行された臨床試験では、イベルメクチンが投与された100人は6日間、プラセボが投与された100人はウイルスが消えるのに12日間を要したことがわかった。

 臨床試験で使用されたイベルメクチンの容量は大部分が0.2~0.6mg/kgだったが、12mgの高容量が投与された臨床試験も1件あった。今回の臨床試験は世界保健機構(WHO)が依頼したもので、主に開発途上国でおこなわれた。

 これを前に、イベルメクチン効果については昨年4月、オーストラリア・モナーシュ大学研究チームが発表していた。

 現在、計7100人の新型コロナウイルス患者が参加している他のイベルメクチン臨床試験結果も今後数か月以内に発表されるものとみられる。

 しかし、医学界の一部では臨床試験が大部分の参加者数が少なく、使用されたイベルメクチンの容量がそれぞれ異なり、さらに他の薬と並行して投与されたケースもあるとして、結果に疑問を投げかけている。

 イベルメクチンは他の薬と並行して投与された場合、急激な血圧低下、肝臓の損傷、嘔吐、下痢、腹痛、めまいなどを引き起こす可能性があると伝えられた。

 なお、イベルメクチンは2015年ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏が1970年代に静岡県で採取した土壌から発見した「放線菌」と呼ばれる新種の細菌で開発した寄生虫感染症の治療薬として世界的に知られている。

 

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香港民主派、50人以上逮捕 当局、国安法の取り締まり本格化

2021年01月06日 10時39分17秒 | 社会・文化・政治・経済

1/6(水) 9:53配信

産経新聞

香港の裁判所に出頭した民主活動家の周庭氏(右)と黄之鋒氏。現在、2人とも収監中(8月、藤本欣也撮影)

 香港メディアによると、民主派の前立法会(議会)議員ら少なくとも52人が6日、香港国家安全維持法(国安法)違反(国家政権転覆罪)の疑いで逮捕された。

【図でみる】「香港国家安全維持法」の仕組み

 民主派は、昨年9月に予定されていた立法会選の立候補者を調整するため、同年7月に予備選を実施したが、今回逮捕されたのは予備選に出馬したメンバーらとみられている。昨年6月末の国安法の施行後、同法違反の容疑で逮捕されたのは約40人。今回だけでそれを上回る逮捕者となり、警察当局が国安法違反の取り締まりを本格化させた形だ。(台北支局)

 

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新型コロナ どうして、これほど「無症状」感染者が多いのか?

2021年01月06日 05時16分58秒 | 医科・歯科・介護

2020/11/22(日) 10:20配信
NIKKEI STYLE

■「無症状」にもいろいろある?
 他の一般的な感染症でも、無症状のまま感染を拡大させることはありうる。だが、研究は重症患者に注目して行われることが普通であるため、無症状者が関わるケースは見落とされがちだ。

 こうした見えない感染の実態を把握するための調査が、16年秋から18年春にかけて米ニューヨーク市で行われていた。市内の複数箇所の214人を対象に毎週、かぜの原因となる従来型のコロナウイルスやインフルエンザウイルス等、18種類の呼吸器系ウイルスの検査を実施した。

1年半の調査の結果、陽性のケースのうち、なんと55%が無症状であり、ほとんどのウイルスにおいて無症状感染の割合は70%を超えた。

 とはいえ、こうした無症状者の感染力について、特にインフルエンザ研究者の間では見解が分かれている。

「長年、議論されていることです」と話すのは、香港大学公衆衛生学院の教授で疫学・生物統計学分野を率いるベンジャミン・カウリング氏だ。

「インフルエンザウイルスの潜伏期間は1、2日です。感染はすばやく起こり、多くの場合、症状は軽く済みます。患者の行動歴をたどって感染した経緯を調べようと思っても、大変難しいものです」

 新型コロナウイルスの感染経路を突き止めることは容易ではないが、カウリング氏が言うには、最長で約2週間という長い潜伏期間のおかげで、接触者を追跡したり無症状感染者を特定したりするチャンスは増える。

ただし、ここで注目すべきことがある。感染していることを告げられると、そう言えば全く症状がなかったわけではない、と考え直す人がいることだ。

「症状について聞かれて初めて、体調が良くなかったことを思い出すのです」とカウリング氏は述べる。「喉がイガイガする、頭痛があるなどの軽い症状や、調子が悪いものの、感染による症状なのか寝不足のせいなのかよくわからない、というグレーゾーンがあるのです」

