久し振りに奥美濃の山歩きに出かけた。パートナーは15歳年下の健脚Y君。福井県と岐阜県の県境にある美濃俣丸と笹ヶ峰を周回縦走する計画で前夜に家を出て広野ダムから更に奥の二ッ屋導水Pまで入り、そこでテント泊。夜半から生暖かい風が吹き始め、テントがはためく音でよく寝れなかった。5時出発の予定がごろごろしているうちに4時半を過ぎてから起床という体たらくで、果たして日没までに周回できるかどうか早くも心配になった。5時50分頃にやっと出発。今日も朝から異常に暖かく、少し進むとすぐに汗が出始めたので上着を脱いだ。この間にY君は私を置き去りにして先に進んでいった。5分位経ってから後を追ったが息が切れて苦しいので追いつくのを止めていつもの単独行ペースにペースダウンし、慎重に美濃俣丸に突き上げる尾根の末端を見極めから登高を開始した。かなり残雪が減っているのでブッシュ漕ぎを強いられるところが多く、先が思いやられる。やはり計画が1週間遅れたことが響きそうだ。足元をみながら歩いていると頭の角からお尻まで全体が完全な形で残っているシカの骨が突然、目の前に現れた時はビックリした。それにしても2時間歩いてもY君に追いつかない。休憩待ちもできない程、自分が遅すぎるのかと思いながら3時間近く我慢して歩くと美濃俣丸頂上に到着した。突然、目の前にどこまでも続く白き奥美濃の山並みが展開し、久しぶりの雪山景色に圧倒される。三角点にタッチして周辺を見回しても当然、頂上では待っていると思っていたY君がおらず、冷たいやつちゃなーと思いながら先を急ぐ。ここから今回の目玉である笹ヶ峰までの雪稜縦走開始だ。北アルプス3000m級の稜線歩きにも劣らないほどすばらしい雪稜縦走との評判なのではやる気持ちが抑えられない。心配なのは、ここ1週間ほど、初夏のような陽気続きで、かなり残雪量が少ないはずなのでブッシュ漕ぎがどの程度あるかだ。その為に雪稜漫歩気分を台無しにされてはここへ来た甲斐がないので、いかにブッシュを避けて残雪を上手くつないでいくかがポイントとなる。それにブッシュと格闘している時間が長ければ日没までに下山ができない恐れがある。幸いにも弱い気圧の谷が通過しているのだろうか、押さえていないと帽子が吹き飛ばされそうな風が常に吹き続け、体に熱がこもることが無いので体力的に随分助かる。それでも、已む無くブッシュと格闘することはあったが、なんとか順調に稜線漫歩を楽しむことができ、美濃俣丸から3時間弱で待望の笹ヶ峰に到着した。眺望は欲しいまま。これほどの大景観はめったに経験できるものではない。まさに越美山地随一のルートと言われるだけのことはある。写真をとりながら、そういえばここまで先行しているはずのY君の足跡が全くないことに気がつく。途中で追い抜いたとは絶対に思えないので、どこかで滑落でもしているのではないかと急に心配になってきた。引き返すべきかもしれないが、下山を早くできる方がベターと判断して、このまま計画通り先に進むことにする。途中、カモシカの足跡につられて間違った尾根をおりてしまい、急な雪の谷筋をトラバースさせられるという過ちをしでかしたが、その後は間違えやすい箇所は慎重に方向を定めた。途中、一か所危険と思われるところがあった。忠実に尾根を下っていったら、こんなところ本当に降りれるの?と口走ってしまったほど、上からのぞくと垂直に近いような岩壁帯の上に出てしまった。他に降りれそうなところが見当たらないので意を決してを下降開始。幸いホールドとなる木の根っこは比較的信頼でき、距離も短かったのですぐ冷静になれた(帰宅後、岐阜100秀山の本で”岩壁帯はまく”ということを知った)。そこを終えると後はなだらかで広い尾根が天草山まで続いているのが地図から読み取れたので、陽のあるうちに下山できることが確実となり、初めて気持ちに余裕ができてゆっくり休んだ。ここから、一旦は最後のピークである天草山に進み始めたが、Y君のことが気になるので、引き返して短時間で林道に下れそうな尾根の下降ルートに切り替えた。この選択は正解で心配したブッシュ漕ぎもなく、広くて歩き易く、2時間ほどで待望の林道に降り立つことができた。大河内集落跡を通り1時間近く林道を歩くと見覚えのある二ツ屋導水場の黄色い建物が見えてきて10時間の山旅が終わった。
下山しているはずと期待していたY君の姿はなく、やはり滑落などの最悪のケースが頭をよぎる。一旦、携帯の通じる場所まで車を飛ばし、何らかの連絡が家の方に入っていないことを確認してから、再び戻るとY君が導水場建物の前に座り込んで見つけ安堵した。私が下山してから1時間ほど後に戻ってきたようだ。彼の話によると、出発早々、尾根の取り付き点を通り過ぎて林道をどんどん進んでしまったとのこと。結局、Y君はスタート地点まで引き返したが、このタイムロスで美濃俣丸到着が私より2時間以上遅れた為、周回縦走は断念して笹ヶ峰手前の源平谷山方面の尾根を下降して帰ってきた。
行動時間(休憩時間含む):10時間
コースタイム:
二ッ屋導水施設P: 5:50頃 美濃俣丸 8:50頃 笹ヶ峰 11:42 / 11:50
840m強分岐点:12:07 二ッ屋導水施設P:: 15:50just
食したもの:
ピーナッツパン1個、ミニバナナ2本、エナジージェル2個、フランタンミニショコラ5個。
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