映画『ダイヤルMを廻せ!』

2012年10月10日 | 映画の感想



監督 アルフレッド・ヒッチコック
レイ・ミランド (Tony)
グレース・ケリー (Margot)
ロバート・カミングス (Mark)
ジョン・ウィリアムス (Inspector Hubbard)
アンソニー・ドーソン (Capt.Lesgate)
Leo Britt (The Storyteller)
パトリック・アレン (Pearson)
George Leigh (Williams)
George Alderson (1st Detective)
Robin Hughes (Police Sergeant)

「私は告白する」に次いでアルフレッド・ヒッチコックが監督したミステリイ・ドラマ1954年作品。フレデリック・ノットの戯曲およびテレビ劇を作者自身が脚色した。撮影のロバート・バークス、音楽のディミトリ・ティオムキンも「私は告白する」と同じスタフ。主演は「午後の喇叭」のレイ・ミランド、「モガンボ」のグレイス・ケリー、「逃走迷路」「恐怖時代」のロバート・カミングスで、ジョン・ウィリアムス(1)、アンソニー・ドーソン(「鷲の谷」)らが助演する。ワーナーカラー作品、3D立体映画であるが、日本公開は平面版になる。
ロンドンの住宅地にあるアパート。その1階に部屋を借りているトニー(レイ・ミランド)とマーゴ(グレイス・ケリー)のウエンディス夫妻は、表面平穏な生活を送っているように見えたが、夫婦の気持ちは全く離ればなれで、マーゴはアメリカのテレビ作家マーク・ホリデイ(ロバート・カミングス)と不倫な恋におちており、それを恨むトニーは、ひそかに妻の謀殺を企てていた。トニーはもとウィンブルドンのテニスのチャンピオンで、金持ち娘のマーゴはその名声にあこがれて彼と結婚したのだが、トニーが選手を引退してからは、彼への愛情が次第にさめていったのである。トニーは大学時代の友人でやくざな暮らしをしているレスゲートに、巧みに持ちかけて妻の殺人を依頼した。計画は綿密で、トニーはマークと一緒に夜のパーティーに出かけてアリバイをつくり、レスゲートにアパートへしのびこませる。約束の時間にトニーはアパートへ電話をかけ、マーゴが電話に出たとき、かくれていたレスゲートが後ろから絞殺するというてはずだった。しかし、実際には絞められたマーゴが必死にもがいて鋏でレスゲートを刺殺してしまった。トニーは、マーゴがマークとの不倫をレスゲートにゆすられていたので彼を殺したという印象を警察に与え、マーゴを罪におとし入れた。マーゴは死刑を宣告され、処刑の前日までトニーの陰謀は発覚しそうにもなかった。

★★★☆☆
この映画の面白いところは、何といっても倒叙ミステリのお手本のようなストーリー展開であること。後々の刑事コロンボや古畑任三郎などに通じるお手本がたくさん詰まっている。ラストの、別の鍵の存在に気づかせて犯人でなくては知り得ない隠し場所から取り出すことによって犯人を自滅させるトリックなんて、あのコロンボの中でも痛快な反則技『死の方程式』を思い出させてくれた。もうひとつ、この映画の面白さは一連の場面ごとで観客が、犯人の立場、ヒロインの立場、刑事の立場、それぞれの立場でハラハラドキドキできるような作りになっているところ。それがラストに一堂に会するから厚みが出ている。それと、殺人シーンの、ハサミが体重で背中に食い込んでいくあたりの描写は、当時の人は今よりももっとショッキングに感じただろうなあ。
と、いいところを見てきたけど、完全犯罪ミステリ映画という視点で観ると、物足りなさは否定できない。殺人自体が想定外の展開になっていくのはまったくもって不完全犯罪だ(だからこそ犯人のハラハラを一緒に体験できるわけだけども)。鍵がそっくりで見分けがつかないのも不自然、鍵ひとつを裸でポケットに入れているのも不自然。雨で濡れてないことから侵入経路が明らかになるなんてあまりにもお粗末。ラストで犯人が鍵まちがいに気がつくタイミングなんてのも都合がよすぎる。
どうやらこの映画、テレビドラマだったものを戯曲化したものを、ヒッチコックが映画化したものらしい。プロットについてナンクセつけるのは酷かもしれないし、こういう完全犯罪の綻びを事件解決の手がかりとしてひとつひとつ楽しむというのが醍醐味の映画なのかもしれない。第一ボクらスレッカラシは、あんなに丁寧に犯罪計画を説明されると、計画どおりにいかないのを確信してしまうし(笑)
今回のヒッチコックのクラス写真の笑顔での登場、思わずこっちもニンマリだ。


