原題:『まほろ駅前狂騒曲』
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣/黒住光
撮影:大塚亮
出演:瑛太/松田龍平/高良健吾/真木よう子/麿赤兒/永瀬正敏/本上まなみ
2014年/日本
噛み合わないストーリーの中の「万歳」について
前作『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)はあまり上手く理解できなかったが、本作は妙に松田龍平が気になる作品に仕上がっている。主人公の2人が競い合うようにやたらとタバコを吸うところが面白く、行天春彦を演じる松田龍平は冒頭から頭部にボールをぶつけられたためなのか、もはや演技とは言えない弛緩した言動なのであるが、実子のはるの出現によりタバコを吸うことが禁じられた松田の行動に一気に緊張感が高まる。
それはおそらく自ら父親の松田優作の『太陽にほえろ!』の殉職シーンのパロディーを演じるためだったのかもしれない。ジーパン刑事を銃で撃ってそのまま逃げてしまった犯人に言いたかったはずの言葉を代わりに息子が言うという設定が泣かせる。
ラストで行天春彦は「VIVA まほろ」と文字が入ったTシャツを着ている。「VIVA」とは「万歳」という意味だと多田啓介に教えられ、そんな気分なのかと問われると、力なく肯定する行天。「万歳」とは叫ばないけれども、そういう気分であってもいいではないかという気力が無い喜びこそが本作の醍醐味なのであろう。