 新型コロナウイルス感染症の症状とされるものは日々増えつつあるので、何がそれに当たるのかについて混乱があるのも無理はない。現在では、味覚や嗅覚の喪失、足の指が紫色になるほか、吐き気や下痢など消化器系の症状なども、典型的な症状の中に含まれている。

6月18日付で学術誌『ネイチャーメディシン』に発表された論文によれば、明確な症状がない人でも肺にダメージを受けていることがあるという。

 つまり、これまで完全に無症状と思われてきたケースは、あまりに症状が軽いために、本人も感染を疑わなかっただけかもしれない。

「なんとなく調子が悪いけれど、まさか新型コロナのせいだとは思わないような症状です」。米テキサス大学オースティン校で感染症のモデルを研究する統合生物学の教授、ローレン・アンセル・マイヤーズ氏はそう話す。

 こうしたグレーゾーンについての知見を深めることが、ウイルスの感染拡大を抑える鍵になるかもしれない。

「軽い症状にどんなものが多いのかがわかれば、感染者を迅速に特定し、隔離することができるようになるでしょう」とマイヤーズ氏は言う。「完全に無症状というケースが思ったよりも少ないのであれば、今後の道筋や活動制限の緩和方針に大きな影響を及ぼすかもしれません」

症状が全く出ない人による感染を調査することは困難なため、そのような人にどのくらいの感染力があるのかは不明瞭だ。

CDCは、無症状者の感染力は症状があるケースの75%ほどではないかと推定している。これは、症状の有無や程度によって、体外に排出されるウイルスの量や感染力にどのような違いあるかについて調べた研究に基づいている。だが同時に、この数字について注意を促してもいる。

いわゆる「ウイルス排出」の仕組み自体があまり解明されていないからだ。

 無症状の人はそもそもウイルスの量が少ないのかもしれない。あるいは、コウモリのような免疫系を持っているのかもしれない。

「コウモリはウイルスを保有していますが、全く症状が表れません。特殊な免疫反応によってウイルスを抑え込んでいるようなのです」。米アイオワ大学教授で微生物学と免疫学が専門のスタンリー・パールマン氏はそう説明する。

 こうした説は、中国で最近行われた研究の解明に役立つかもしれない。6月18日付で学術誌『ネイチャーメディシン』に掲載された論文によれば、無症状の人は全般的に免疫反応が弱く、ウイルスと闘う武器である抗体をあまり作らないことが示唆されたという。

■若さの背景にあるもの
 研究者たちはまた、どんな人が無症状や軽症になりやすいのかを調べている。英国の1730万件近い医療記録の分析によれば、新型コロナウイルス感染症は高齢者では死亡に至るリスクが高い一方で、若者の大半は重症化しない。

 重症化するかどうかについて「関連性が圧倒的に強い要素は年齢です」と、米ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院感染症科の診療部長と医学部教授を兼務するポール・サックス氏は言う。

 しかしそれは、一般的に若者の方が健康であるという単純な理由からではない。新型コロナウイルスが細胞に感染する際の入り口となる「ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)」というタンパク質を多く持っている人は、より高リスクなのではないかとの説がある。高齢者は全身や、ウイルスにさらされやすい鼻にACE2を若者より多く持っているのだ。また、肥満の人もACE2が多い。

 注目が集まっている説は他にもある。若者の方が一般的に呼吸器系のウイルスに感染することが多く、それが新型コロナウイルスに感染したときの危険度を下げているのではないかというものだ。

「すでに複数種類のコロナウイルスに暴露されているため、新型コロナウイルスに対する部分的な防御態勢が出来ているわけです」とサックス氏は説明する。

 20年7月15日付で学術誌『ネイチャー』に掲載された、査読済みだが編集前の論文では、特定の種類のコロナウイルスに感染して回復した人は、新型コロナウイルスを撃退したり軽症に抑えたりできるような「メモリーT細胞」を保有しているのではないかと主張されている。

 あるいは、無症状の人は単に遺伝的に運が良いだけではないかと示唆する研究もある。

特定のタイプのACE2遺伝子を持つ人は、新型コロナウイルスに感染しやすかったり、炎症を起こしやすいせいで肺にダメージを受けやすかったり、血管が収縮して症状が重くなりやすかったりする。

