<絶体絶命までのあらすじ>
ニューオリンズで英国諜報部員が次々と殺された。暗黒街を支配するミスタービッグが黒幕と睨んだ英国情報部は、腕利きのスパイ、ロジャー・ボンドを現地に送り込んだ。空港に颯爽と降り立ったロジャー・ボンドの前に、清楚だけど巨乳のジェーン・セイモアが現れる。女に目がないロジャー・ボンド、鼻の下をのばして誘われるがままダウンタウンへ。タロット占いの店に入ろうとしたそのとき、背後から『プ』!アイタッ、首の後ろに灼けるような痛みが。なんと、吹き矢の針が刺さっているじゃないか。ウウッ、どうやら毒が塗られているらしい。ミスタービッグの片腕、サメディ公爵が不敵に笑う。「ハハハハハハハハ!ロジャー・ボンド、この吹き矢の毒に解毒剤はないぞ。すでに全身を毒が回ったのだぁ」清楚な巨乳に目が眩んで、解毒剤のない毒矢が刺さっちゃうなんて、オーマイガッ。危うし、ロジャー・ボンド、まさに絶体絶命!
あらすじ説明が終わったところで、サメディ公爵はあらためて不敵に笑い、お約束どおりに同じセリフを繰り返した。
「ハハハハハハハハ!ロジャー・ボンド、この吹き矢の毒に解毒剤はないぞ。すでに全身を毒が回り始めたようなのだぁ」
おっと、あらすじとは微妙に違う言い回しじゃないか。回り始めような?
「そのとおりだぁ。この吹き矢の毒は、いたぶるようにジワジワ全身を駆けめぐって、徐々に効いてくるのだぁ」
ジワジワ?徐々に?なんだ、そのニュアンスは?
「ワニの金玉から抽出したこの毒は、ゆっくりと確実に死に至らしめる毒だぁ。致死率100%、肉が溶け、内臓が腐っちゃうのだぁ」
えー!それは困る!ワニの金玉の毒で死にたくない。
「ハハハ~、あっきらめなさ~い。すでに毒は回り始めつつあるようなのだぁ」
回り始めつつあるような?なんだ?その言い回しは?微妙すぎないか?ちゃんと説明しろよ。
「イヤ、だからその、この毒の効果は確実なんだけど、とってもゆっくりと回って、とってもゆっくり効く毒だから」
おいおい、どのくらいゆっくりだ?
「えっとぉ~、五十年くらいかな」
五十年?なんだそれ。
「でも、致死率100%だぞ。まいったかぁ」
こいつ、私の年齢を知っているのだろうか?先代のショーン・ボンドよりも三つ年上だぞ。毒が効くころには百歳になってんだぞ。
「どうだぁ?シリーズも打ち切りかぁ。残念だったなぁ。ハハハハハハハハ!」
そんな緩慢な毒、進行が緩慢な前立腺がんのほうがよほど怖いじゃないかよっ。
ツッコンだつもりのロジャー・ボンド、後年ホントに前立腺がんを患うことになるなど知る術もなかった。
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