くせじゅ文庫

久世樹(Que sais-je?)の画文集です。

母の遺作

2021-12-28 19:51:00 | 作品
今春、コロナで七回忌を出来なかったことに悔いが残る我が母は、50代で寡婦となって数年後、ある書画の師に巡り合って、晩年は水墨画や墨彩画に精根を傾けました。今春、生家から引き取った遺作2点。いずれも七十代の、全紙大の大作です。我も早やその歳に至り、果たしてこれだけのパワーを持ち続けられるか⁈  来年は、父の一足早い50回忌と合わせて、兄弟・従兄弟姉妹・子孫らと賑やかに集まれるよう願っています。







『常盤の松』

2021-12-25 16:53:00 | 作品
今年最後のスケッチ例会は、吉祥寺御殿山通りの山本有三記念館でした。

 夜明けまでの雨も上がり、風もない日向のベンチにダウンを脱いで腰を下ろし、普段は滅多に描かない建物を背景に、冬空にすっくと立つ常盤の松を、コロナ2年目の描き納めとしました。

 終わって、遅い昼を居酒屋で寿司と海鮮丼を頬張りながら、行く年来る年を思い思いに語り合いました。昼のビールは腑に染みた(が上手かった)。




『波の一生・その3』

2021-12-21 16:06:00 | 作品
 砂浜で波と戯れて幾年。昨夜、20年振りに手にした高神覚昇著『般若心経講義』(1952年刊、角川文庫)の一節に、はたと思いあたりました。

 「波という現象を見れば生滅起伏もあるが、水という本体そのものにはなんらの変化はない。」

 今日、暦がひと月逆戻りしたような暖かな浜辺で、水平線の彼方から砂に消える波打際まで、目に見える表層を追いながら、心は水の一分子になって、筆を走らせました。





《冬霧》二題

2021-12-17 10:06:00 | 作品
〈冬霧や梢の先の薄明かり〉【久世樹】
 
 辛く苦しい数週間を孤独に過ごした人の顔に、ようやく笑みが見え始めました。

〈冬霧や梢の先にソリの鈴〉【久世樹】

 『クリスマスの約束』を楽しみに待つ顔が浮かびます。あなたは幾つまでサンタクロースを信じられましたか?