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春が来た

「心臓の耐用心拍数」は15億回・・・・人間の寿命は?

2012年04月20日 | 日記・エッセイ・コラム
先日のラジオ深夜便で聞いた、生物学者・シンガーソングライター「本川達雄氏」の話が面白かった。 「一人ぐらい世の中の役に立たないことを勉強する人間が居てもいいのではないか」、そう考えて東大理学部生物学科に入学し、研究テーマがナマコやホヤというのが面白いし、役に立たない学問から導き出す現代社会への風刺や提言はどうしてなかなかのもの。 氏の著書で1992年に出版し、5年間で64万部のベストセラーとなったのが 「ゾウの時間ネズミの時間」。 ネズミもゾウも心臓の耐用回数はおよそ15億回、一方心臓が1回ドキンと打つ時間を「心周期」と呼ぶが、ヒトの場合はおよそ1秒。 ところがハツカネズミなどは物凄く早く1分間に600~700回、1回のドキンに0・1秒しかかからない。 

ちなみに普通のネズミは0・2秒、ネコが0・3秒、ウマが2秒、ゾウが3秒。 そしてハツカネズミの寿命は2~3年、インドゾウは70年近く生きるので、ゾウはネズミよりずっと長生きなのだが、「心拍数を時間の単位」として考えるならゾウもネズミもまったく同じ長さを生きて死ぬことになる。 ところで15億回という心拍数からいくと、人間の寿命はどのぐらいになるのか?・・・答えは26・3年。 しかし現代人の寿命と動物の寿命を同列に論じるのは無理があると、本川氏は例を挙げて説明する。 動物園のゾウは50歳を過ぎると歯が磨り減ってうまく物が食べられなくなり、食が細ると身体も弱ってきてそう長くは生きられなくなるが、もしゾウに入れ歯が可能になれば、まだまだ長生きできるはず。

もちろん入れ歯だけで人間の寿命が延びてきたわけではない。 日大・小林教授の作成した「江戸時代農住民生命表」によると、この時代の平均寿命は男が36・8歳、女が26・5歳で、わが国の平均寿命が20歳を超えたのは江戸時代の中期に入ってからだという。 後期になっても感染症・戦争・飢饉・地震・火災などによって20歳そこそこであったのは、乳幼児の死亡率が高かったことが要因の一つではないだろうか。 明治時代では明治13年(1880年)男女とも30歳の関門を突破し、大正に入って初めて男女とも平均寿命が40歳を超えた。 平均寿命が大幅に伸びたのは戦後で、昭和56年には男が73歳、女が78歳となったが、ちなみに人類の平均寿命限界値は男77・4歳、女が81・7歳で、男の寿命を縮める要因の第一位は、「独身」。

人類は人工的に80歳まで生きられるようになったが、「長生きは資源を消費する」ので、次世代の分まで先食いしているのが心配だと本川氏は省エネの必要性を説く。 そもそも人間はこれまでスピードを追い求め過ぎた。 時間を短くすることが幸せであると錯覚し、発明されたのが飛行機でありコンピュターであり電化生活などだが、スピードとエネルギー消費はイコールで、行き着いた結果が3・11の原子力発電所事故。 もうすこし少ないエネルギーで生きていければ、そんなに働かなくてもいいし競争もしなくてすむ。 そこで学ぶべきが、本川氏の研究対象となっている棘皮動物のナマコ(海鼠)の生き方で、我々にこれからの生き方を示唆してくれる。

ナマコは基本的に省エネ動物で、海底をゆっくりと這いながら砂と一緒に海底に降り積もって堆積した有機物を食べて生きている。 天敵となる捕捉動物は「人間のみ」で、敵の攻撃を受けると白い糸状のねばねばした内臓を肛門から放出して相手に張り付け、行動の邪魔をして身を守るが、吐き出した内臓は1~3ヶ月ほどで再生される。 体は皮の塊で、骨も筋肉もないし脳ミソも要らないので、エネルギー消費量は鼠の10分の1程度で済むという。 海底に無尽に存在する餌を食べ,外敵からの防御術を身につけたナマコは海底でゆったりと自分の時間で生きており、まさに「天国の生活」。 若いときの価値観で年寄りが生きてはいけない。 オマケの人生と考えスローライフを楽しめと、ナマコを例にして本川氏は諭す。    


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