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映画『ドライヴ』

2012年10月10日 | 映画の感想



監督 ニコラス・ウィンディング・レフン
ライアン・ゴズリング (Driver)
キャリー・マリガン (Irene)
ブライアン・クランストン (Shannon)
クリスティーナ・ヘンドリックス (Blanche)
ロン・パールマン (Nino)
オスカー・アイザック (Standard)
アルバート・ブルックス (Bernie Rose)

デンマーク出身の新鋭ニコラス・ウィンディング・レフン監督がメガホンをとった本作は、『きみに読む物語』のライアン・ゴズリングと、『17歳の肖像』のキャリー・マリガンの若き演技派二人を主演に迎え、スタントマンと強盗の逃がし屋の二つの顔を持つ男の姿をクールに描き、批評家たちの称賛を浴びた注目のクライム・サスペンスだ。フィルム・ノワールのような静謐さと緊張感溢れるバイオレンスが融合、ジェットコースターのような展開と、二人の主人公が織りなす激しい愛の物語に、激しく心を揺さぶられる事必至。魅力が何層にも詰まった会心作だ。第64回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞している。
天才的なドライビングテクニックを持つ寡黙な“ドライバー”(ライアン・ゴズリング)は、昼は映画のカースタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手というふたつの顔を持っていた。家族も友人もいない孤独なドライバーは、ある晩、同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と偶然エレベーターで乗り合わせ、一目で恋に落ちる。不器用ながらも次第に距離を縮めていくふたりだったが、ある日、アイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が服役を終え戻ってくる。その後、本心から更生を誓う夫を見たアイリーンは、ドライバーに心を残しながらも家族を守る選択をするのだった。しかし、服役中の用心棒代として多額の借金を負ったスタンダードは、妻子の命を盾に強盗を強要されていた。そんな中、絶体絶命のスタンダードに助けを求められたドライバーは、無償で彼のアシストを引き受ける。計画当日、質屋から首尾よく金を奪還したスタンダードだったが、逃走寸前で撃ち殺され、ドライバーも九死に一生を得る。何者かによって自分たちが嵌められたことを知ったドライバーは、手元に残された100万ドルを手に黒幕解明に動き出す。だが、ドライバーを消し去ろうとする魔の手は、すでに彼の周囲の人間にも伸びていた……。やがて、恩人の無残な死体を発見したドライバーは、報復、そして愛する者を守るため、逃走から攻撃に一気にシフトチェンジするのだった……。

★★★☆☆
昔、ライアン・オニール主演の『ザ・ドライバー』っていう寡黙なプロの逃がし屋を描いたカッコイイ映画があった。この映画を見始めたときは、もしかしてあの映画のリメイクかな?と思った。出だしの警察の追跡を巻くシーンはなかなかリアリティがあっていい。派手すぎない演出が逆にハラハラさせられるし、後半にもっと凄いカーアクションが控えているんだろうな、と期待させてくれる。ところが!この映画、後半にあまりカーアクションはない。知り合った女性を守るために、組織に敢然と立ち向かう孤高の男が描かれていく。しかしどうだろう?組織について秘密をバラした女がショットガンで頭を吹き飛ばされるショッキングなシーンから、フォークを目に刺すシーン、エレベーターで頭を踏み砕くシーン。いやはや、こういう暴力描写は正直、苦手だったなあ。こっちに覚悟がなかったぶん、怖かった。主人公の、自分が愛する者を守る強い意志を描いているんだろうけれど、エグイよなあ。
それにしても主演のライアン・ゴズリング。小柄だし、全然強そうに見えない。サソリのスタジャンもダサイなあ。ボクは昔大好きだったイギリスのポップアーティスト、フランキー・ゴーズ・トウ・ハリウッドのボーカルの人(ホリー・ジョンソン)に見えてしかたがないんだけど。
この映画で面白いなあって思ったのは、カメラ。シーンの切り抜き方の面白さ。ハンディカメラの影響からか、最近の映画ってカメラが泳ぐように動き回り酔いそうになるくらいの映像で緊迫感を出すのが流行りじゃないかな。この映画のカメラはその真逆。カメラを完全に固定して、はみ出した映像を想像で補完させるという手法。空中を待った車が落ちてくるけれど、その一部しか映さない。あるいはさんざんバイオレンスを描いておいて、クライマックスの闘いのシーンを影だけで見せる演出が斬新、スタイリッシュ。
とはいうものの、ボクが苦手だったのはピコピコした音楽。その音楽が流れる間合いの古風さ。
第64回カンヌ国際映画祭監督賞受賞映画?エ~!!そんなにいい?わっかんないなあ(笑)

