もし新型コロナウイルスに感染したら、自分自身が感染源にならないためにも、できることならごく初期で気づきたい。
感染拡大当初の2月中旬、厚労省は新型コロナウイルス感染による肺炎の初期症状をこう公表した。
《発熱やのどの痛み、咳が長引くこと(1週間前後)が多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える方が多い》
また、「相談・受診の目安」として《風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)》そして《強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合》を挙げた。
だが、これらの症状だけではない。実際の感染者には、発症前からみられる兆候がある。「超初期症状」ともいえる、その症状とは──。
データによると、症状として最も多く確認されたのが「発熱」で28.8%、続いて「咳」27.9%。3番目に多かったのが「鼻汁」と「頻呼吸」でいずれも15.4%だった。感染症に詳しい廣津医院院長の廣津伸夫さんは「注目すべきは頻呼吸」と話す。
「頻呼吸とは概ね1分に25回以上の早い呼吸のことを指し、酸素不足で息切れしている状態。肺の機能が落ちたり、肺炎になった人にみられます。コロナウイルスは下気道といって気道の奥深く、つまり肺に感染し、炎症を起こすので息切れという症状になって現れるのです。
一方、季節性インフルエンザは鼻やのどなどの上気道に感染することが多いので、息切れは通常みられません。花粉症や普通の風邪にもない症状です」
また、ここ数週間で多くの人に知られるようになった症状もある。内科医で亀谷診療所院長の亀谷学さんが解説する。
「すでに中国の報道や欧米耳鼻咽喉科学会などが初期症状に、嗅覚・味覚異常が現れることがあると指摘していました。阪神の藤浪晋太郎投手(25才)が『コーヒーのにおいがわからない』との異常を訴え、陽性となったことから日本中で知られるようになりました」
風邪などで一時的に味がわからなくなることはあるが、新型コロナの場合はどんなものなのか。「何もにおわない」「すべてが段ボールのような味しかしない」と訴える人から、「香水やシャンプーの香りがわからない」「みそ汁を飲んでも食感しか感じない」「唐辛子の味がせず異変を感じた」という感染者の体験談が伝えられている。
「最近では、検体採取で、のどより鼻腔の方がウイルスの検出率が高いといわれています。感染により鼻粘膜および嗅神経にダメージが生じやすく、嗅覚や、味覚に影響が出るのではないでしょうか。新型コロナの感染の特徴かもしれません」(廣津さん)
嗅覚より思い当たりにくいがこんな超初期症状の報告もある。目の結膜炎だ。3月28日の米CNNはこう報じた。
《世界各国からの報告では、新型コロナウイルスに感染している人の約1~3%が結膜炎にも罹患している。目の充血と同時に発熱や咳、息切れなどの他の症状もある場合には、医師の診察を受けるべきサインといえる》
日本眼科学会もウェブサイトで《新型コロナウイルスは、結膜炎を起こす可能性が示唆されています》と注意喚起している。
嗅覚・味覚異常や結膜炎などがあった場合、即座に病院に行くべきか。前出の廣津さんが言う。
「鼻水は出ないがのどだけが痛い、強い咳だけが出る…など、症状が1か所だけの場合でも、感染している可能性を疑った方がいいでしょう。
そして、他人に感染させないよう、まずは自宅療養をしてほしい。3日ほど様子をみて、発熱の症状が見られたら、病院に行ってください」
ちなみに発熱にも一定のルールがあったというのは現在コロナ感染中の40代男性だ。
「朝の体温は37℃強。それがお昼頃からどんどん上がり、夜には39℃を超える。1週間ほど熱のルーティンが続いて落ち着いてきました。その間、風邪とは明らかに違う強い倦怠感がありました。インフルエンザのようなものと軽く考えられていますが、そんな状況ではありません。薬もないんです、甘く見ないでほしい」
未解明の部分が多い新型ウイルスだけに、日々更新される情報に注意を払いたい。