え?
今、なんつった?
なに、その言い方。セクハラかっつーの。
会社の給湯室でカップラーメンにお湯注ぎながら、急須のお茶っ葉捨ててる女子に言う話?
デリカシーないっちゅーか、なんちゅーか。
思わず、引きつった笑顔で固まってたら、お茶っ葉がゴミバケツにボト。
サエキさん、何もなかった顔でお湯入れたラーメン捧げ持って戻ってった。
んなこと、言われたの、モチロン初めてだ。ふざけないでよね。
カタカタカタカタカタ・・・急須の口と湯呑みが触れて・・・止まれ、止まらんか、オイ。
お茶を手に、デスクに戻って本の続きに目を落とす。
誘われてことわりきれなくて始めた手話サークルのテキスト。
ぜんっぜん頭に入らない。平常心、ヘージョーシン!
照明を落とされたオフィス、あたしとサエキさんの場所だけにスポットが当たっている。
落ち着け、落ち着け。
勤務終了時間、あたしはそそくさ帰り支度をしてオフィスを出た。
だってイヤじゃない、待ってる、なんて思われたら。
オフィスを出て駅に向かって・・・げっ、追っかけてきた。
昼間はゴメン?
だったら最初っから、んなこと言うなっつーの。
めし、おごる?
何それ。
なんだと思ってんの?
「あのね、今日はね、Leap Dayなのよ。
女性から男性に告白できる四年に一回きりのチャンスなんだから。だから・・・そんな日に・・・バカ!」
バカはないだろ、バカ?
「バカだからバカって言ったんじゃない、バカ!」
じゃサイナラって・・・え、行っちゃうの?一段飛ばしで陸橋をのぼって・・・とっとと駅へ・・・
いいの、それで?
え、駅前大通りの向こうで、なんか言ってる・・・
こんなに離れて聞こえるわけないじゃない。なにやってんだか。
え・・・
手話?・・・
覚えたんだ。
えっと・・・
えっと・・・
えっと・・・
・・・
もう。Leap Dayだって言ってんじゃないの、バカ・・・