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映画『ウディ・アレンの影と霧』

2012年10月10日 | 映画の感想



監督 ウディ・アレン
ウディ・アレン (Kleinman)
キャシー・ベイツ (Prostitute)
ジョン・キューザック (Student Jack)
ミア・ファロー (Irmy)
ジョディ・フォスター (Prostitute)
フレッド・グウィン (Hacker's Follower)
ジュリー・カヴナー (Alma)
マドンナ (Marie)
ジョン・マルコヴィッチ (Clown)
ケネス・マース (Magician)
ケイト・ネリガン (Eve)
ドナルド・プレゼンス (Doctor)
リリー・トムリン (Prostitute)

1920年代、中央ヨーロッパのある町。そこでは、霧の夜になると連続殺人が発生し、人々は恐怖に脅えていた。フィアンセのイヴ(ケイト・ネリガン)との結婚を夢に描く、平凡な事務員のクラインマン(ウディ・アレン)も殺人犯から町を守る自警団に参加させられる。その頃、町にサーカスがやって来るが、事件のあおりで客足はさっぱり。剣を飲む曲芸師のアーミー(ミア・ファロー)は、サーカスの娘マリー(マドンナ)と浮気した恋人のピエロ(ジョン・マルコヴィッチ)とケンカ別れして、サーカス団を飛び出した。アーミーが転げ込んだのは娼館で、娼婦たち(キャシー・ベイツ、ジョディ・フォスター、リリー・トムリン)にかくまわれる。そこへ、大学生のジャック(ジョン・キューザック)が現れ、700ドルでアーミーを抱きたいと迫る。渋々承知したアーミーだが、今まで感じたことのない歓びを感じた。だが、アーミーは売春容疑で警察に逮捕されてしまう。警察署でアーミーが出逢ったのがクラインマンで、アーミーの保釈後、2人は街を彷徨う。後悔にくれたアーミーは、学生から得た金を教会に献金し、残りを通りがかりの赤ん坊連れの女に与えた。アーミーとクラインマンの間には奇妙な友情が芽生えるが、突然、クラインマンに連続殺人の容疑がかかってしまう。彼と会った直後に、検死医(ドナルド・プレザンス)が殺されたのだ。クラインマンとはぐれたアーミーは、彼女を探すピエロと会い、さっき金を与えた女が殺されているのを見つけ、2人は残された赤ん坊を育てることにする。一方、クラインマンはサーカス小屋の近くで絞殺魔に襲われ、ちょうどいた魔術師と協力して、魔術を使って殺人鬼を捕まえる。が、いつの間にか犯人の姿は消え失せていた。だが、クラインマンは魔術師から助手になるよう誘いを受け、彼は第二の人生を歩むことになる。魔術師は言う。「人生は幻影」

★★★★☆
フリッツ・ラングの『ドクトル・マブゼ』の映像美を取り入れた絵づくり。カフカの不条理を思い出させる、説明不能の状況への投げ込まれた感覚。こんな夢を見たこと、あるある!そういう感覚をまざまざと思い出させてくれた時点で、この映画はもうボクの中では古典の部類。しかもどこかで顔を見たことがある役者たちが走馬灯のように現れる。ミア・ファーローやらドナルド・プレザンスやらキャシー・ベイツやらジョン・マルコヴィッチなんていう懐かしい顔から、ジョディ・フォスターやらジョン・キューザックやらマドンナなんていう顔まで。まさに、夢の世界だ。夢に相応しく、すべてを幻影として消し去るラストも秀逸。

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映画『蝋人形の館』

2012年10月10日 | 映画の感想



監督 ジャウム・コレット=セラ
エリシャ・カスバート (Carly Jones)
チャド・マイケル・マーレイ (Nick Jones)
パリス・ヒルトン (Paige Edwards)
ブライアン・ヴァン・ホルト (Vincent)
ジャレッド・パダレッキ (Wade)

