出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

取次口座が取れたわけ

2005年02月17日 | 出版取次口座の取得
私の知り合いに、何冊か本を出したという人がいた。ある日、出してもらった出版社がつぶれそうなので、私に出版社になれと言ってきた。これがきっかけ。

私はもともと「何でも屋」タイプで、新しい話にはすぐ首を突っ込む。履歴書に書ける資格は運転免許しかないが、商売で役立ちそうな諸々の権利を、結構持ってる。だから出版も、「ああ、いいよ」ってなわけで、さっそくトーハンに電話した。

昔、幼馴染の実家が本屋をしてて、店の外にあったダンボールの社名を覚えていた。記憶力がいいわけじゃないが、こんな頭でもたまには役立つ。

あちこち電話を回された挙句、書籍仕入部というところにたどりつき、とりあえず会いましょうということになった。ちなみに、(今では仲良しの)印刷屋の話では、この書籍仕入部は、取次の中のエリート部署だそうな。

1回目の訪問は、ただの顔合わせだった。今思えば、「まあ、申し込みくらいはさせてやるか」という態度で提出書類リストみたいなものを渡された。

会社の謄本、役員全員の職歴、出版実績、出版計画。たいしたことない。出版実績は、最初に話を持ってきた知り合いのものをベースに、部数などを少々脚色したが、ここがミソだったと後で知る。出版計画は、そいつが、「最初の年に10冊くらい書いとけばいいらしい」との情報をどこかからか仕入れてきて、適当に書いてくれた。当然だ。

2回目の訪問で、書類を提出。「広告デザインDTPのプロ」と、私の職歴に書いてある。実際は、「たまにパソコンで絵を描くのが趣味」なのだが。

ここで、「有限会社はダメ」なことと、「キャッシュを1500万円用意」と言われる。彼の見積りでは、DTPのプロが根拠になったらしい。あまり外注せずに数冊出すために必要なのが、1500万。

適当に財務をいじって法人格の変更登記をして、3回目の訪問。いじる云々の話もあるんだけど、税務署が怖いので割愛する。3回目は新しい謄本と、2回目にもらった契約書に捺印をしたもの。今までの人の上司も同席した。

後で聞いた話だと、取引開始申し込みに来る10社のうち、2社くらいを上司に回すらしい。残りの8社はお断りということ。

結局、そのまた上の上司まで、3段階チェックを経て、4回目に契約となった。

うーん、こう書いてみても、私と8社の違いが、よく分からん。実際、銀行残高を見せるでもないし、ネタだって適当だ。どう適当かというと、出版企画!なんてもんじゃなくて「○○解説、××年前期版」とかにして増殖させただけ。

出版実績は、本なら5冊くらい、小冊子なら数年配ってればいいらしい。自費出版した人を5人知ってればOKじゃないか。

とにかく、出す本のネタが、たくさんあること、そのための資金があることを、自信満々に聞かせることがポイントだと思う。