1/6(水) 8:02配信
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感染者増に警鐘を鳴らす新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社
コロナ禍で迎えた2021年。変異種の発生に、早くも第4波を懸念する声が出ている。
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昨年末、新型コロナの変異種が発見されたとの報道が世界を駆け巡った。感染力は従来のウイルスよりも最大1.7倍あるとされ、英国で感染が急拡大。オランダやデンマーク、豪州などでもこの変異種が見つかった。
多くの国が英国からの受け入れを禁止する中、日本も出入国緩和策の対象から英国を除外すると発表し、入国制限を強化した。
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之医師がこう警告する。
「すでに英国の変異種が日本にも上陸している可能性があります。これからも継続して入ってくると、感染が止められなくなる恐れがあります。他国からの渡航者を含め、空港での水際検査を徹底する必要があります」
東京や大阪など大都市圏の新規感染者数は高水準のままだが、明るい兆しもある。宮坂医師によれば、第3波が収束に向かっている可能性があるという。無症状者を除いた、東京都の「発症日別による陽性者数の推移」を見ると、12月中旬をピークに減少している。
「無症状者を含めた新規感染者数は、検査数の増減に左右されます。死者と重症者が減ればいいので、発症日別の流行曲線でピークを見て、感染の状況を判断するのも一つの方法です」
感染症が流行し始めてピークに至るまでに要した期間と、そこから収束に向かう期間はほぼ同じであることが多い。
「患者数が増え始めたのが10月下旬ごろですから、2カ月近くかかっています。ですから収まるのは2月中旬か下旬でしょう」
ただ、変異種が入ってくれば、「第4波の引き金にもなりかねない」と警戒する。現時点では変異種の病原性が高まっているというデータはないが、感染者が増えれば重症者や死亡者も増える。ただでさえ逼迫(ひっぱく)している医療現場に、これ以上の負荷をかければ医療崩壊につながりかねない。
医療ガバナンス研究所の上昌広医師がこう危惧する。
「日本は東アジアでは新型コロナを最も蔓延(まんえん)させた国です。台湾では海外からの帰国者に外出禁止を義務付け、違反者には多額の罰金などを科しています。日本はそんな厳しい検疫措置をしていないから、また水際作戦に失敗するのでしょう。変異種を流入させてしまえば、爆発的に感染者が増えるかもしれません」
感染者が増えても、大半は無症状だ。無症状感染者は活発に動くので感染を広げることがわかっている。ところが、日本は医療や介護、公共交通機関、小売業などに従事するエッセンシャルワーカーを含め無症状の人には、無料で受けられる行政検査を実施していない。上医師が続ける。
「第4波は必ず来ます。このままでは緊急事態宣言やロックダウンで一気に感染者を減らすしかなくなる。収束している間に、検査で無症状の陽性者を隔離するのが最大の再発防止策ですが、それをしないから、また感染爆発をくり返す。経済的にも二番底、三番底が待っていて、破滅していくパターンです」
今心配なのは、現在開発されているワクチンが効かなくなることだ。
ワクチンはウイルスを攻撃する抗体などを体内の免疫細胞に作らせるためのものだが、変異したものに対応できるのだろうか。宮坂医師が解説する。
「(ウイルスが人の細胞に侵入する際に使う)ウイルス表面の突起状のたんぱく質には9カ所の変異がありますが、免疫系が異物と認識する目印は他にたくさんあるのでワクチンが効かなくなる可能性は極めて低い」
ワクチンの有効性も期待できそうだ。臨床試験で米ファイザーのワクチンの予防効果が95%、英アストラゼネカが平均70%、米モデルナは94%に上った。日本政府は、この3社から計2億9千万回分の供給を受けることで合意している。
懸念されるのは安全性だ。米国で27万人余りに1回目の接種をした時点で、6人に強いアレルギー症状であるアナフィラキシーショックが起きた。
「コロナワクチンが怖いのは、強いアレルギー反応を起こす物質が何か、原因がわからないまま接種を受けなければならないことです」
こう危機感を募らせるのは、新潟大学名誉教授の岡田正彦医師だ。その上で次のように指摘する。
「さらに気になるのはもっと長期的な副作用です。過去に人工の遺伝子を注射する治療で、がんや原因不明の病気になるケースが起きました。今回も遺伝子を使ったワクチンが、人間の遺伝子のどこかに組み込まれて、将来、発がんなど悪さをする可能性がゼロとは言えないのです」
少なくとも、がんの最短の潜伏期間である5年間は追跡調査が必要だと強調する。また、ワクチン接種で、かえって感染症を悪化させる「悪玉抗体」ができる恐れも指摘されてきた。だが、極めて多数の人がワクチン接種後にコロナに感染しないと、そのリスクは見えてこない。
日本にワクチンが入ってくるのは、2月か3月ごろになると思われる。引き続き安全性を慎重に見極めていくしかない。
7月から予定されている東京オリンピック・パラリンピックは開催できるのだろうか。宮坂医師がこう指摘する。
「日本だけで、あるいは観客を限ってやるのなら可能です。完全に近い形で開催できればうれしいのですが、五輪に限らず経済を動かせば感染者は必ず増えます。ゼロリスクはあり得ない。長い目で見て感染リスクのほうが上回るのなら、慎重に判断するべきでしょう」
第3波を抑え込んだとしても第4波が来る可能性は高いようだが、コロナの流行はいつまで続くのだろうか。
「その後、小さな波をいくつかつくりながら、次第に収束に向かっていくと見ています」
まだしばらく、withコロナでの生き方を模索する時間が続きそうだ。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2021年1月15日号


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