@PAYASO

少しだけ更新再開してます(愚痴オンリー)

世界が変わる・・・変わった? 花沢健吾 「アイアムアヒーロー」

2009年07月19日 | I am a hero
 とにかく、今後の展開に期待しまくりな、花沢健吾の新作なわけである。



 と、書き出しましたが、ドラクエ漬けにて現在様々なことが手につかない。悪いくせと習慣ながらも、ほんのりと心地よかったりもする。20年以上前から定期的にそんな気分にさせてくれるドラクエは素晴らしい。


 そんな日々でも習慣は他にもあるわけで、その1つが月曜発売のビックコミックスピリッツを読むことである。ヤングサンデーの休刊(廃刊?)の流れで優良なコンテンツがいくつか増えてますますホクホクなわけだけど、それ以前のスピリッツからここ数年最も注目し続けてる作家さんが、この花沢健吾氏である。


 「ルサンチマン」でがっつりともって行かれたかと思ったら、次は「ボーイズオンザラン」である。くいつかないわけがない。そして、現在連載中の新作が表題の「アイアムアヒーロー」なのである。



 ドラクエな日々の中、自宅のトイレで何気なく読んだ今週の「アイアムアヒーロー」。読み終わって、ドキドキしてしまった・・・


 何が起こったんだ?

 何が始まったんだ?

 何が変わったんだ・・・?


 度肝を抜かれた。主人公、鈴木英雄の彼女、黒川徹子が化け物になったのである。いやいや、漫画なんだからそんな荒唐無稽な話もあるよね、そんなのざらじゃん・・・などと思う方がいるのも当然だと思うし、僕自身もそう思う。でも、この漫画は少し違うとも思うし、事実、ビックリしたのである。
 思い出してみれば、その兆候はその前の週にもあった。んで、その時も驚いたわけなんだけど、次の展開でまた驚いたわけだ。世の中には様々な手法があるし、出尽くした感もある。多分、この漫画と同じような手法も他にもあったことだろう。そして、世の中には数多くの優秀で非凡なストーリーテラーがいて、この花沢健吾氏もそんな中の一人なんだと思う。
 でも、でもだ。かなり、僕は氏と氏の漫画に引き付けられるものがあり、新作の「アイアムアヒーロー」に期待するものを感じるのだ。



 花沢氏の新連載開始。このトピックを表紙に見たのは何月のことだっただろうか。「おっ」この程度の反応で読んだ新作だったのだけど(もちろん、花沢氏の新作であるという期待は相当に抱きながら)、連載第1回目を読み終えての感想は、

 「う~ん??」


 って感じ。期待を抱ける内容でありながらも、よく分からないというか、なんというか・・・


 深夜に一人暮らしの部屋に帰ってきた主人公と思われる青年(鈴木英雄)が、幽霊とかそういったものに怯えているという描写と妄想の中の人物達と会話をするという描写、そして、鈴木英雄が自身が怯えている対象に対する最後の切り札として猟銃を持っているということが描かれている。妄想と戯れ、何かに怯えながら朝になるのを待って眠る。そして、「切り札」の猟銃を構えて、「アイアムアヒーロー」と言う・・・・


 「アイアムアヒーロー」の第1話目で描かれていたのはこれだけのことだった。登場する人物は鈴木英雄以外は妄想の存在だけで、鈴木英雄が何者であり、どうして妄想と会話するのか、どうして何かに怯えているのか・・・などといったことは当然描かれていなかった。
 しかし、第2話目からは一転して、鈴木英雄が一度はデビューしたもののその後はなかずとばずで現在はアシスタントをしている漫画家(の卵)であるということと、過去2作の花沢漫画の主人公像と共通してさえない男ではあるのだけど、黒川徹子という彼女がいることなどが描かれる。
 あ、さえない漫画家が主人公の漫画なんだ・・・と、思って第9話まで読み進めたわけです。実際、仕事場でのへんてこなアシスタント仲間とのやりとりが描かれたり、徹子の元彼の売れっ子漫画家が出てきたり、そんな元彼にやきもちをやいたり・・・なんて内容だったわけでる。もちろん、その途中、途中でも鈴木英雄は妄想の人物と会話したりしているわけである。


 ただ、途中でへんてこなことが一度起きる。それは徹子の家に行く途中で交通事故を目撃するのだが、その被害者の女性が血を流し、首をおかしな形で曲げながらその現場を去っていくのである。
 でも、妄想ぐせのある英雄の見間違えだろう・・・程度で流してしまうんだよね。ニュースか何かで被害者がその場からいなくなってしまったみたいな報道がされていて、見間違いではないということがわかるんだけど、それでも流してしまうくらいに物語の中では些細なことと僕は受け取ってしまった。

 んで、第10話のラストで状況が少し変わる。締め切り間際で徹夜で仕事をこなす仕事場の模様が描かれた話だったのだけど、最後にその仕事場のバスルームにその日は体調がすぐれずに休んだということになっていたアシスタント仲間の女の子が、浴槽の中に沈められているという描写がある。足には包丁がささっていて、身体の上には錘と思われるダンベルがのっていて、浴槽の水には血が流れて、目は血走っていて、そのコマの擬音にはなぜか「ギョロリ」という表現が・・・


 「え?何が起こったの?」

 漫画家先生が手をつけていたアシスタントの女の子を痴情のもつれかなんかで殺しちゃったのかな?

 ここからこの漫画の物語が急転すんのかな?