1930年代と50年代にそれぞれ映画化されている『肉の蝋人形』のリメイク。前2作と同じ原案からなっているものの、ほぼオリジナルと言えるストーリーになっている。フットボールの試合を観戦しようと、カーリーと恋人ら若者6人がドライブ旅行へ出かけた。途中、森でキャンプするが、次の日、車のファンベルトが切断されていることに気づく。修理の必要に迫られ、彼らは地図にも載っていない町に立ち寄ることになる。それが恐怖の始まりとも知らずに……。そこには、かつては人気だったという建物自体が蝋からなる“蝋人形の館”があった。
日本でもまだまだ大ヒット中のアメリカンテレビドラマ「24」で一躍スターの仲間入りを果たしたジャックの愛娘キンバリーこと、エリシャ・カスバートが主演!! 『ガール・ネクスト・ドア』でもキレイなお姉さんぶりを見せてファンを増やしている彼女が、今度はホラーに挑んだ。エリシャは金髪と肉付きのよい身体が魅力なのだが、本作では金髪を封印して頑張っている。金髪美女パートはヒルトン家の令嬢パリスが担当。本国アメリカでは映画にちなんだ「See Paris Die」とプリントされたTシャツが登場し、なかなかの売り上げを記録したとか。監督のジャウマ・コレット=セラは31歳の新鋭だが、ホラー好きの期待に応える腕を披露していて、キャストが話題だけの作品には終わらせていない。クライマックスには劇場で観てこそと言える大がかりなシーンが登場するゾ。

★★★☆☆

なかなかよくできた大騒ぎエンタテイメントホラーだった。コワ面白い!高校生くらいの若いころだったら友だち連中とワーワーキャーキャー言いながら楽しめただろうなあ。ボクがこの映画でいちばん怖かったのは、グレーチングっていうんだっけ?地下の格子からペンチみたいなので指を切っちゃうシーン。ああいう末端部の痛みって、想像がついちゃうだけに痛さがリアルで怖すぎる。だけど、いくら蝋人形の館だからって全部蝋で作るなんていうのはいくらなんでも無理。発想としては面白いけれど、部屋から調度からなにもかも蝋で作るなんて馬鹿げている。第一、廊下を蝋下なんかにしちゃったら、靴で歩いたときのくぐもった感触だけでわかっちゃう。まあ、そのへんにリアルを求める必要はなくホラーファンタジーとして楽しめばいいんだろうけれど、絵としての面白さのみを追求した感じでちょっと興ざめしてしまった。
なんにしても最近観たホラー映画の中ではサービス満点、ダントツだったと思う。グロい場面がないわけではないが、おばけ屋敷に行く気分で暇つぶしするにはピッタリ。

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映画『ボブ・ロバーツ』

2012年10月10日 | 映画の感想

監督 ティム・ロビンス
出演 ティム・ロビンス (Bob Roberts)
ジャンカルロ・エスポジト (BugsRaplin)
ゴア・ヴィダル (BrickleyPaiste)
レイ・ワイズ (ChetMacGregor)
ブライアン・マレイ (TerryManchester)
レベッカ・ジェンキンス (DeloresPerrigrew)
ジョン・キューザック (Cutting Edge Host)
ピーター・ギャラガー (Morning News Anchor Dan Riley)
パメラ・リード (News Anchor Carol Cruise)
アラン・リックマン (Lukas Hart 3)
スーザン・サランドン (News Anchor Tawna Titan)
ジェームズ・スペイダー (News Anchor Chuck Marlin)
デイヴィッド・ストラザーン (Bugs' Attorney Mack Laflin)
フレッド・ウォード (News Anchor Chip Daley)
ボブ・バラバン (Cutting EdgeProducer Michael Janes)
ロバート・ヘイズ (Reporter Ernesto Galleano)
ヘレン・ハント (Hospital Reporter Rose Pondell)
フィッシャー・スティーヴンス (Reporter Rock Bork)

