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徳永写真美術研究所 Column


徳永写真美術研究所(TIPA)の日常コラムです。

なつやすみの美術館「みること」「うつすこと」展

2011-08-23 | 展覧会案内


ドイツ人アーティスト、トーマス・ルフの作品が
起用された美術館の案内です。



オフセット印刷の上から
3人のポートレートと文字部分に
肉厚の透明メディウムが刷られた豪華な印刷。
バブル期に時々見かけた仕上げ方です。
近年では久しぶりに見ました。
展覧会の内容が気になるというより
印刷の物質感に魅せられて保管していました。

お盆明け
この数ヶ月の間に
たまった書類を整理している時
あらためて
この印刷物を繁々見ていると
「みること」「うつすこと」という
サブタイトルが気になってきました。
会場は和歌山県立近代美術館。
決して遠くはない日帰りで行ける距離。
しかし
1987-92年に何度か訪れて以来訪問していません。
建物が新しくなってからの様子を知らないため
美術鑑賞マニアとしては
この機会に見ておかねば!

思い立ちました。



和歌山県立近代美術館は
和歌山城の南側に博物館と並んで存在します。



美術館のエントランスには
美術館名が刻まれた石碑がありました。
この構図ではシブイ和風建築のような・・・・
ところが
建物はこのような感じです。



黒川紀章氏の設計による地上2階、地下1階の建築物です。



展覧会場入口の様子



なつやすみの美術館展は
美術館のコレクションを中心とした展示ながらも
コレクションを披露するだけにとどまらず
奥深い展覧会でした。

その内容とは



描かずに「うつすこと」について
そして
「みること」という体験について

再考

本展での「うつすこと」には
写真のほか版画など
複製メディアを用いた作品も含んでいます。

各展示エリアの表題を上げると
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
写真と美術表現
光について
存在をうつす
写真と版画のあいだに
時間と記憶
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まるで
写真論、メディア論のタイトルのようです。

しかし、実のところ、この展覧会は
夏休みの特別企画
こども向けの内容です。
疑問をもって作品に向き合うことができるよう
各展示エリアにやさしい言葉で解説文をつけるなど
入念に仕込まれた展示でした。

また
この美術館は昔
和歌山版画ビエンナーレという公募展を
開催していた経緯もあり
版画作品が充実していました。

徳永写真美術研究所の取り組みに
ぴったり沿った展示内容に大満足。

展示期間が残り僅かという時期での
報告となってしまった事が悔やまれます。
ご都合がよろしければ、ぜひ!

なつやすみの美術館「みること」「うつすこと」展
2011年7月2日(土)-8月28日(日)
会場:
和歌山県立近代美術館



Yoshie

<お知らせ>

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42年間の歴史を閉じる展覧会 “臨在の海”

2011-05-18 | 展覧会案内

先月
京都の老舗画廊・立体ギャラリー射手座より
閉廊の挨拶と最後の展覧会の案内が入った封書が届きました。



立体ギャラリー射手座は
京都の繁華街に位置しながらも
地下にあるため街の喧騒は遮断され
心静かに作品と接する事ができるスペースです。

学生の頃
日本画を専攻していた友人の個展に
訪れたのが始めての訪問でした。

その後
10数年前から仕事仲間だった友人が
運営を担当することになり
写真関係の作品展が多く開催されるようになりました。
Takayukiも1999年に個展をさせて頂きました。

ギャラリーの歴史は長く
1969年4月にオープン。

42年間の画廊運営を締めくくる
展覧会のタイトルは
“臨在の海”
とても意味深そうな言葉です。

先週
この最後の展覧会を訪れました。

展示内容は
菊の花のインスタレーションです。
花の数は1000本。

作品に対する感想の言葉はありません。
必要としないのかもしれません。
地下の暗い密室にて
どこまでも続く空間が広がっていました。

作者は
福島県いわき市出身。
被災された中での展示です。
被災者としての立場から
制作された作品のように見えますが
この作品展示は
7ヶ月前に決まっていたそうです。

立体ギャラリー射手座のラストショウは
その運営を閉じる今と時世とが共鳴し
鑑賞者に深く記憶される展示だったと思います。



この階段を下りる最後の機会です。
ぜひ、ご高覧下さい。



Yoshie


吉田重信展
“臨在の海”
2011年5月10日ー22日
立体ギャラリー射手座


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自身を投影させて見る写真展

2011-05-12 | 展覧会案内


唐突ですが、幼い頃の私です。



この写真、とても気に入っています。
(撮影は父親です。)

