くせじゅ文庫

久世樹(Que sais-je?)の画文集です。

《椿蕾》

2023-02-25 13:34:00 | 作品
〈ひしめいて日々頬染むる椿かな〉
【久世樹】

 庭先の椿にたくさんの花芽がついて、間も無く鮮やかな五弁の花が咲き始めるのを前に、蕾が混み合う枝を手折って、有り合わせの器に挿して写生しました。

 日本原産の椿の名の由来は、葉が艶々と厚いので「艶葉木」もしくは「厚葉木」、木偏に春の漢字は和製とか。中国では、日本から遣隋使が海を渡って伝えた柘榴のような花木を「海柘(石)榴」と名付けたそうです。

 椿といえば、『乾杯の歌』で有名なヴェルディのオペラ『椿姫』(La traviata)を思い出します。ヴィオレッタが歌う『花から花へ(Sempre libera)』はいかにもイタリア歌劇らしい華やかなアリアですが、最後に死の床で朗々と歌う『さようなら、過ぎ去りし日よ(Addio, del passato)』、これはもう完全に酢・醤油の和のイメージを飛び超えて、オリーブオイル・パルメザンチーズの国のカメーリア(Camelia)そのもの。花言葉は「admiration(感嘆)」「perfection(完璧)」だそうです。