フォークシンガーで億万長者、そしてCIAとも関係があったと噂される男が、上院議員選挙に立候補する姿を描くポリティカル・コメディ。候補者を追いかける取材チームが製作するテレビ・ドキュメンタリーのスタイルで描かれている。監督・脚本・主演は「ザ・プレイヤー」で92年度のカンヌ映画祭主演男優賞を受賞したティム・ロビンスで、これが監督第一作となる。製作は「ファイブ・コーナーズ 危険な天使たち」(V)のフォレスト・マーレイ、エグゼクティヴ・プロデューサーはロンナ・ウォレスと、「わたしの彼は問題児ドドンパ」のポール・ウェブスターとティム・ビーヴァン。撮影は「ザ・プレーヤー」のジーン・ルピーヌ、音楽は、監督の実兄で「テープヘッズ」のデイヴィッド・ロビンスが担当。共演は「ナイト・オン・ザ・プラネット」のジャンカルロ・エスポジート、小説家として、またエッセイスト、劇作家として知られるゴア・ヴィダル。「ダイ・ハード」のアラン・リックマン、「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の七日間」のレイ・ワイズ。ロビンス監督の妻スーザン・サランドン、ジョン・キューザック、ピーター・ギャラガー、ジェームズ・スペイダーらが大挙してカメオ出演している。

★★★★☆
ティム・ロビンスが作ったブラックユーモア満点の冗談映画。カリスマ的な魅力をもったタカ派の上院議員立候補者ボブ・ロバーツがナンデモアリで選挙戦を勝ち上がっていく姿をマジメに記録して制作されたドキュメンタリー映画という体裁で作られているのがまず面白い。こんな作りだから、マジメにやればやるほどクスクス笑えてしまう。なにせ、この候補者、大金持ちだし、ボブ・ディランっぽいミュージシャンだし、ひたすら押しが強いしで、魅力的に見える場面もあるし、タカ派の主張ぶりが怖くなってしまうようなところもある。そんな彼を克明に記録したと見せかけつつ、観客もまた、彼の評価について翻弄されてしまうところが面白い。
しかし、こんなふうにしてマスコミをうまく利用して大衆を操作することで、トンデモナイ候補者がやがて国を牛耳たり、果ては世界情勢にまで影響を与えてしまう・・・アメリカという国に対する痛烈な風刺がこめられた映画だ。日本じゃ総理大臣を国民が選挙で決めるわけじゃないので国民が選ぶ大統領選挙ってのがうらやましく思えることもあるけれど、こんなふうに大衆操作される危険も否定できないな。まあ、日本の政権指示の浮き沈みを見る限り、よその国だけの問題じゃないなあ。

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ショートショート『フラフープ』

2012年10月10日 | ショートショート



なんだかまた最近、ブーム再燃らしいんですよ、フラフープ。
知ってます?腰をクネクネして回す、アレ。
昔、世界中で大流行したんですよ、1958年に。アメリカでブームになって同じ年には日本でも大ヒット。
売れに売れて入荷待ち状態。巷にはフラフープを回す老若男女が溢れ返って。すごかったんですから。
それがやりすぎて胃に穴があいたとか腸捻転になったとか、夢中になってて交通事故に遭ったとか。
たちまち弊害が社会問題になって、ブーム終息。あっけなかったなぁ。
フラフープって、アメリカの玩具メーカーが開発したんです。
もともとオーストラリアで竹の輪を回していたのにヒントを得てプラスチックで製作したんですよ。
で、動きがフラダンスみたいってんで、フラフープって商標名にして。
インターナショナルでしょ、フラフープって。
世界中に情報が飛び交い流行が広がる時代の到来を象徴する、世界をつなぐ『輪』ってわけですよ。
ま、世間の人はそう思ってますけどね。
ここから、この話を聞いてる人にだけお話する内緒の話ですよ。
実はね、あのフラフープって宇宙人なんですよ。まあ宇宙も広いですからね、輪っかの形の宇宙人ってのもいるんだよなあ。
玩具会社の社員を洗脳してね、宇宙人を製品だと思いこませたってわけ。
それで億単位の宇宙人があっという間に世界中に広がって。まあ、つまり1958年にぶっちゃけ人類、世界征服されてたんですよ。
侵略者ってのは、こんくらいスマートにやんなきゃね。
嘘こけって?
フラフープ星人のボク本人がそう言っているのに?
まあ信じてもらえないってことは、こっちとしては都合がいいことなんですけどね。
フラフープ視点で見ると、回してる人間って実にかわいいんだよなあ。バレリーナみたいに無心にクルクル回っちゃって。
これからもボクらをしっかり楽しませてくださいよ、よろしくお願いします。
え?フラフープ星人はいったいどのくらい存在するのか?
地球に来ている数はたかが知れてますよ。ほぼ無尽蔵と言っていいんじゃないかな。
太陽系侵略拠点のマザーを見てもらったらわかると思うんですけど。
え?マザーって何か?御存知ありません?土星の周りのフラフープ。

 



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