写真の説明をすると



親が家の隅に作ってくれた砂場でのスナップ写真です。

砂遊びに熱中している最中に
父が私に声をかけたので驚いているんですね。
きっと。

私は季節や天候を問わず
いつも日が暮れるまで、日が暮れても(?)
家の砂場で遊んでいました。

こどもの頃は
自分の世界にどっぷり入り込み
大人が暮らす日常とは異なる時間が流れていたように記憶しています。

この写真には
その
こども特有の時間が写っていると思います。



ここまでは前置きです。



昨年末に発売された雑誌・ブルータスの表紙を見て
目が釘付けになりました。

自分とそっくりな女の子に驚いたのです。


下は私のアルバムです。

この表紙は
川島小鳥さんという写真家さんによる作品でした。

ブルータスで初めて川島さんの存在を知ったのですが
以来、この写真家さんが気になっていました。

先月に写真集「未来ちゃん」を出版し
今月は大阪で写真展を開催するという情報を聞きつけ
さっそく初日に展覧会へ行ってきました。




会場にはパネル貼りの写真がランダムに設置されていました。
パネルのフチには桃色のテープが巻かれており
展示壁面の一部も桃色。
会場全体を使って
未来ちゃんの世界を表現した展覧会でした。

小一時間ほど会場に滞在するなか
来場者の会話に耳を傾けると
女性の感想に
自身の幼少期を未来ちゃんに
投影する言葉が何度もありました。

実は私もそうだったのです。

最初は
私と未来ちゃんの姿が似ている点が気になっていましたが
写真作品として拝見しているうちに
姿が似ているというよりも
自身の幼少期の時間が写っている事に気付きました。

大人になるに連れて忘れていた
こども特有の時間を見つける事ができる写真展なのだと思います。

不意に感情の奥深い部分を
刺激されたような気持ちになりました。



Yoshie


川島小鳥写真展
「未来ちゃん」
2011年5月10日-17日
梅田・HEP HALL


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オススメ写真展“ベルナール・フォコンの見た夢”

2010-11-17 | 展覧会案内


神戸ファッション美術館での展示を紹介します。

この美術館は六甲アイランドに位置し
1997年にオープン。

名前の通りファッションを専門とする美術館です。
しかし
館内のデッドスペースで
密かに所蔵写真の展示がおこなわれることもあります。

関西には写真を専門とする
美術館級の展示空間はありませんが
この美術館は要チェックです。



現在、開催中の特別展は
「女神たちの肖像」展
2011年1月10日まで開催 水曜日お休み

チラシには
ファッション写真展とありますが
展示会場では
写真史上、重要な写真が多く展示されており
ファッションに限定した内容ではありませんでした。
森村泰昌さんや野村佐紀子さんの写真もあり
“ファッション写真”という括り方に戸惑いながらも
充実した展覧会だと思いました。



ここまでは前置きです。




私が注目したのは
チラシ右下に掲載されている
同時開催扱いの
ベルナール・フォコンの写真展。



少年のマネキンを使った構成写真で有名なベルナール・フォコン。
彼は大学で哲学を専攻していました。
写真による表現活動は
哲学の修士号を取得してからとの事。

彼が作り出す魅惑的な写真からは
時として恐怖を感じることもあり
観る者の深層心理に突き刺さるエッセンスが含まれています。

これまでにも何度か
彼の作品を見る機会がありましたが
今回のような大きな写真サイズで
まとまった量を
見たのは初めてでした。

フォコンの作品は
「女神たちの肖像」展の入口広場に展示されています。
展示環境の悪さが残念でなりませんが
皆さまにオススメしたい展示です。

ぜひ!



・・・・・・・・・・追記・・・・・・・・・・
11月20日(土)、21日(日)は
関西文化の日”特典で
入場料が無料です。
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Yoshie

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「写真とは何か」を問う写真家の作品

2010-10-18 | 展覧会案内


展覧会のご案内です。


吉川直哉展
I lick up "Behind the Gare Saint-Lazare,Paris, 1932, H.C.B"
会期:2010年10月12日(火)~31日(日)
会場:
ギャラリーアーティスロング



会場に入るや否や
スケールの大きな展示に圧倒されました。

偉大な写真家の作品を複写し
その写真家の眼になりかわって
作者(吉川氏)の見方を提示するという手法です。


壁面はアンセル・アダムス、床はアンリ・カルティエ・ブレッソンの写真を複写
人物は私・Yoshie



奥:ロバート・キャパ 手前:ユージン・スミス

吉川氏にとっての複写とは

写真家のカメラの中に
または
写真家の目の中に入って
作品と接するという

独自の写真鑑賞法であると
作品解説文に記しています。

鑑賞者はこの展覧会で
新たな写真の接し方を体験できるという訳です。

なるほど。





鑑賞者に知識がなければ理解できず
いうなれば
写真関係者のための写真作品ということにもなります。

その場合は
逆に
展示作品から遡り
複写の対象となった写真作品について
理解を深める体験も意味のある事。

教育的作品ですね。



最後にもう一作、紹介。
デュシャンの窓から見える風景は
ニエプスによる世界最古の写真(アニメーション)。
二段重ねの構造です。


作品図録による紹介

このアニメーション部分の作り込みが素晴らしい。
一見の価値アリ!



<この展覧会にて気づいたこと>

絵画を学ぶ上で
“絵画の模写”をおこなうことの意義を認識していながら
写真については
“写真の複写”の意義を考えた事がなかったという事実。




会場は京都、会期は10月末まで。

ぜひ



Yoshie

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