カキぴー

春が来た

シャンパン&キャビア

2010年03月07日 | 食・レシピ

ウエイターがキャビアを持ってきた。 「レモンさえあれば充分だ」 フェビアンはそう言って、輪切りにしたゆで卵と、玉ねぎののった大皿を断った。 「折角の美味を損なうような食べ方は、やめようではないか」 ウエイターは灰色の真珠を、スプーンで山盛りにすくって、僕達の皿に分けた。 僕がキャビアを食べるのは、生まれて4回目、 これまでの3回もハッキリ覚えていた。

アメリカの作家、アーウイン・ショーの 「真夜中の滑降」 の一節だが、ゆで卵を断ったのは正解. しかし皿に盛ったキャビアを、スプーンで食べるだけでは、あまりに色気がなさ過ぎる。 男だけの食事だから構わないが、ショーらしくない。 ショーが書く都会の女達は、上品で洗練された魅力があり、 しかも気の利いた台詞を口にする。 いずれこのブログで紹介したいと思うが、多感な年頃、彼の作品を読み漁ったのが思い出される。

北回りのヨーロッパ路線が開設されて間もない頃、 パリやロンドンから日本に帰る便は、給油のため評判の良くない、モスクワのシェレメーチエヴォ国際空港に トランジットする。 限られた乗客は、眠い目をこすりながら、真夜中の売店に向かう。  正真正銘の、「ロシア・カスピ海産」のキャビアを、きわめて安く買えるだ。 キャビアの入った粗末な容器を提げて機内に戻ると、スチュワーデスが冷蔵庫で預かってくれる。 たまたま近くの席で目にとまった、 デザイナーの森英恵さん夫妻も、大きな容器を提げていたのを思い出す。 

一般的にキャビアとは、チョウザメの卵を指すが、フランスでは魚卵の総称で、使用する場合がある。 またロシアでは 「チョールナヤ・イクラー」、すなわち 「黒い魚卵」と呼ぶ。 主な産地は、カスピ海とアムール川が有名。 チョウザメの仲間で最も大きな 「ベルーガ」 は体長3~4m、体重300kgを超えるものもあるが、普通は100~200kgで、約15%にあたる15~30kgがキャビアとして取れる。 成熟までなんと20年の歳月を要する。 輸入キャビアは長期保存のため、高濃度の塩分で塩漬けされるため、本来の味とは言い難い。 原産国で塩分3~5%の本物を食べたら、きっとキャビアの認識が変わる筈。

私が推奨するこの珍味の食し方を紹介しよう。 まずキャビアをのせる、「ブリー二」と称するそば粉を焼いて作った、ロシア風パンケーキを作る。 そば粉を牛乳で溶かし、バターで練ったものを、フライパンで焼くだけ。 イメージとしては、よくオードブルや、カナッペに用いる小ぶりな薄いもの。 クラッカーで代用してもいいが、折角だから手間をかけた方がいい。 この上によく冷えたキャビアを、小さなスプーンでのせ、その上に、水でさらした玉ねぎのみじん切りを振りかけ、レモンを絞ったら出来上がり。 本来の飲み物はウオッカだが、やはりシャンパンか、ヴァンムースがお勧め。

シャンパン&キャビア、ジャズの歌詞でも歌われるが、 デフレの影響で少しは安くなったのだろうか? 

  


最新の画像もっと見る

コメントを投稿