お次は、政略結婚、冒頭から花婿に拒否られるありがちな設定。
架空世界です。
バッテン印更新中
豪華な式典用の衣装を着た金髪碧眼の美形が言った。
「おい。俺には、この女と決めた人がいる。お前など、ローズテール帝国の皇帝のごり押しがなければ、妻になどしてはいない。身の程をわきまえ、大人しくしていろ。以後、俺に関わるな。」
華燭の典がはじまる、聖堂へ移動する直前だ。
花嫁衣裳を着たアレクシアは、その顔を覆っているベールを上げ、勝気な青い瞳を美形に向ける。花婿予定の隣国、ウエルスタットの王子。
いつものアレクシアなら、喧嘩を売られたら、不機嫌そうに、じろりと相手をねめつけ、言い返していただろう。けれど、開口一番、あまりにも非常識な、この花婿王子の態度に、呆れ、怒りよりも哀れみに近い心境に至る。ここは、説教を垂れるべきか・・・。
う~ん・・・しばし、考える。
「不細工が、泣いても知らん。恨むなら、自分の養父を恨め。」
沈黙を、勘違いし、アレクシアに、追い討ちをかけたがってる言葉。
良いのは顔だけで、脳みそは、全くだな・・と、内心で毒ずく、アレクシア。
養父ではなく、継父だ。アレクシアの父と死に別れた母が再婚した相手が、ローズテールの皇帝だった。その母は、正妃となってい、アレクシアにとり、年の離れた弟たちになる正嫡の皇子たちとも半分だが血のつながりもあり、政略でここへやって来たアレクシアは、こんなふうに、貶められる言われはない。
だいたいが、政略結婚で、不本意なのは、お互いさまだ。
アレクシアは、お相手が、すでに気に入りの女がいるのを承知で、承諾した。
アレクシアは、母方の祖父から受け継いだ小国だが、一国の君主でもある。
しかし、帝国にぽつりと取り囲まれるかたちである小さな一領主といった領土であり、吹けば飛ぶようなその国の存続の為には、帝国との関係は常に良好を保たねばならない。一方で、頼り過ぎない姿勢も保たねばならないので、他国との関係も色々と、考慮しなければならない。
しがらみが、アレクシアに、肯かせた。
決して、美形に期待したわけではない。
そりゃあ、誰しも、互いに思い合う人と生涯を共にしたいというのが本音だろうさ。
けどね。王族として、恩恵を受け育ってきた身で、必要であればそうせざるを得ないのは、当たり前の話。役目を果たしたくなければ、早々に、王族を下りるなりなんなりするべきだろうさ。恵まれた生活に、縁も皆捨てて、一から自分の力で、庶民として生きてみろよ。できるならね。お相手の女は、果たしてついてきてくれるだろうか。・・・ね?王子さまよ?・・・と、アレクシアは、心の中で悪態をつく。
この王子、一人息子なので王太子であり、普通なら、早く世継ぎが望まれるはずで、相応しい女なら、多少のことには目を瞑り、妃として認められたはず。それを、わざわざ、隣国のバツ一皇女、売れ残り決定のアレクシアに、ウエルスタット王国がぜひにと、頼み込むほどということは、性格的に不適切であるか、或いは、話にならないような身分の女か、どちらかだろう。ウエルスタットのしつこいまでの要請で、アレクシアは、肯かざるを得ない状態に追い込まれ、ココに来た。
目の前の王子の様子から察するに、ウエルスタットは、下手に自国の貴族令嬢を充てがれば、非常な手段でその女を排除しかねない。そうすると、自国に不和の種を撒いてしまう。だから、内政に影響しない、他所の王女、ないし、王族を探したらしい。とはいえ、他国と揉めるのも困るので、何かあっても突っぱねられる弱い関係、大国は外したらしいのだが、適齢期の該当者は少なく、王子の愛人問題は聞こえていたから、断られ、レーヌという小国の女王であるバツ一のアレクシアに、目をつけたらしい。
