朝、まだ日の明けないうちに、朝食を済ませ、後かたづけをする。旅先なので、携帯食の干し肉と薄い粥を啜っただけで、散らかるという程でもないが、念の為、たき火などの痕跡を丁寧に隠す。日が出て来てから、出発する。
少し行ったところで、子牙が、馬車を止めた。淑人と、小燕子が顔を出す。
「どうした?」
「いや、私の気のせいかもしれませんが・・・。」
はるか彼方に土煙が見えたような気がしたのだ。地面に耳を充て確認する。小燕子が伸びあがって、向こうを見ている。それから、同じように地面に耳を充てる。
「多いね。15・・・いや、20。馬で、集団が真っ直ぐこっち向かっている。」
「盗賊か?こっちは、馬車つきで、足が遅くなる。ここで、待ちかまえて、反撃するか。」
子牙が応える。淑人を見た。
「このまま、真っ直ぐ進もう。弓がある。手綱は、小燕子に任せて、我らは弓を。」
淑人は、車の中から弓矢を取って来て、子牙にも渡す。
御者台には、彼らが立ち、小燕子は、後ろの車のから、手綱を持つ。
「小燕子。そうだ。そのまま、真っ直ぐだ。速度を保て。」
向こうから、平原を土煙を上げて、迫って来る一団。こちらに、旅の一行がいると見なすと、手に手に刀を振りかざし、まっすぐにこちらへ速度を上げて来る。三日月のように反った刃がぎらぎら輝いてるのが見える。一斉に馬が左右に別れ、こちらへ向かってくる。獲物を左右から囲むつもりだ。
「うわっちゃあ~。やる気満々って感じ。」
「だな。」
小燕子の軽口に、淑人は、唇でだけ笑い。弓をつがえる。先頭の敵が、射程距離に入るのを図る。子牙の狙っていた敵が一歩前に出た。
シュッ・・・!見事に敵の頭に命中し、落馬した。続いて、淑人も。次々、矢を放って、敵を確実に落としていく。残り八人程。敵はちょうど二列。
「小燕子。速度を上げてあの真ん中に突っ込め。帳の中から姿を見せるなよ。子牙は、右だ。」
「ええ?」
淑人が弓を中に放り込み、剣を構える。隣の子牙も剣を構えている。
「あいつが、頭目か・・・よし。」
淑人は、屋根に上ると、速度を上げた馬車から振り落とされないように、肩膝をついて構えている。
「淑人さま。何て無茶なことを。私が参ります。」
飛び移る気でいるのだ。子牙が慌てて叫ぶ。
「人出がないのだから、仕方なかろう?同時に、馬車の荷も、守らなくてはならない。子牙は、右の奴らを。」
言うが早いか、狙いを定めて跳躍する。盗賊は、上から来る敵に慌てて刀を振りかざすが、一瞬の出来事で間に合わず、どかっと頭部に蹴りを入れられて落ちる。馬を上手く、ぶんどった淑人は、馬首を返し、後ろの敵と刀を交えて行く。子牙は子牙で、反対側に取付いて、これも最初と別の敵と戦ってる。
残る最後尾の賊が空の御者台に飛び移る。飛び移った瞬間、帳をめくって、飛び出した剣に突かれ、地面に落ちて行った。
敵はもう残っていない。小燕子は、御者台に座り、馬の速度を徐々に緩め、止める。
賊の馬に乗った淑人たちが追いつく。
「やったね。その馬、どうすんの?」
「盗賊の物だ。どうせ、どこからか盗まれたものだろう。この辺に放っておけば、勝手に元の場所に戻るだろう。」
「ええ~。貰っておけばいいじゃないの。」
「盗賊たちの持ち物を持っていれば、いらぬ災厄が降りかかるかもしれない。」
「そういうもんかあ・・・。」
首を傾げる小燕子に、子牙が腹の底から豪快に笑い飛ばす。
「淑人さまの言うとおりだ。小燕子。よくそんな浅い思慮で、護衛などをやっていたなあ。」
「そりゃ、護衛の時は、危険は極力さける方向でいくもん。盗賊とまともにぶつかることはまずないようにしなきゃ。荷駄の警護なんて、あたしは頭数のひとりだから、指示に従って動くだけだけど?淑人さまだって、無茶やってる。」
「言われてみれば、そうだな・・・。私も、こんな無茶の連続をしどうしだとは思わなかった。」
自ら進んで、騒動を拾って歩いている。君子には、程遠い行為だ。この調子で、目的が果たせるのか。見渡せば、行けども終わりのない平原の景色が目に映り、徒労を感じ、淑人は、少し情けないような、顔を歪めて、笑う。
