私たちがデンマークで大変お世話になっているKさんは、デンマーク剣道のナショナルコーチです。
ウチのオットがデンマーク赴任が決まってから、デンマーク剣道についてネットで情報収集していて、
たまたまそのお名前をみつけて、コンタクトを取り、何度か剣道をご一緒し、今に至っています。
Kさんは、18歳のときにデンマークに来て以来14年間デンマークで暮らしています。
家族構成は我が家とほぼ同じで、昨年pedagogの資格試験に合格されました。
pedagogは幼稚園の先生、養護教員、小学校の道徳の先生、
学童保育の先生などができる資格だそうです。
今現在、学童保育の先生をされているKさんから聞いた
デンマークの子育て問題について、今日はちょっとばかし語ってみたいと思います。
長文でーす。興味のない方はスルーしてください
デンマークが共働きが多いことはよく知られている事だと思います。
そんなデンマークで今、子育てできない親が増えている そうです。
そしてその結果虐待や肥満児が増えている ・・・・・
ここでまでなら日本も同じような問題を抱えているではないかと思うのですが、
日本とデンマークの違いはその問題の背景にあります。
デンマークでは一般的に子供が1歳くらいになると、
朝から夕方まで保育所あるいは家庭保母さんに預けます。
そのため、平日は、朝は1・2時間、夜は長くても4・5時間しか
子供と接する時間がありません。
私は、子供と接する時間が短くても、その分一緒にいられる時間は
お互いがその時間を大切に思い、親と子供がより密に接することができる・・・
と考えていたのですが、実はその逆もある、というのです。
つまり例えば、仕事のほうがおもしろくなったり、
自分のキャリアアップしか目に入らなくなったり、
はたまた外に出ている時間が多いせいか出会いも多く、新しい恋に走ったり・・・・
それが原因で子育てがおろそかになり、(もちろん両方頑張ってる人もたくさんいると思います)
極端な話、毎日の晩ご飯がシリアルだけ、スパゲッティにケチャップかけただけ
と言う状態の家庭が実際に多くあるそうです。
そしてもう一つ、子育てができない親が増えている背景に、
この国は 子供の自立が早い と言う点も関係しているようです。
デンマークにはパラサイトシングルはほとんどいなくて、
子供はある程度の年になると家をでるし、
親もそれからは一切手もお金も出さない事が多いようです。
しかしあまりに早く自立した子供たちが、あまりに幼すぎる親となり、
(ここでは精神年齢の事を指しています)お粗末な子育てをしているというケースが多くあるそうです。
この国では未熟なまま親元から離れても、定職につかずとも、なんとか暮らしていける、
道端で食べ物がなく、寒さに凍えて死ぬなんてことまずありえない。
さらに子供ができても、子供を簡単に預ける事ができ、
お粗末な子育てを続けていても、自分も子供もなんら不自由なく生きていける。
という、充実した福祉、社会保障制度、そして生活保護をもらうことになんら抵抗のない、
差別のない、一見すばらしいと思える現状が皮肉にもこのような親達を生んでいるようです。
そしてそんな親達に育てられている子供たちを、学童保育で手をかけてやればやるほどまた親達が手抜きする・・・
と言う現実もあり・・・
それはたとえば、施設での食事をあたたく栄養のあるものにすればするほど、
親が家での食事を手抜きするとか、保育士がたくさん体を使って外で遊んでやればやるほど、
親が家で遊んでやらなかったり・・・と言う事だと思います。
子育ての大部分を母親一人が背負い、母親が育児に疲れ果てている日本と比べて
デンマークはなんてすばらしい制度なんやろうと思っていた私にとって、
このお話ははかるくショックでした。
(日本にいたとき、私がよく思ってたこと。)
父親が毎日10時以降に帰ってくるのが当たり前のこの世の中で、(ウチのオットは早いほうですが)
育児本には「たくさん子供と遊んで触れ合って、たくさん愛情を与えましょう」
とかいてあるけれど、24時間365日子供とべったりで、一人になる時間もなく、
ガス抜きするところもなく、どうやっていつも朗らかなお母さんができるんだろう。
母親がどんなに頑張ったって睡眠時間の少ない子、偏食のある子、アレルギーのある子、
よく泣く子はいるのに、悩みを相談したり育児本を読むと、
もっとお母さんがこうしてあげれば・・もっとお母さんがこう接してあげれば・・・と書いてある。
子供が昼寝をして一息つけるはずの時間も育児本を読んだだけで終わってしまった。
気づけば疲れた顔ばかり、ためいきばっかりついている・・・
もうこれ以上頑張れない。あぁ自分はなんて悪い母親なのか・・・
ちょっとノイローゼ気味な文章ですがご心配なく
程度はその日によって違うものの、一人目を育てているときはよくこんな事を思っていました。
もちろん日々の生活で、子育てをしていて、子供がたまらなくかわいいとき、
子供がいて幸せに思うときもたくさんあるので、子育てはつらいことばかりではないです
話が随分それましたが
デンマークは母親も自分の一個人の人格を保てる時間があり、
適度にガス抜きができ、しかし日本の働くお母さんほど忙しくもなく、
お父さんも早く帰ってくるので、(平日4,5時、金曜2,3時、土日休み)
両親の子育てにかかわる時間が平等、
子供と接する時間は少ないけれど、中身が濃く、週末は家族でまったり過ごし
子供が大きくなって早く自立しても、クリスマスや誕生日の際は皆が集まって
盛大にお祝いする・・・・・
と思っていたすばらしいデンマーク家庭像は私のただの妄想だったのでしょうか・・・???
いやいや、やはり日本でもデンマークでも、うまくその国の慣習にのっとって
上手に?楽しく子育てしている家庭も沢山あると思います。
どこにいってもなにもかもが完璧な国なんてあるはずないのですから。
そして私はKさんがおっしゃっていたように、日本とデンマークのいいところを
取り入れた子育て(そんな大げさな事はできませんが)ができれば、と思っています。