イタリアとスペインで実施された調査の結果、特定の血液型の人は入院に至るリスクが高いとする報告も出された。しかし、それを否定する、より大規模な調査結果が、7月に入って複数発表されている。

■「無症状」にもいろいろある?
 他の一般的な感染症でも、無症状のまま感染を拡大させることはありうる。だが、研究は重症患者に注目して行われることが普通であるため、無症状者が関わるケースは見落とされがちだ。

 こうした見えない感染の実態を把握するための調査が、16年秋から18年春にかけて米ニューヨーク市で行われていた。市内の複数箇所の214人を対象に毎週、かぜの原因となる従来型のコロナウイルスやインフルエンザウイルス等、18種類の呼吸器系ウイルスの検査を実施した。1年半の調査の結果、陽性のケースのうち、なんと55%が無症状であり、ほとんどのウイルスにおいて無症状感染の割合は70%を超えた。

 とはいえ、こうした無症状者の感染力について、特にインフルエンザ研究者の間では見解が分かれている。

「長年、議論されていることです」と話すのは、香港大学公衆衛生学院の教授で疫学・生物統計学分野を率いるベンジャミン・カウリング氏だ。「インフルエンザウイルスの潜伏期間は1、2日です。感染はすばやく起こり、多くの場合、症状は軽く済みます。患者の行動歴をたどって感染した経緯を調べようと思っても、大変難しいものです」

 新型コロナウイルスの感染経路を突き止めることは容易ではないが、カウリング氏が言うには、最長で約2週間という長い潜伏期間のおかげで、接触者を追跡したり無症状感染者を特定したりするチャンスは増える。

ただし、ここで注目すべきことがある。感染していることを告げられると、そう言えば全く症状がなかったわけではない、と考え直す人がいることだ。

「症状について聞かれて初めて、体調が良くなかったことを思い出すのです」とカウリング氏は述べる。

「喉がイガイガする、頭痛があるなどの軽い症状や、調子が悪いものの、感染による症状なのか寝不足のせいなのかよくわからない、というグレーゾーンがあるのです」

 新型コロナウイルス感染症の症状とされるものは日々増えつつあるので、何がそれに当たるのかについて混乱があるのも無理はない。

現在では、味覚や嗅覚の喪失、足の指が紫色になるほか、吐き気や下痢など消化器系の症状なども、典型的な症状の中に含まれている。6月18日付で学術誌『ネイチャーメディシン』に発表された論文によれば、明確な症状がない人でも肺にダメージを受けていることがあるという。

 つまり、これまで完全に無症状と思われてきたケースは、あまりに症状が軽いために、本人も感染を疑わなかっただけかもしれない。

「なんとなく調子が悪いけれど、まさか新型コロナのせいだとは思わないような症状です」。米テキサス大学オースティン校で感染症のモデルを研究する統合生物学の教授、ローレン・アンセル・マイヤーズ氏はそう話す。

 こうしたグレーゾーンについての知見を深めることが、ウイルスの感染拡大を抑える鍵になるかもしれない。

「軽い症状にどんなものが多いのかがわかれば、感染者を迅速に特定し、隔離することができるようになるでしょう」とマイヤーズ氏は言う。

「完全に無症状というケースが思ったよりも少ないのであれば、今後の道筋や活動制限の緩和方針に大きな影響を及ぼすかもしれません」

文 SARAH ELIZABETH RICHARDS、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社

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無症状の人を顕在化する方法はあるのか?

2021年01月06日 05時09分28秒 | 医科・歯科・介護
感染しても無症状(不顕性感染)の人の割合は?
榊原 洋一(CRN所長、お茶の水女子大学名誉教授、
ベネッセ教育総合研究所常任顧問)
2020年4月17日掲載
 
新型コロナウイルス感染症,榊原 洋一
 
新型コロナウイルスによる肺炎で有名人が命を落としたり、多くの人が重症となって人工呼吸器に繋がれているニュースを見て、私たちの不安はますます強くなってきています。 本コーナーで以前に触れたように、子どもは、比較的軽く済むことがわかってきました(乳児は重症化した例の報告があります)が、私たち大人は、高齢者でなく20代でも重症化することがあります。しかし同時に、感染を起こしても一部の人は全く症状が出ない、いわゆる不顕性感染があることも知られています。
 
では、大人が感染した場合、どのくらいの割合の人が全く症状の出ないままに治ってしまう不顕性感染なのでしょうか。大人の不顕性感染について知ることは、子どもたちの感染予防の参考にもなるかもしれません。
 
