日本の近代文化人の肉体鍛錬の不足と
病気と薬品のみを通じて肉体に関心を持つ傾向は
日本文学を痩せさせ
その題材と視野を限定した。
私は、明治以来のいわゆる純文学に
剣道の場面が一つもあらわれないことを奇異に感じる。
いかに多くの蒼ざめた不健全な肉体の登場人物が
あたかも餓鬼草子のように
近代文学に跋扈していることであろう。
…… 三島由紀夫 ……
ヴェトナム戦争への感傷的人道主義的同情は
民族主義とインターナショナリズムの癒着を無意識のうちに醸成し
反政府的感情とこれが結合して
一つの類推を成立させた。
類推とは
他民族の自立感情に対する感情移入を以て
自民族の自立感情のフラストレーションの解決をはかるという代償行為である。
…… 『文化防衛論』 三島由紀夫 ……
ベトナム人の孤立について語る時われわれは人間として
不条理なこの時代の苦悩に襲われる。
…… チェ・ゲバラ ……