deep-forest

いつだって感じる
アナタとワタシの距離は
近いようで遠いようで
でもそれが大事で大切な
アナタとワタシの距離

君の額にピストルを突きつけよう0‐2

2010年02月09日 13時12分08秒 | 物語系



私の能力は、暗殺や偵察に向いていたようだ。黒い服を身に纏い、息を止めれば、姿を消す事が出来る。
あの方に能力を与えられ、命じられるがままに、仕事をこなしていく。それが何よりも幸せであり、あの方に対する服従の証でもあった。
仕事をこなしていく度に、あの方は私にだけ微笑んでくれ、礼を言って下さる。私の生きる意味と場所は、ここにあるんだ。
しかし全てが崩れ落ちる出来事があった。

普通の能力を持っていない人間が、ある日殺された。まだ小さかったその子は、殺される前に、私に飴玉をくれたんだ。ホンの些細なこと。嬉しい反面、気を抜いてしまったかと感じていた。
少し離れた位置に母親らしき人間が、軽く会釈をする。その子が母親のところへ走っていき、手をつないでその場から立ち去ろうとした瞬間だった。
もう一人の同胞が、先ずは子どもを殺した。続いて、今にも叫び声を上げそうな母親の首をへし折る。
私は同胞に尋ねた。何故2人を殺したのかと。すると同胞は、
『何を言っているの。あなたは姿を見られたのよ。逆に感謝してほしいくらいだわ。』
私には解せなかった。いくらなんでも、任務外で殺して良いわけがない。
『何してるの。早く消して。他の人間に見つかっちゃうじゃない。』
同胞は2人の遺体を隅の方に置き、手を洗いながら私に言う。私自身が消えるだけでなく、命のないモノは永久に消す事が出来る。しかしこの時ほど、辛いものはなかった。

戻った折に、あの方に私は聞いてみた。同胞の行動を。殺された母子のことを。きっとあの方なら、いけないことだと悲しむだろう。
『あら、いいんじゃないの。あなたの姿も見られてるんだし。たかだか命が2つなくなっただけ。どうせ役にもたたない命なのよ。』
私は絶望した。笑いながら、とても冷たい眼をしている。その子の笑顔とは、全く違うものだった。信じていたものが音を立てて崩れ、私は逃げることにする。
その際に【黒い石】を持ち出し、何人もいた同胞を殺して、私は逃げた。

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