新型コロナウイルス対策には、国によって相違があり、それが大きな国際的な議論を呼び起こしています。日本に対する国内外からの目下の批判は、PCR検査数が少ない、ということですが、かつては日本に寄港したクルーズ船内での感染に対する、日本の対応策も批判の的でした。
ところが、このクルーズ船で集められた多数の船客の行動様式や、症状、そしてPCR検査の結果の正確な記録が、今となっては極めて貴重な公衆衛生学上の資料として、世界中の研究者から注目されています。
 
その一つが、感染した人のどのくらいの割合が、不顕性感染になるのかという疑問への答えです。
 
不顕性感染を起こしている人は、PCR検査で陽性であっても、症状がありません。
でもそれだけでは、その人が不顕性感染者であるとは言えません。
現在は症状がなくとも、数日から1、2週間後に症状が出てくる潜伏期である可能性も高いのです。不顕性感染は、PCR検査で陽性であったにもかかわらず、潜伏期の2週間以上経っても症状が出ないことを確認して初めて分かるのです。
 
不顕性感染は症状がありませんから、無症状の人にPCR検査をして見つけるか、あるいは新型コロナウイルスに対する抗体を調べる血液検査をしなくてはわかりません。
さらに、症状がない人の中にどのくらいの割合で不顕性感染者がいるかは、新型コロナウイルス感染が終息(例えば潜伏期より長い日数など一定期間に渡って症状の出てきた新規の患者さんやPCR検査陽性者が出ない状態)した地域で、大勢の症状の出なかった人を調べなければ分かりません。
 
例えばある地域(国)で、新型コロナウイルス感染が終息したとします。その地域(国)の住人は、新型コロナウイルス感染に関して、以下のどれかに分類されます。
 
亡くなった人
発熱や咳、肺炎などの症状があったが治った人(有症状感染者)
全く症状の出ないまま治ってしまった人(不顕性感染者)
未感染者
1と2はすぐにわかりますが、3と4は終息後にPCR検査を行っても見分けがつきません。両者とも、終息後であればPCR検査では陰性だからです。
見分けるためには、終息前から定期的に全員にPCR検査を行うか、あるいは抗体検査をするしかありません。不顕性感染でも抗体価は高くなっているのです。
症状のない人に片っぱしからPCR検査をすべきだ、という意見の背景には、不顕性感染者や潜伏期の患者さんを見つけて隔離するということ以外に、こうした感染の情報を知りたいという思惑があります。
ただし、そのためには、地域(国)の全員かあるいは多数の無作為に抽出した人にPCR検査をするしか方法がありません。
さらに現在のところ新型コロナウイルス感染が終息した国や地域はありませんから、不顕性感染率は現時点では知ることができないのです。今アメリカで無作為に選んだ無症状の人の抗体検査をする計画がありますが、それは不顕性感染率を求めるためです。
 
ところが、唯一、不顕性感染率を知ることのできる場所があったのです。それが、横浜港に停泊していたクルーズ船だったのです。
 
クルーズ船内の船客には、ほぼ全員に対して複数回PCR検査が行われています。もちろん発熱や肺炎などの臨床症状も細かく記録されています。
そして、新たな感染者が出ないことを確認して、船客の下船が許可されていますので、船内での新型コロナウイルス感染は終息しているのです。
こうした記録の重要さに気づいた研究者グループが、データを解析して不顕性感染率を割り出すことに成功したのです。
 
調査方法の詳細は省略しますが、クルーズ船乗員3,711名に対して、3,063回PCR検査が行われ、634名に陽性反応が出ました。そして陽性反応が出た人のうち、検疫期間が終了した2月21日までに、306名の人に発熱や咳あるいは肺炎などの症状が出ましたが、6回の中間集計時に症状がなかった人の総和は320人でした。この320人は、不顕性感染で最後まで症状がなかったグループと、その後症状が出てきたグループの合わさったものです。
潜伏期間などから、この中で本当に不顕性感染であった人を推計すると113人になり、PCR検査で陽性であった人の17.9%に充たることが分かりました。クルーズ船乗客は60代から70代の人が多かったので、この結果を特定の地域や国に直接当てはめることはできませんし、国や地域によって新型コロナウイルス感染の広がりに関係する諸条件は違います。
とはいうものの、世界で初めて地域や国における新型コロナウイルス感染症のおおよその不顕性感染率を知ることができたのです。
 