甘く見られたものだ。
帝国の皇女としての身分もあるが、継子なので、たいして影響はないだろうと、ウエルスタットは、計算したのだろう。
はじめの結婚が、たった一日で終わったこともあり、その後も、婚約までにいたるものの断られてきた、アレクシアは、このまま、嫁き遅れて生涯独身だろうと、見られていた。
ちょうど、母にせっつかれた皇帝が、婿探しに焦りはじめていたこともある。
「なあに、一回が二回でも同じことさ・・というつもりで、嫁いで来い。」
と、継父のアホな一押し。
アレクシア自身も、自分が絶世の美女と名高い、母親と似ても似つかない、並みの女なのは承知の上で、一目で自分が気に入られるとは思ってもいない。
けれど、今は帝国の保護下にあるが、小国の主でもある、アレクシアは、跡継ぎを確保しなければならないので、そこのところは、ドライに割り切り、子さえ得られれば、他の事は目を瞑ろうと思っていた。
だから、この王子の発言は、言わずもがなのことである。
黙っていれば、いいものを。
・・・・・・・・。
まあ、これだけ、はっきりと拒絶されていれば、良好な関係は築けまい。
「父上の言われた通りの結婚か・・・。」
駄目なら、戻ってきてもいいよ・・と、信じられないような一言が付け加えられていた。
アレクシアが、ふっとため息をつくと、その呟きを、自分の意を理解し、彼女があきらめたととった王子は、満足げにしている。
王子が、アレクシアの手をとり、豪勢な華燭の典は、行われた。
けれど、アレクシアは、別に、王子に屈服したわけではない。
それならそれで、方針を変えるだけである。
誓いのキスの時、間近にせまるそれをふと反らし、ぎりぎり頬にされるようにしたのは、アレクシアの警告だ。アホ王子は、ただの、事故だと思い、彼自身は、ほっとしているようだったが・・・。
架空世界です。
バッテン印更新中
豪華な式典用の衣装を着た金髪碧眼の美形が言った。
「おい。俺には、この女と決めた人がいる。お前など、ローズテール帝国の皇帝のごり押しがなければ、妻になどしてはいない。身の程をわきまえ、大人しくしていろ。以後、俺に関わるな。」
華燭の典がはじまる、聖堂へ移動する直前だ。
花嫁衣裳を着たアレクシアは、その顔を覆っているベールを上げ、勝気な青い瞳を美形に向ける。花婿予定の隣国、ウエルスタットの王子。
いつものアレクシアなら、喧嘩を売られたら、不機嫌そうに、じろりと相手をねめつけ、言い返していただろう。けれど、開口一番、あまりにも非常識な、この花婿王子の態度に、呆れ、怒りよりも哀れみに近い心境に至る。ここは、説教を垂れるべきか・・・。
う~ん・・・しばし、考える。
「不細工が、泣いても知らん。恨むなら、自分の養父を恨め。」
沈黙を、勘違いし、アレクシアに、追い討ちをかけたがってる言葉。
良いのは顔だけで、脳みそは、全くだな・・と、内心で毒ずく、アレクシア。
養父ではなく、継父だ。アレクシアの父と死に別れた母が再婚した相手が、ローズテールの皇帝だった。その母は、正妃となってい、アレクシアにとり、年の離れた弟たちになる正嫡の皇子たちとも半分だが血のつながりもあり、政略でここへやって来たアレクシアは、こんなふうに、貶められる言われはない。
だいたいが、政略結婚で、不本意なのは、お互いさまだ。
アレクシアは、お相手が、すでに気に入りの女がいるのを承知で、承諾した。
アレクシアは、母方の祖父から受け継いだ小国だが、一国の君主でもある。
しかし、帝国にぽつりと取り囲まれるかたちである小さな一領主といった領土であり、吹けば飛ぶようなその国の存続の為には、帝国との関係は常に良好を保たねばならない。一方で、頼り過ぎない姿勢も保たねばならないので、他国との関係も色々と、考慮しなければならない。
