BE~Beautiful Energy~

自分が自分である(BE)ために。BE~Beautiful Energy~を貴方に。

Book 『The War for Talent』

2008-12-29 | リーダーシップ・マネジメント
この本は、2002年に出されて人事関係者(特に外資系企業)にとても大きな影響を及ぼした本です。6年たった今でも多くの企業が本にかかれている課題に直面しているのが現状です。つまり6年間、頭では分かってはいてもなかなか実行に移せなかったということでしょう。不景気の今だからこそ、この本にかかられている人材マネジメントをしっかりと実行できる企業が勝ち残れるのだと思います。

ウォー・フォー・タレント ― 人材育成競争 (ハーバード・ビジネス・セレクション)
エド・マイケルズ,ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ,ベス・アクセルロッド
翔泳社

このアイテムの詳細を見る



P16
日本企業がまずすべきこと。それは、自社の戦略・事業計画の実施のために今度どのタイミングで、どのようなタイプのマネジメント人材が必要になるのか、その人材の要件と数を明確にし、自社のマネジメント人材の需要サイドをしっかりと把握することである。次にその需要を満たすために必要な、マネジメント人材育成のアクション・プランを策定することだ。

P20
会社に差をつけるのは、人事のプロセスではない。その会社のリーダーたちの意識なのだ。

P24
卓越したマネージャーとはどのような人物か、一般に通用する定義はない。しかし、大まかに言って、マネジメント・タレントとは、鋭い戦略的思考、リーダーシップ、精神的熟成、コミュニケーション能力、有能な人々を引き付けその意欲を引き出す能力、進取の気性、実務能力、そして結果を出す能力を組み合わせたのと考えられる。

P40
人材育成競争は二つの大きな影響をもたらした。第一に給与・待遇交渉の主導権が企業から個人に移ったことだ。有能な人材は、自分のキャリアへの期待を高めるための交渉権を握っている。能力の値段は上がっているのだ。第二に、企業の競争力を高める上で、人材マネジメントが非常に重要となったことだ。人材を引き寄せ、育て、意欲を引き出し、つなぎとめることができる企業は、他の企業よりも多くの優秀な人材を確保でき、業績を劇的に向上させることが可能となる。

P44
調査に参加した1万3千近くのマネージャー、ケーススタディに応じてくれた27の企業、そして100以上の企業とのプロジェクト経験から、マッキンゼーは人材育成競争に勝つための次の5つの行動指針を導き出した。
1. マネジメント人材指向こそ経営層の要件
2. 人材を引きつける魅力の創出
3. リクルーティング戦略の再構築
4. マネジメント人材が育つ組織
5. 人材マネジメントにおける選択と集中

P59
マネジメント人材指向とは、「あらゆるレベルの業務に優秀な人材を備えることが、他社よりも業績を上げるための方策である」という確固たる信念である。言い換えれば、優秀な人材こそ競合優位性を確立するための重要なリソースであり、優秀な人材が業績向上のためのすべてのレバーを引き上げるという認識である。

P65
自分のチームを強化するのに加え、組織全体としても人材が強化されていることを認識するためにリーダーが取るべき行動を6つ挙げる。
1. 最も基本となる人材の要件を決める。
2. 組織内の社員の評価・処遇には、深く積極的に関わる。
3. シンプルだが徹底した人材評価プロセスを実施する。
4. 組織内のすべてのマネージャーに、マネジメント人材評価プロセスを徹底して植え付ける。
5. 資金を惜しまず、人材に投資する。
6. 自ら構築したマネジメント人材層の強さに対する責任を、その人材と彼らの上司であるマネージャーが負う。

P86
EVP(Employee Value Proposition) とは、社員がその企業にいる間に経験し、受け取るすべてを総合したものと言える。仕事に対する本質的な満足感から、職場環境、リーダーシップ、同僚、報酬など。強力なEVPは優秀な人物を呼び寄せる。

P90
優れたEVPは、興味が深く、やりがいがあり、熱意を持って取り組める仕事から始まる。

P94
仕事自体が刺激的であるだけではなく、マネージャーは一流の企業で働くことを望んでいる。その会社の文化や価値を好きになり、よくマネージされた会社の一員になり、意欲をかきたてるリーダーのもとで働きたいのだ。

P102
今日の不安定な市場の中で、雇用の安全はもはや企業に期待できるのではなく、自分自身のスキルにより確保されることを人々は学んだ。そのため優秀な人材は、新しいスキル、知識、経験を身につけるのに役立つ企業に魅力を感じる。

P113
明確のブランドのメッセージによって製品が恩恵を被るのと同様の効果を、企業のEVPももたらす。ボルボのブランドは「安全で頼れるファミリーカー」というメッセージを伝えている。同じようにGEのEVPは、「世界レベルの企業の一員となり、世界レベルのゼネラル・マネージャーになる」というメッセージを伝えているのだ。