この不顕性感染率は、今後の新型コロナウイルス感染対策に極めて有用なデータです。
例えば、ある地域や国で、10,000人の人に新型コロナウイルス感染の症状が見られたとすると、実際に感染を起こした人は12,195人(10,000÷(1.00-0.179))位いることになります。
新型コロナウイルス感染者は、報告されている患者数の数倍以上いるという意見を述べている人もいますが、それは憶測に基づく科学性のない値です。
 
この調査ではもう一つ重要な事実がわかりました。検疫が始まったのは2月5日ですが、感染した人の発症時期から推測すると、大部分の人の感染時期は検疫開始前であることも明らかになりました。検疫後の船内の感染防止体制が不備であるという、一部の感染症専門家からの非難は当たらなかったのです。
 
クルーズ船内での新型コロナウイルス感染症の蔓延は、12人の船客が亡くなられるという大変不幸な出来事でしたが、今後のパンデミックへの対応に有用な、貴重なデータも提供してくれていたのです。
 
 
【参考文献】
Mizumoto Kenji, Kagaya Katsushi, Zarebski Alexander, Chowell Gerardo. Estimating the asymptomatic proportion of coronavirus disease 2019 (COVID-19) cases on board the Diamond Princess cruise ship, Yokohama, Japan, 2020. Euro Surveill. 2020;25(10):pii=2000180.
https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.10.2000180    
筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)
 
医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。 
 
主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。

 

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新型コロナ】川崎で最多130人感染 スナック忘年会でクラスター

2021年01月06日 05時06分11秒 | 事件・事故

1/5(火) 18:45配信

カナロコ by 神奈川新聞

新型コロナウイルス感染症を巡り、川崎市は5日、10歳未満~100歳以上の男女130人の感染が新たに確認された、と発表した。中等症3人、無症状117人、無症状10人で、84人の感染経路が不明。1日当たりの新規感染者数は、1日の105人を上回り過去最多を更新した。市発表の感染者数は4864人となった。

年代別では20代が42人と最多。40代21人、30代18人、50代17人、60代7人、10・70・80代が各6人、10歳未満4人、90代2人、100歳以上1人。居住区別では川崎区31人、高津区21人、幸区18人、中原区15人、麻生区14人、多摩区12人、宮前区と横浜市が各8人、東京都2人、相模原市1人。

 市によると、家庭内感染は20人、陽性者との接触者は26人。うち、クラスター(感染者集団)が発生していた施設や病院での感染も相次ぎ、川崎区の高齢者介護施設では90代の女性入居者が新たに陽性となり計27人、市南部の病院では80代の男性入院患者が感染し計8人となった。また、患者と職員の計2人が感染していた市中部の病院では、新たに入院患者2人と看護師の計3人が感染し、市はクラスターと認定した。

 このほか、昨年12月25日に市内のスナックで忘年会を行った9人のうち、70~90代の男女5人の感染が判明。市はクラスターとみて、残りの参加者の検査を進めている。

神奈川新聞社

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元日急逝の新江・神奈川県病院協会長に黒岩知事 緊急事態宣言「遺言のよう」

2021年01月06日 05時03分24秒 | 医科・歯科・介護

1/5(火) 21:10配信

カナロコ by 神奈川新聞

共同でメッセージを発出する県医師会の菊岡会長、黒岩知事、県病院協会の新江会長(左から)=県庁(2020年12月24日)

 黒岩祐治知事は5日の年頭会見の冒頭、県病院協会の新江良一会長が1日に虚血性心不全で急逝したことに触れ、「神奈川の医療を守るため、コロナ対応では最前線に立って懸命に努力された。心から哀悼の意を表したい」と述べた。

 新江氏とは昨年12月24日に並んで記者会見し、逼迫ひっぱくする医療体制の現状を共に訴えていただけに、「お元気そうで普段と変わらない感じだった。突然の訃報で信じられない思いだ」と神妙な面持ちで語った。

 この会見では新江氏が「国で緊急事態宣言を発令していただきたいのが正直なところだ」と訴えていただけに、知事は「今では遺言のような感じさえする。今週中にも緊急事態宣言が発出されることになりそうで、医療現場の負担を少しでも減らしてほしいという新江会長の思いにつながることを心から期待したい」と故人をしのんだ。

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