MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「Still Crazy After All These Years」 Simon & Garfunkel 和訳

2021-06-19 00:56:19 | 洋楽歌詞和訳

 ポール・サイモンの「時の流れに」を和訳してみようと思った理由は、コラムニストの小田嶋隆が『災間の唄』(サイゾー 2020.10.31)で以下のように書いていたのを見つけたからである。

「ポール・サイモンの『Still Crazy After All These Years』という曲の最後のオチの部分は、『いつかぼくは事故を起こす(昔の恋人を轢き殺す?)かもしれない。でも、同じ穴のムジナであるこの街の陪審員はぼくを有罪にはしないだろう。それほどすべてが狂っているんだ』てなことになっている。つまり”still crazy....”というフレーズが『いまでも君に夢中なのさ』と『ことほどさようにうちの国の司法制度はずっと昔から狂っているわけなのだよ』のダブルミーニングになっているわけなんだけど、うちの国のメディアもStill Crazy After All These Yearsだとオレは思うよ。」(p.317-p.318)

 改めて「時の流れに」を和訳してみようと思う。

「Still Crazy After All These Years」 Paul Simon 日本語訳

昨夜僕は通りで昔の恋人と出会った
彼女は僕に逢えてとても嬉しそうだった
僕はただ微笑んでいた
僕たちは昔話に花を咲かせながら
ビールを酌み交わした
あの頃からずっと夢中だったんだ
あの頃からずっと素敵なんだな

僕は社会的活動を好んでするようなタイプの男ではない
僕は古く馴染みのあるやり方の方を好むようだ
僕は耳元で囁くようなラヴソングに夢中になんかならないよ
あの頃からずっと非現実的だったんだ
あの頃からずっと変わり者なんだな

朝の4時
疲労困憊で横になっている
あくびをしながら
自分の人生を消し去りたいと願う
僕は絶対に心配などしない
何故心配しなければならないのか?
全ては消えていくというのに

今僕は自分の部屋の窓辺に座って
車を眺めている
ある日自分が損害を与えるのではないかと恐れているけれど
僕は僕の同輩陪審によって有罪判決を下されることはないだろう
あの頃からずっと狂っていたんだ
イカれている
イカれている
あの頃からずっとむちゃくちゃだったんだな

 小田嶋の解釈に文句を言うつもりはないのだが、ポール・サイモンは同輩陪審(Jury of one's peers)という制度の瑕疵を指摘すると同時に、既存のやり方を好み社会活動に参加して改善しようとするわけでもない(学生運動をスル―した?)自己批判と自己嫌悪を歌っていると思う。
 だから本来ならば2番と3番を入れ替えれば時系列として分かりやすくなるのだが、ポール・サイモンは敢えて逆にすることで2番で聴き手に何を歌っているのかと疑問を抱かせて3番で種明かしをしているのである。小田嶋に倣うのならば「トリプルミーニング」なのであり、小田嶋が思っている以上にポール・サイモンが書く歌詞は繊細なのである。

Simon & Garfunkel - Still Crazy After All These Years (from The Concert in Central Park)


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