告白
2010年/日本
若き‘ウェルテル’の悩み
総合 100点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
偉業と言ってもいいと思う。告白を中心として物語とは直接関係のない様々なイメージまでも取り込んで映像を組み立てていくアート系作品は通常難解と見做されて密かに単館上映されるものであるのだが、そのような作品が何と映画観客動員ランキングでトップに立ってしまったのだから。しかし決して万人向きに作られているわけではなく、暗い青味を帯びた映像もレディオヘッドの楽曲の使い方も文句のつけようがないからなおさら凄いのだが、これから書こうとする私のこの作品に対する評価は万人受けしそうにないことは予めお断りしておく。
この作品の重要なポイントとなるシーンは最後の主人公の森口悠子の「な~んてね」という一言に尽きる。常識で判断するのならば彼女のこの言葉は人を殺しても少年法で保護されてしまう渡辺修哉に向けられた皮肉と捉えられるのであろうが、それにしては森口悠子の「な~んてね」の言い方は余りにも明るすぎる。
それを踏まえてもう一度この作品を最初から‘プレーバック’してみると不思議なことが次々と見つかる。最初のシーンで教室の黒板の上の壁に時計がかかっていたことは誰もが気がつく。もちろん‘『ダーリンは外国人』的’な指摘をする必要もなく時計は正確に時を刻んでいた。問題は時間そのものである。3学期の終業式の日の午前10時30分頃に牛乳だけの給食ということがあるだろうか? 当日に運ばれてくるはずの牛乳パック内に、生徒に配る前に注射器で血液を混入させて、あのような賑やかなクラスの中で特定の2人の生徒に疑われずに届くように女教師が一人で仕向けることは可能だろうか? もちろんこのことに関しては森口悠子自身がそんなことができるわけがないと後半で告白しているのであるが、そんなことができるわけがないことが生徒たちが気がつかないことが不思議なのである。森口悠子の娘の森口愛美が渡辺修哉が仕掛けた電気ショックで気絶してしまった時に、あれほど優秀な渡辺修哉が確かめもしないで本気で森口愛美が死んだと思ったのだろうか?
このように次々と不可解なシーンが見つかってしまうのだが、このことをもって中島哲也監督の演出ミスとは私は捉えない。この作品を敢えてアート系作品のように演出をしていることからも分かるように、これらの‘演出ミス’は監督の意図的なものだと思う。つまりこの作品は全て森口悠子の妄想なのである。
「な~んてね」(松たか子風に)
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