deep-forest

いつだって感じる
アナタとワタシの距離は
近いようで遠いようで
でもそれが大事で大切な
アナタとワタシの距離

水面の月

2011年07月04日 22時30分11秒 | 物語系
月を捕まえること
『無理だよ』と彼が笑った

そんな言葉を無視して
コップを用意し
水を入れる

「ほら
捕まえて見せてやるよ」
と言って
コップの中に水面の月を浮かべさせた

『なにを言っているんだ
なにもないじゃないか』

私には見える
しかし彼には見えない
今度は彼にコップを渡す

『本当だ
月を捕まえることができた』

彼は喜び
コップを地面に置く

『よし
このことを
仲間にも教えてあげよう』

彼は大急ぎで
他の仲間たちを呼んできた

〈どれどれ〉
《あれ?》
〔どこにあるんだい?〕

『あれ?
おかしいな』

《なんだ
ウソだったのか》
〈無理なんだって〉
〔なにもないじゃないか〕

そう言うと
仲間たちは帰っていきました

「ねぇ
月は
どこにいったんだろうね」

『さっきまでここにあったんだ
ウソじゃないんだ』

「でも仲間には見えてなかったよ」
そのとき
月がコップの中から出てきた

「また捕まえられたね」

『本当だ』

雲が月を隠していた
でもそのことを
彼は分かっていなかった

「コップの中の月は
コップの中の月
いつかは逃げて
いなくなるんだろうね」







   終

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