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ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

レビュー:労働相談『裏』現場リポート

2006-05-29 | 読書机


4月の終わりからずっと受講している社労士会の特別研修。これは、
社会保険労務士法の改正により設けられる『特定社会保険労務士』資格を得るための研修です。

特定社会保険労務士は、社労士法に基づく研修(特別研修)を受け、試験に合格することによって付与される資格で、『裁判外での個別労働関係紛争の解決手続(いわゆる“あっせん”)』の代理業務を行うことができるものとされています。

特別研修の中身は『裁判外での個別労働関係紛争の解決手続』に必要となる法的知識(民法・労働法などの知識+司法的論理構成の技術)についてが中心です。座学(というか、ビデオを見続けるという一種の“修行”・・・・)はともかく、ケースを使ったグループ討議については、今までとは異なる角度で“個別労働紛争”を見ることができ、大変勉強になっています。

そこで、もっと深く労働事件について扱った本はないかと探していたところに見つけたのが、上記の写真にもある『労働相談裏現場リポート(金子雅臣著、築地書館)』。別の労働法論の本を探しに書店によった時にたまたま店頭で見つけたのですが、非常に刺激的なタイトルに引かれ、つい買ってしまいました。

内容は・・・・・実にディープです。東京都の組織である『労政事務所』にて長年労働相談員を勤めてきた著者の木村氏が、自ら扱った“事件”を下に非常にシリアスな『労働相談の現場』を描いています。

この本を読んで正直感じたことは『特定社労士となり労働紛争に関わるようになって、このような現場に本当に出会ったとしたら、自分ならどのように“事件”へと立ち向かうのだろう?』という疑問です。

正直いって、研修等で検討用課題として提示されるケースや書籍で紹介されている事案では『人の息遣い』があまり聞こえません。それは、「きちんとした学習が出来る」という形に編集するためのもので、致し方ない面はあります。

しかし、実際の事案ではそこに当然ながら「等身大の生身の人々」がいて、さらに「生の世界」があるわけです。特定社労士を名乗る以上、私たちはこの『生』の世界の中に自ら飛び込んでいかなければならない場面がきっと出てくるのです。

ケーススタディだけを追っていくと、さも『斬った張った』のようなカッコいい世界が広がっているように錯覚してしまうのですが、この本を読んで、改めて『そんなカッコつけられる世界ではない』と考えさせられました。

特定社労士としてのテクニカルな面はこの本では得られないかもしれません。しかし、労働紛争に関わることは、人の人生に関わることであるという、『特定社労士のメンタル面として最も必要となる要素』が、この本を通じて得られました。

特定社労士に限らず、今後『司法の世界』や『コンサルティングの世界』といった世界に飛び込んでいこうと思っている皆様にはぜひお読みいただきたい1冊です。