「全席優先席」

　２０１４年７月８日、東日本で最初に「全席優先席」を打ち出した横浜市営地下鉄が、２０１２年２月ごろに「最優先席」（仮称）を導入することになったようだ。「本当に席が必要な人に対して、席を譲ってもらえていない」というのがその理由だが、「そもそもの趣旨から外れているのではないか」といった指摘も出ているのだ。しかし２００７年調査では「継続反対」過半数の状態である。横浜市交通局は、２００３年１２月に全席優先席を導入。すべての人が席を譲りあえる社内の環境をつくることが目的だったが、導入から８年以上が経ち、その趣旨も形骸化しているのだ。例えば２００７年に行われた「全席優先席に関する意識調査」（サンプル数: ８８１）では、９５．７％の人が全席優先席について知っているにもかかわらず、「市営地下鉄で席を譲っているのを見たことがありますか。譲られたことがありますか」という問いに対しては、「滅多に見たことはない。譲られたことはない」（３８．６％）、「たまに見る。譲られる」（３５．６％）であった。４人に３人が消極的な反応を示し、全席優先席の継続の是非については４６．１％が賛成で５３．９％が反対である。結果的に反対が上回ってしまったのである。継続に反対する人の意見は、「エリア限定の優先席を設けたほうがいい」（３２．１％）、「趣旨はいいが現実的ではない」（２３．２％）と、制度に実効性がないことを指摘するものが多かったのである。ただし、２０１１年８月に行ったアンケート（サンプル数: ２５５）では「今後全席優先席の制度をどうすべきと思いますか」という問いに対して、「継続すべき」（３０．６％）、「広報等に力を入れるなど、浸透を図り継続すべき」（２７．１％）、「他社の鉄道と同様に一部優先席とした方がよい」（３９．６％）と、選択肢の表現が変わったこともあって、存続を求める声が過半数となった。このため、今回の「全席優先席を残しながら、さらに優先度の高い座席を設定する」という経緯になったのだが、現在はどうなったのか・・・（佐々木和夫）