コンサルタントのネタモト帳+(プラス)

ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

学習調査:『家庭学習』は増えたが・・・

2006-12-11 | ケンカイ
子どもの世界からの話題をもう一つ。今日の毎日新聞ニュースで、ベネッセコーポレーションが毎年行っている『学習基本調査』の本年度の結果が紹介されていました。

家庭学習時間:小中学生で増加「学習離れ」に歯止めか(毎日新聞)


減少していた家庭での学習時間が増加に転じるなど小中学生の「学習離れ」に一定の歯止めがかかっていることが、「ベネッセコーポレーション」(岡山市)の調査で分かった。また「いい友達がいると幸せになれる」と小中高校の9割以上が答え、子どもが「友人関係」を重視していることも浮き彫りになった。

 同社の「学習基本調査」は90年からほぼ5年おきに実施。今年6~7月に全国の公立小中高生計9561人を対象に行った。回答は児童生徒に直接記入してもらった。

 家庭学習時間(平日)の平均は90年調査から2回続けて減少していたが、今回小学生は前回01年の71.5分から81.5分、中学生は80.3分から87.0分に増えた。今回70.5分の高校生は前回とほとんど差がなかった。
(以下略)


この学習基本調査では、子どもの学習実態のほか、子どもの意識についても調査を行っていますが、私が気になったのは「社会観に関する意識調査」の結果です。ベネッセから発表されている速報版によると、子どもたちの社会観について、次のような結果が出ていると紹介されています。
「努力すればむくわれる」が学校段階とともに減少
「日本は、努力すればむくわれる社会だ」「いい大学を卒業すると将来、幸せになれる」は学校段階が進むにつれ減少し、逆に「日本は、競争がはげしい社会だ」「お金がたくさんあると幸せになれる」は増加する傾向がみられた。

このうち、日本は、努力すればむくわれる社会だという項目について「とてもそう思う・まあそう思う」と肯定的に答えたのは小学生では68.3%であったのに対し、中学生では54.3%、高校生では45.4%となっています。

この結果を逆に捉えれば、高校生の半数以上は『日本では、努力しても報われるとは限らない』と感じているということが示されていることになります。これは、即ち子どもたちの成長の過程で「自己効力感(やれば出来るんだという気持ち)」が失われていっているということを強く示唆していると私は考えます。

この「自己効力感」というのは、「やる気の源泉」ともいえる非常に重要な意識の一つです。例えば、組織の中で「自己効力感」が高まっていると、少々のことがあっても「なんとかなる」として前向きに解決しようとするムードが生まれ、その結果として「逆境をバネとした成長」へと繋がっていくことも期待することが出来ます。

逆に、組織の構成員の「自己効力感」が下がることによって、組織の中に「停滞感」が生まれ、これが「やらされている感(マイナスの義務感)」となり、「業績転落のスパイラル(閉塞感⇒業績悪化⇒あきらめムード⇒さらなる閉塞感)」に陥ることも往々にして起こり得ます。即ち、子どもたちの「自己効力感」が成長とともに下がっているのは、子どもたちの中に『希望を持って未来に向けた努力をするためのエネルギー』が少なくなっているという可能性を強く示唆したものであり、『赤信号に近い危険信号』の状態として捉えるべき問題であると感じます。

もちろん、成長とともに「自己効力感」が低下する要素としては、小学生から中学生~高校生にかけて誰しもが経験する『成長のために必要な適度の挫折』が影響していることもあるでしょう。しかし、それを割り引いたとしても、今の世の中が子どもたちにとって「努力次第で、自分の未来が変えられる」と感じられるものではないということがこの調査結果の中に含まれていると思われます。

この『社会観に関する調査』の結果は、家庭学習時間の増減といった話しよりももっと重要な課題を浮き彫りにしているものであると感じます。子どもたちに「努力の向こうにある『幸せ』の道筋」を見せるのは大人たちの責務であると肝に銘じて、この調査結果に真剣に向き合っていく必要があると私は考えます。


最新の画像もっと見る