P119
1990年代後半に人材をめぐる争いが過熱したことで、企業は自社のリクルーティング戦略を見直し、それまでになかった新しい方法を考案した。賢明な企業は、休戦状態の時期を、人材とのパイプを強化し、人材マーケットにおけるシェアを獲得する好機として活用している。経済が停滞しているときこそ、質の高い人材を採用するチャンスなのだ。再び競争が激化したときに、そのような人材を得るのは困難である。新しいリクルーティング戦略は、どんな経済状況でも通用し、この先何十年か人材をめぐる戦いをリードするために不可欠のものである。

P120
これまでのリクルーティング戦略 < これからのリクルーティング戦略

自社の人材は自社で育てる < すべての職位に外からの人材を入れる
あいたポストの適任者を探す < 常に優秀な人材を追跡する
伝統的な人材獲得源にアクセスする < できるだけ多様な人材獲得源にあたる
求職者に広告を出す  < 求職者でない人材にもアプローチする方法を探す
報酬を一定の範囲で決める < 望ましい人材を獲得するには、報酬のルールを破る
リクルーティングとは応募者をふるいにかけることである < リクルーティングとはふるいわけであり、自社の売り込みでもある
全体計画がなく、必要があるときに採用する < 人材のタイプによって、それぞれ違ったリクルーティング戦略を策定する

P127
中堅そして上級のマネージャーを外部から投入するのと同じくらい、新人を投入するのも重要である。若い優秀な人材との間に強いネットワークを構築することは、その後何年にもわたって、組織を活性化させる。早い段階で、彼らに会社の文化、価値観、技術を浸透させるという効果もある。

P129
優秀な人材をあらかじめつかまえておくアプローチとしては、最初に雇いたいと思う人物に合う仕事を見極めて、そのポストが空くまでコンタクトを取り続ける。その次に、その人物がどんなポストにつけるか念頭において、たとえそのポストが現時点で空いていなくても採用する。待機期間には、特別プロジェクトを与え、企業のことを知ってもらう。最後に、中堅から上級レベルの管理職として採用した社員にふさわしい仕事を作るか、確保する。戦略企画、事業開発、会計監査のスタッフなどは、その会社で最初に行うのに向いた仕事の例としてあげられる。

P136
多種多様なマネジメント人材にアプローチするためにも、新しいリクルーティング・ルートが必要となる。最新のチャネルといえば、インターネットである。シスコのウエブサイトは潜在的な入社希望者の気を引くあらゆる工夫がされていた。Make Friend@シスコ・プログラムは、サイトを訪れた人々と、彼らが興味を持ちそうな仕事をしているシスコ社員とを結びつけるものだ。シスコ・プロファイラーは、ユーザーが履歴書を作成して会社に送付できる気の利いたインターフェース。「おっといけない、上司がやってくる」ボタンをクリックすると、「成功する社員になるための七つの習慣」の画面に切り替わる。(サイトを訪れる人々の90%が、業務時間中に他尾会社からつないでいるため)

P137
データベース・リクルーティングも、志望者との間をつなぐ新しいチャネルである。マーケティング担当者が顧客と接触するように、会社も将来の社員との関係を、データベースを介して築くことができる。この方法は、まず会社にとって望ましい性質を備え、いつか自分たちの会社で働きたいと思う可能性のある人物を特定することから始まる。そのような人々と連絡を取り続け、時間をかけて、自分たちの会社に加わってほしいという希望と伝える。彼らの職業の決定に影響を与えられそうな個人的、職業的な要因を調べ、適切なタイミングと思われる機会を見計らって勧誘する。

P139
社員による勧誘も成功率が高い。企業では誰もが人材スカウトにならなくてはならない。

P143
リクルーティングの最前線には、優秀な実績を上げている社員を送り出すべきなのだ。現場責任者は1ヶ月のうち1日か2日を、採用業務に費やすべきである。優秀な社員にリクルーティング戦略を授け、人事マネージャーは採用マネージャーと応募者の仲介をするのではなく、全体のプロセスの調整役となる。優秀な社員をリクルーティングの最前線に出すのは、もう一つ理由がある。採用活動をする人物が、採用する人材の基準を決定しているということだ。彼らがどの程度の力量を求めるかで、あなたの会社がどれぐらい発展するかが決まる。「凡人はそれ以上のものを何も知ることはないが、才能ある人はすぐに天才を見抜く」。

P145
各部署のリクルーティング戦略を策定することも必要である。1年目は、各部署で簡単でもいいが、「人材のタイプ」「雇用人数」「雇用ルート」「価値提案のメッセージ」「担当者」「成功の基準」程度のものを作成する。2年目には、リクルーティング戦略の成功事例と応募者について、一つの部署だけではなく部門や人材のタイプを超えて共有化する機会を設ける。