出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

理由は面倒

2012年10月04日 | 電子書籍
最近、電子書籍に関するあちこちの記事で、うちは違うなと思ったことがいくつかあったので、それと絡めてとりあえず考えたことを書いておく。

ひとつは、経理が面倒だから消極的だというどなたかのブログ記事で、電子だろうが紙だろうが、経理が面倒とは思わない。そう思う人もいるかもしれないが、紙の書籍のケースと比べても他業種の経理と比べても、面倒なことはないと思う。

もし面倒なのであれば、それは契約の仕方が悪い。短い間に書店が誕生したり、著者との関係や権利に関する議論が続いたりで、「他はそうなのか」と学んだことは多いが、だからといって個別に対応できないわけではない。規模が大きいと各々新規に契約するのが大変と言う人もいるが、規模が大きいなら専門に片付けるリソースを確保する余裕も作れるはずで、それこそスケールメリットではないかと思う。そもそも、なんで電子書籍になったとたん、印税支払を月々にするのかわからない。

契約はともかく、経理をしていたら面倒ではないとわかるはずなので、経理に携わっていない人しか「出版経理は面倒だ」と発言しないのではないかと思う。あるいは、顧客を開拓したい税理士とか?

あと、本日どこかの記事で知ったのだが、緊デジ(コンテンツ緊急電子化事業)に割り当てられた予算が、現時点で5%も使われていないらしい。申し訳ない、うちも「参加する(賛同するだったか?)」と手続きしておいて、実際の電子書籍化を頼んでない。

面倒なのは経理じゃなくて、そこなのである。電子書籍取次が無料で手取り足取り作ってくれるのに、わざわざ申請やデータの用意などの手間をかけるのが面倒なのである。その記事には、電子書籍のデータは自社で持つことが重要だと書かれていて、緊デジの説明会でもそこがポイント!と説得されたが、そこがよくわからない。自社サイトでちゃんとした売上をあげられない限り、自社でデータを持っていても意味がない気がする。どこかの電子書店が権利を保持していて、何が悪いのかわからない。そんなに「これからは電子書籍の時代」というなら、どこかが潰れても次々と売ってくれる書店は出てくるだろうし、取次もどんどん「今度、ここ始めるから」と知らせてくれるだろう。

緊デジの人たちは、「電子化しませんか?」とたずねてきてくれない。彼らがバカにする電子書籍取次(そこを頼っている出版社のこともバカにしているように感じる)は、本当によくやってくれる。緊デジでの諸手続きがどうなのか頼んだことがないのでわからないが、「個別に営業マンが対応してくれる」というイメージがまったく沸かない。同じ面倒でも、「次はこれをしてくださいね、そのためのフォームを送りますよ」とやってくれれば、他の仕事の合間になんとか片付けるとかできる。最初のアクションはこちらから・・・というのが面倒なのである。予算をそっち(個別対応人員)に使ったら少しは違ったかもしれないと思う。(もっと言えば、端末に助成すればいいのである)

それはそうと、作るのが簡単なのは私も知っている。でも、簡単だが面倒くさい。途中まで技術的な進展などフォローしていたが、もうやめてしまった。で、件の記事には、若い者にさせればいいようなことが書かれていたが、せっかく原価が安い話をしているのに、そこで人を雇ってどうする。外注先だけでなく社員も安月給で泣かせるつもりかと、一瞬考えてしまった。

他にもあちこちでいろんな考えを読むが、現時点のうちの気持ちはこういう感じ。

わかったよ。「バカなのは出版社」で結構。でも商売なんだから、布教活動と比べられても困る。各社いろいろ思うところあって、積極的だったり消極的だったりするのだから、出版社ではない人にアレコレ言われても「なら、あんたすれば」としか言いようがない。

電子書籍に限った話ではないが、これと見込んだ人にコンサル料を払って教わったことは役に立つが、何とかアドバイザーという肩書きで活躍している人たちが大勢に向けて発信している情報は、すぐには役立たない。電子書籍に関する議論もそれと似ている。

2 コメント

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Unknown (susumiya)
2012-10-03 21:30:28
ゴールドラッシュの時、結局儲かったのは地図屋とスコップ屋だったってのと似た感じですね、相変わらず。
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Unknown (タミオ)
2012-10-05 09:35:07
susumiya さん、ご無沙汰しております。

そうですね。地図屋とスコップ屋が儲かるのは全然構わないというか、いろんなビジネスが生まれるという意味でいいなあと思います。嫌なのは、儲からないからって地図屋やスコップ屋に、山師のやり方に関してアレコレ批判されることですかね。
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