青春アドベンチャー ラジオの前で 6話
(ゆういち)
その夜 午後10時ごろ 関東地方に大型の台風が上陸した。
オレ さえきゆういちは 部屋にいた。
まりこさんの事を考えながら ラジオを聞いていた。
この時間に いったい何人の人がラジオをつけているんだろう?
みんな だれと どこで ラジオを聞いているんだろう?
(弁護士のくどうあかね)
タクシー運転手は 私のマンションに入るなり
私の口をふさぎ
「大人しくしてください。手荒なマネはしませんから。」
と言った。
男は 片方の手で 鍵をしめた。
男は カッターナイフで 私を脅しながら用意していたビニールテープで 私の手足を縛った。
(ラジオ)
たった今 入ったニュースです。ふじみ町郵便局 強盗事件ですが、
この郵便局の監視カメラが・・、
(雷が落ちる)
(あかね)部屋の電気が消えた。 停電だ。
部屋が 真っ暗になった。
「変なことしたら タダじゃおかないわよ!」
「用事がすんだら すぐに出ていくよ。」
「なんなの?近づかないでよ!」
私は 逃げようとしてバランスを崩し テーブルに足をぶつけた。
「あっ・・。」
「どうした?大丈夫か?」
「足を・・、平気よ!こっちまで こないで!」
「命まで 取ろうなんて 考えてない。」
「じゃあ-、何!」
「・・さすがに 肝が据わっているんだな。」
「じゃあ何?脅し? 私に恨みでもあるの?」
「ない。」
「あの 嫌がらせメールあなたね!」
「何の事だ。オレは 知らない。」
「じゃあ・・?」
「金だ。40万出せ。」
「は、ははは、よんじゅうまん?(笑)たった それっぽちで犯罪を犯すの。」
「いいから(怒)、40万用意してくれ。あんたには 40万でも オレにとっては どうしても必要な金なんだ。」
「いいわ、要求は それだけ?」
「ああ。」
「ただ、今すぐ 警察に連絡されると困る。」
「今じゃなきゃ いいの?」
「いい!はやくしろ!」
(くどうあかね)
弁護士という仕事がら 色んな犯罪者を知っている。
ただ、この男は 少し雰囲気が違う気がした。
「お金、電子金庫に入れているのよ。停電直るまで 待ってくれる? きっとすぐ つくわよ。」
「今 財布に入っているだけでもいい。」
「焦らないほうが いいわよ。エレベーターも止まっているし、あなたが階段で この43回から降りているうちに 携帯電話で通報すれば 下で 御用なのよ。」
「・・通報してもいい。でも1日、いや明日の朝まで 待ってくれ。そうしたら 自首する。」
「私の40万は?」
「勝手に使ってしまったと言う。」
「変な話ね、分からないわ。」
「いいんだっ、分からなくていい!」
「40万出して それはないわよ、説明して!なぜ40万必要なのか?」
「あんたには 関係無いはずだ。」
(れいこ)
夜10時すぎ いきなり停電した。
ちょうど けいごさんの事を考えていたから ドキっとした。
何も無ければ いいけど・・。
ノックの音がした。
手探りで 玄関に行く。
覗き窓から見ると 小さな人影が 見えた。「誰?」
「あやかです。れいこさん 開けてもらっていいですか?」
「あやかちゃん、帰ってきたのね。」
「れいこさん、私 怖い・・。」
「真っ暗だもんね、入って。」
「こっちに来て、暗いから 足元気をつけて。」「はい。」
「どこ 行ってたの?お父さん 心配してたよ。」
「ちょっと・・、ラジカセが壊れたんで 直してもらおうと思って。」
「そう・・。お父さんにメールしておいて。隣のおねえさんとこにいるって。」
ちいさなラジオをつけた。
ろうそくに 火を灯し あやかちゃんと向き合った。
あやかちゃんは いつもより緊張してないような気がした。
次に続きます。