遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(506) 小説 希望(30) 他 種を撒く

2024-07-14 12:29:06 | 小説
              種を撒く(2023.9.3日作)



 人が生きるという事は
 種を蒔く事
 人は皆 死に赴く存在 しかし
 その死が 人の生を無駄にするもの
 とは 言い切れない
 人は日々 生きるという行為の中で
 種を蒔いている 良い種 悪い種
 人の死後 その種は芽を出すだろう
 それが やがて 大きくなり
 それぞれの果実に結実する
 人の命はそうして 受け継がれ
 人はそうして後の世を生きている



           才能


 才能とは 人が持って生まれたもの
 金では買えない貴重品
 それでも才能は
 人格の貴賤に係わる事は無い
 才能豊かな人間でも 卑しい人間は
 何時(いつ)の時代
 どの場所にも居るものだ




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              希望(30)




「夜中の二時に侵入(へえる)んだ。三人は別行動で現場へ行く。これが境川から向こうっ側の略図だ。この、東境川小学校を目当てに行くと分かり易い。ナンバープレートを変えて俺達の車を使ってもいいんだけっど、用心の為に三人、別々にタクシーを使った方がいい。落ち合うのはこの小学校の門の所にしよう。この辺りは小っちぇ商店街で周りは住宅ばっかりだから、夜中の二時なら人の通る事もまず無えと思うんで、人目にも付きにくい。此処で落ち合ったらこっちの十字路へ出て右へ曲がるんだ。そっから百メートルばっかり歩くとまた十字路がある。時計屋はこの十字路の角だ。此処なんだ」
 北川は黒のボールペンで小さな丸印を書き込んだ。
「左隣りの此処が信用金庫で、右隣りの此処が紳士服の仕立て屋だ。この時計店は店構えは小っちぇけっど、老舗なんで品物は良いものが揃ってる。ショーケースの中だけでも一千万以上はあると思うよ。仕事が終わった後はまた、三人別行動で帰(け)えるんだ。気を付けねえといけねえのは、人通りが少ねえ通りだから、歩いている姿を見られねえ様にしなければいけねえって事だ。タクシーも拾わねえ方がいい。だけっど、こっちの市場町の方へ出てしまえば繁華街だし、タクシーを拾っても怪しまれる事はねえと思うよ」
「火曜日の夜に遣んだな」 
 鳥越が念を押した。
「修二の休みが水曜日だし、その方がいいだろう」
「明日・・・明後日か」
「うん」
「お前え、そっでいいのか」
 鳥越が修二に聞いた。
 修二は黙って頷いた。

 その夜、北川と鳥越が帰った後、修二は久し振りに鞄からナイフを取り出してみた。
 ナイフは血痕一つ残していなかった。
 ボタンを押してみた。
 刃(やいば)の素早い動きも依然として健在だった。
 見事な輝きも全く変わっていなかった。
 満足感と喜悦に包まれて再びナイフを鞄に納めた。
 同時に、<ブラックキャッツ>のリーダーを刺した時の記憶が蘇った。
 後味の良い記憶ではなかった。
 出来れば頭の中から払拭したかった。
 今度はナイフを使わなくてもいい、と北川は言った。
 その言葉を思い出しながら、両手を頭の後ろに組んで布団の上に寝転がると、この仕事が終わったら店を辞めようかと考えた。
 かなりの金が入ると北川は言った。
 意識の中にはマスターの存在があった。
 修二が此処に来て以来、マスターは常に優しくしてくれていた。そのマスターに対して、自分の取る行動の総てがマスターを裏切る様な行動だったとしか思えなかった。
 <ブラックキャッツ>のリーダーを刺した事、女将さんとの事、そして、今度の事もまた、もしもの場合にはマスターに迷惑が掛かる事になり兼ねないーー。
 女将さんの口からマスターと女将さんの関係を聞いて以来、修二の気持ちの中では、女将さんに対する思いが微妙に変化していた。
 以前は蔑みの眼でしか見られなかった女将さんに対して、別人を見る思いがしていた。
 女将さんの已むに已まれぬ気持ちーー、女将さんの哀しみもまた分かる気がした。
 マスターへの思いと共に女将さんへのそんな感情も絡んで来て修二は息苦しくなる程の感情に捉われた。
 いっそ、この店を辞めてしまえば、そんな苦しさからも逃げられる。
 北川の話しでは、少なくとも三百万円以上の金が入るという。それだけあればなんとか生活してゆけるだろう。
 それに、この街も出て、別の街へ行ってまた新しい仕事を探せばいい。
 火曜日、夜、修二は店の仕事が終わって二階へ上がると、すぐに鞄からナイフを取り出した。
 ボタンを押して刃を開き、再度の点検を試みた。
 再び刃を元に戻してテレビの上の丸い目覚まし時計に眼をやった。
 十一時を四十分程過ぎていた。
 これから午前二時までどの様に過ごそうか・・・・
 取り敢えず風呂へ行く事を考えた。
 午前中、豚骨の始末に追われて汗だくになり、肉汁や脂の匂いが染み付いていた。
 女将さんが今夜のうちに来る心配はまず無かった。
 その点では安心出来た。
 いずれにしても、この仕事が終わったら店を出るのだ、その思いは修二の気持ちの中では揺るぎの無いものになっていた。





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             takeziisan様


              
              有難う御座います
             今回も楽しませて戴きました
             山百合 満開ですね 以前にも書きましたが最も好きな花の一つです
             これ等の花が自然の中で見られる環境の素晴らしさ
             羨ましい限りです
             それにしても夏の花々 この猛暑の中で見事なものです 
             自然の逞しさでしょうか
             大きなサボテンの木の花 我が家の近所にもかつてありましたが
             その家の建て替えと共になくなりました
               健診 わたくしは今年も満点でした
             体組成計の診断では肉体年齢は七十一歳です
             一つでも何処か悪いと気分的に違います
             どうぞ お気を付けて下さい 良い結果を願っています
              様々な映画音楽 どれも耳に馴れたものばかりで懐かしいです
             甦る青春というところでしょうか
              むくげの季節 この季節の数少ない清涼感を運んで来てくれるものの一つです
              飲み会 続けて下さい 自分から年寄り仲間を宣言する必要はありませんよ 
              この年でもまだまだいけるぞ お前なんかには負けないよ 
              その気概でどうぞ
               吉川英治 名言 禅の思想に通じる言葉です
              有るけど無い
              無いけど有る
               来週 同じ様な意味の文章を掲載しようと思い
              整理を済ませたところです もし 宜しかったら
              お眼をお通し戴けたら と思います
               黒田節 赤坂小梅が太ったあの体で豪快に唄っていた姿を思い出します
              市丸 喜久丸 音丸 勝太郎 藤本二三吉 ラジオで馴染の名前です
              懐かしさばかりです 
               有難う御座いました 楽しませて戴きました