しがらみが、アレクシアに、肯かせた。
決して、美形に期待したわけではない。
そりゃあ、誰しも、互いに思い合う人と生涯を共にしたいというのが本音だろうさ。
けどね。王族として、恩恵を受け育ってきた身で、必要であればそうせざるを得ないのは、当たり前の話。役目を果たしたくなければ、早々に、王族を下りるなりなんなりするべきだろうさ。恵まれた生活に、縁も皆捨てて、一から自分の力で、庶民として生きてみろよ。できるならね。お相手の女は、果たしてついてきてくれるだろうか。・・・ね?王子さまよ?・・・と、アレクシアは、心の中で悪態をつく。
この王子、一人息子なので王太子であり、普通なら、早く世継ぎが望まれるはずで、相応しい女なら、多少のことには目を瞑り、妃として認められたはず。それを、わざわざ、隣国のバツ一皇女、売れ残り決定のアレクシアに、ウエルスタット王国がぜひにと、頼み込むほどということは、性格的に不適切であるか、或いは、話にならないような身分の女か、どちらかだろう。ウエルスタットのしつこいまでの要請で、アレクシアは、肯かざるを得ない状態に追い込まれ、ココに来た。
目の前の王子の様子から察するに、ウエルスタットは、下手に自国の貴族令嬢を充てがれば、非常な手段でその女を排除しかねない。そうすると、自国に不和の種を撒いてしまう。だから、内政に影響しない、他所の王女、ないし、王族を探したらしい。とはいえ、他国と揉めるのも困るので、何かあっても突っぱねられる弱い関係、大国は外したらしいのだが、適齢期の該当者は少なく、王子の愛人問題は聞こえていたから、断られ、レーヌという小国の女王であるバツ一のアレクシアに、目をつけたらしい。
甘く見られたものだ。
帝国の皇女としての身分もあるが、継子なので、たいして影響はないだろうと、ウエルスタットは、計算したのだろう。
はじめの結婚が、たった一日で終わったこともあり、その後も、婚約までにいたるものの断られてきた、アレクシアは、このまま、嫁き遅れて生涯独身だろうと、見られていた。
ちょうど、母にせっつかれた皇帝が、婿探しに焦りはじめていたこともある。
「なあに、一回が二回でも同じことさ・・というつもりで、嫁いで来い。」
と、継父のアホな一押し。
アレクシア自身も、自分が絶世の美女と名高い、母親と似ても似つかない、並みの女なのは承知の上で、一目で自分が気に入られるとは思ってもいない。
けれど、今は帝国の保護下にあるが、小国の主でもある、アレクシアは、跡継ぎを確保しなければならないので、そこのところは、ドライに割り切り、子さえ得られれば、他の事は目を瞑ろうと思っていた。
だから、この王子の発言は、言わずもがなのことである。
黙っていれば、いいものを。
・・・・・・・・。
まあ、これだけ、はっきりと拒絶されていれば、良好な関係は築けまい。
「父上の言われた通りの結婚か・・・。」
駄目なら、戻ってきてもいいよ・・と、信じられないような一言が付け加えられていた。
アレクシアが、ふっとため息をつくと、その呟きを、自分の意を理解し、彼女があきらめたととった王子は、満足げにしている。
王子が、アレクシアの手をとり、豪勢な華燭の典は、行われた。
けれど、アレクシアは、別に、王子に屈服したわけではない。
それならそれで、方針を変えるだけである。
誓いのキスの時、間近にせまるそれをふと反らし、ぎりぎり頬にされるようにしたのは、アレクシアの警告だ。アホ王子は、ただの、事故だと思い、彼自身は、ほっとしているようだったが・・・。
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