馬車に乗り込んで、出発する。しばらく、走ると、辺りの景色が変わって来た。丘陵地帯に入ったのだった。
少し行ったところで、子牙が、馬車を止めた。淑人と、小燕子が顔を出す。
「どうした?」
「いや、私の気のせいかもしれませんが・・・。」
はるか彼方に土煙が見えたような気がしたのだ。地面に耳を充て確認する。小燕子が伸びあがって、向こうを見ている。それから、同じように地面に耳を充てる。
「多いね。15・・・いや、20。馬で、集団が真っ直ぐこっち向かっている。」
「盗賊か?こっちは、馬車つきで、足が遅くなる。ここで、待ちかまえて、反撃するか。」
子牙が応える。淑人を見た。
「このまま、真っ直ぐ進もう。弓がある。手綱は、小燕子に任せて、我らは弓を。」
淑人は、車の中から弓矢を取って来て、子牙にも渡す。
御者台には、彼らが立ち、小燕子は、後ろの車のから、手綱を持つ。
「小燕子。そうだ。そのまま、真っ直ぐだ。速度を保て。」
向こうから、平原を土煙を上げて、迫って来る一団。こちらに、旅の一行がいると見なすと、手に手に刀を振りかざし、まっすぐにこちらへ速度を上げて来る。三日月のように反った刃がぎらぎら輝いてるのが見える。一斉に馬が左右に別れ、こちらへ向かってくる。獲物を左右から囲むつもりだ。
「うわっちゃあ~。やる気満々って感じ。」
「だな。」
小燕子の軽口に、淑人は、唇でだけ笑い。弓をつがえる。先頭の敵が、射程距離に入るのを図る。子牙の狙っていた敵が一歩前に出た。
シュッ・・・!見事に敵の頭に命中し、落馬した。続いて、淑人も。次々、矢を放って、敵を確実に落としていく。残り八人程。敵はちょうど二列。
「小燕子。速度を上げてあの真ん中に突っ込め。帳の中から姿を見せるなよ。子牙は、右だ。」
「ええ?」
淑人が弓を中に放り込み、剣を構える。隣の子牙も剣を構えている。
「あいつが、頭目か・・・よし。」
淑人は、屋根に上ると、速度を上げた馬車から振り落とされないように、肩膝をついて構えている。
「淑人さま。何て無茶なことを。私が参ります。」
飛び移る気でいるのだ。子牙が慌てて叫ぶ。
「人出がないのだから、仕方なかろう?同時に、馬車の荷も、守らなくてはならない。子牙は、右の奴らを。」
言うが早いか、狙いを定めて跳躍する。盗賊は、上から来る敵に慌てて刀を振りかざすが、一瞬の出来事で間に合わず、どかっと頭部に蹴りを入れられて落ちる。馬を上手く、ぶんどった淑人は、馬首を返し、後ろの敵と刀を交えて行く。子牙は子牙で、反対側に取付いて、これも最初と別の敵と戦ってる。
残る最後尾の賊が空の御者台に飛び移る。飛び移った瞬間、帳をめくって、飛び出した剣に突かれ、地面に落ちて行った。
敵はもう残っていない。小燕子は、御者台に座り、馬の速度を徐々に緩め、止める。
賊の馬に乗った淑人たちが追いつく。
「やったね。その馬、どうすんの?」
「盗賊の物だ。どうせ、どこからか盗まれたものだろう。この辺に放っておけば、勝手に元の場所に戻るだろう。」
「ええ~。貰っておけばいいじゃないの。」
「盗賊たちの持ち物を持っていれば、いらぬ災厄が降りかかるかもしれない。」
「そういうもんかあ・・・。」
首を傾げる小燕子に、子牙が腹の底から豪快に笑い飛ばす。
「淑人さまの言うとおりだ。小燕子。よくそんな浅い思慮で、護衛などをやっていたなあ。」
「そりゃ、護衛の時は、危険は極力さける方向でいくもん。盗賊とまともにぶつかることはまずないようにしなきゃ。荷駄の警護なんて、あたしは頭数のひとりだから、指示に従って動くだけだけど?淑人さまだって、無茶やってる。」
「言われてみれば、そうだな・・・。私も、こんな無茶の連続をしどうしだとは思わなかった。」
自ら進んで、騒動を拾って歩いている。君子には、程遠い行為だ。この調子で、目的が果たせるのか。見渡せば、行けども終わりのない平原の景色が目に映り、徒労を感じ、淑人は、少し情けないような、顔を歪めて、笑う。
馬車に乗り込んで、出発する。しばらく、走ると、辺りの景色が変わって来た。丘陵地帯に入ったのだった。