西の対の自室にひとり落ち着いてから、ゆりはまだ持っていた符を出して、見つめる。
やっぱり、見たことあるよね、とつぶやく。彼女の知っている字とよく似ている・・・。
ちょうど、まとのが室の灯りをつけにやって来た。
「何ですか、それ。ここにいても、お仕事していいんですか?」
まとのが灯をともしながら、聞く。
「ううん、依頼じゃないの。まだ、疑問が残ってるだけなの・・・。う~ん。」
言いながら、ゆりは手に持つ符と、まとのの点けた灯りを交互に見ている。場所は、だいたいわかる。暇つぶしに、確かめに行ってみるかと、決めて。
「まとの。一人でさみしいから、今夜はこの部屋で一緒に寝てね。」
「・・・・・。」
まとのが一瞬目を見張って、固まる。はあっと、溜息をついて、応じる。
「夜中に出歩くと危ないですよ。」
「それ、普通の姫に言う言葉じゃない?」
「普通の姫君は、そもそも外出さえなさりません。そういう発想さえないでしょう。なるべく、早く帰って来て下さいね。朝になったら、ごまかしが聞きませんよ。」
「は~い。」
「やれやれ、せっかくお姫様を飾り立てて、仕える私の夢が・・・。」
「今度、付き合ったげるわよ。」
うふふと楽しそうに、手に持っている符を灯火に近づける。
じゅっと、白い紙に灯がついて燃えて、灰になる。あちらは、怪我してないといいけどと、呟く。術者の術が破れると、それが本人に跳ね返って、痛い目にあうこともある。
ゆりは、ほんの少しだけ心配した。
あとは、暗くなるのを待つのみ。ごろりとそのへんで横になって、仮眠をとろうとするゆりを、まとのが奥の御簾の向こうの寝間に設えた内側へ追い立てる。
「ここは、紫野さんと私が来るだけじゃないんですよ。少しは、姫さまらしくなさって下さい。ほら、中へ入る。」
ゆりが、中へ入ると、まとのも準備を整える為、一旦部屋をさがっていく。なんだかんだ、言っても、阿吽の呼吸でなりたつ、良い主従なのだ。
ゆっくりと暮れていく真夏の夜を待つ。
やっぱり、見たことあるよね、とつぶやく。彼女の知っている字とよく似ている・・・。
ちょうど、まとのが室の灯りをつけにやって来た。
「何ですか、それ。ここにいても、お仕事していいんですか?」
まとのが灯をともしながら、聞く。
「ううん、依頼じゃないの。まだ、疑問が残ってるだけなの・・・。う~ん。」
言いながら、ゆりは手に持つ符と、まとのの点けた灯りを交互に見ている。場所は、だいたいわかる。暇つぶしに、確かめに行ってみるかと、決めて。
「まとの。一人でさみしいから、今夜はこの部屋で一緒に寝てね。」
「・・・・・。」
まとのが一瞬目を見張って、固まる。はあっと、溜息をついて、応じる。
「夜中に出歩くと危ないですよ。」
「それ、普通の姫に言う言葉じゃない?」
「普通の姫君は、そもそも外出さえなさりません。そういう発想さえないでしょう。なるべく、早く帰って来て下さいね。朝になったら、ごまかしが聞きませんよ。」
「は~い。」
「やれやれ、せっかくお姫様を飾り立てて、仕える私の夢が・・・。」
「今度、付き合ったげるわよ。」
うふふと楽しそうに、手に持っている符を灯火に近づける。
じゅっと、白い紙に灯がついて燃えて、灰になる。あちらは、怪我してないといいけどと、呟く。術者の術が破れると、それが本人に跳ね返って、痛い目にあうこともある。
ゆりは、ほんの少しだけ心配した。
あとは、暗くなるのを待つのみ。ごろりとそのへんで横になって、仮眠をとろうとするゆりを、まとのが奥の御簾の向こうの寝間に設えた内側へ追い立てる。
「ここは、紫野さんと私が来るだけじゃないんですよ。少しは、姫さまらしくなさって下さい。ほら、中へ入る。」
ゆりが、中へ入ると、まとのも準備を整える為、一旦部屋をさがっていく。なんだかんだ、言っても、阿吽の呼吸でなりたつ、良い主従なのだ。
ゆっくりと暮れていく真夏の夜を待つ。