 それにしてもちょっと気持ち悪い描写だな・・・


 って感じの違和感をもったまま、いよいよ次の第11話を迎えるのである。もちろん、第11話を読み始める前はその死体がどうなったのかとか、誰かその仕事場にいる連中がきがついたか・・・なんて展開を期待して読み始めたわけなんだけど、またしても肩透かしをくらってしまう。


 第10話の冒頭で英雄の元に猟銃サークルらしきところから射撃練習会の案内が届いていたのだけど、徹夜明けで帰宅した英雄が猟銃をだして射撃練習会へ行く準備をしているところから、第11話は始まる。
 1、2、3、4、5ページ・・・英雄は準備を終え、ようやく家をでる。このへんで前話の死体のことが少し飛ぶ。6ページ、7ページ・・・どうやら英雄は射撃練習会へ行く前に暴言を吐いてしまった彼女、徹子の家に謝罪に行くようだ。この当たりから違和感を感じる。7ページ目で徹子の住むアパートに着いた英雄は鼻を押さえて、

 「んん?」
 「なんだこの、におい?」


 と。そして、徹子の部屋の玄関ドアに着いている郵便受けから部屋をのぞき、寝ている徹子に声をかけ、徹子が起きる。


 「あっゴメン起こしちゃった?」
 「あっ。いいよっ寝てて!」

 と徹子に英雄は声をかけるのだけど、そっからが震撼の見開き4ページ(計8ページ)で描かれる、「化け物」と化した徹子が玄関ドアへと近づいてくるページとなる。そして、最終ページは「化け物」がドアチェーンを打ち切る勢いでドアを開け、それにぶつかって腰をつく英雄。来週の予告っていうか、欄外コメントには、


 「英 雄 譚 が――― 始まる!!」


 
 これで第11話が終わる。月曜日が海の日で休日のため、ちょっと早めの土曜日に発売されたスピリッツの最新号では「アイアムアヒーロー」は休載。7月27日発売の36・37合併号まで続きはお預け・・・んでもって、連載再開が合併号ってことはこの号で肩透かしをくらったり(例えば過去の話をもってくるとかw)したら、さらに8月10日発売の38号までおあずけ・・・・



 僕の下手くそ文章ではこの驚きは伝わらないかもしれない。残念ながら。
 なんていうのか、世界が変わるというか、次元がぶれるっていうか、突然の物語の変容ぶりが凄いのだ。多分、これまでの10話がプロローグだったのだろう。「なんてことはない日常」が描かれていたのだろう。過去には単行本にして16巻分だったかな、数年に渡ってプロローグを描いたという「ベルセルク」って漫画があったけど(現在も連載中です)、この「アイアムアヒーロー」での10話分のプロローグとはもちろん少し違う。ベルセルクの場合はプロローグが1つの物語でその後続くのが第2章的な捉え方もできる。でも、「アイアムアヒーロー」の場合は2,3話で済ませることもできる内容なんだよね。なかずとばずの落ちぶれた漫画家で、元彼が売れっ子漫画家っていう彼女がいて・・・とか。
 
 多分、そのまま世界が変容しなくても面白い漫画になったであろうことが想像できる。でも、それはプロローグであって、これから「英雄譚が始まる」ってわけである。


 こういう描き方ってないなーって思うわけである。ますます先が気になるし、プロローグの中にも続きが知りたい的なエピソードがあったりして、どういう風にこの「変わってしまった世界」とそれまでの世界をクロスさせて展開していくのだろう・・・とか、いろいろ期待してしまうんだよね。


 んで、思い返すと軽く流されているけど、少し前の話で徹子が、英雄が交通事故を目撃した現場の近くで小さな女の子に遭遇して、何かがあって腕に絆創膏3枚分の怪我を受けていることがわかる。そして、第10話のラストのアシスタント仲間の女の子の死体には、「化け物」になった徹子との共通点が見受けられ、擬音の「ギョロリ」ってのは、死体の気持ち悪さを強調したものかと思っていたけど、多分、あれは死体らしきものが動いたことを示しているわけだ。
 んでもって、第11話で射撃練習会へ行く準備をしている英雄の後ろでテレビのニュースキャスターが言っていた言葉、

 「都内にお住まいの方は、鍵をかけ戸外には出ないよう・・・」

 テレビの画面には、「緊急情報」「各所で暴徒発生外出を控えるよう・・・」って文字。家を出て徹子の家に向かう途中では、通常では考えられない数の自衛隊の車両が。朝の6時とはいえ、車は通れど人の気配がしない街・・・


 つまりは、徹子だけじゃなく都内でなんかしらの事件が起こったわけだよね。そして、もし、徹子が体調を崩す前(徹子は風邪かなんかで体調をくずしていた)に受けた絆創膏3枚分の怪我が原因で「化け物」と化したのなら、なんかしらのバイオハザードが起こった可能性があるわけだよね。アシスタントの女の子(みーちゃんだったかな?)が「化け物」となっていて、それをダンベルで動けないようにして浴槽に沈めていたのだとしたら、漫画家先生はすでになんかしらを知っている可能性もあるわけだよね。


 ・・・まー、いろいろと期待してしまうわけです。んで、バイオハザードが起こって人間が化け物になってしまうという状況から、2007年に公開されたウィル・スミス主演の映画「アイ・アム・レジェンド」を思い出して、漫画の題名である、「アイアムアヒーロー」との共通点を見出してしまうわけですよ。もちろん、鈴木英雄はうだつのあがらない漫画家なわけで、ウィルスに対するワクチンを発明できるわけもないわけだけどw



 いや~、目が離せない漫画があるって幸せですw