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「女三人のシベリア鉄道」森まゆみ

2021年11月01日 13時01分29秒 | 読書(旅・紀行)


「女三人のシベリア鉄道」森まゆみ

明治から昭和、シベリア鉄道で旅をした作家たちがいた。
与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子。
彼女たちの足跡をたどる旅。
紀行+評伝作品・・・味わい深く濃い内容だ。

P9
当時、晶子は33歳で7人の子の母であった。下の二人は養女に出し、上の五人を夫寛(鉄幹)の妹静子に預けて、たった1人、シベリア鉄道に乗ったのである。(中略)
「かにかくシベリアの汽車にして1人旅をいたさんとするにて候へば暴挙に近きことゝは自らおもひ居り申候」

P11
与謝野鉄幹は表立って金を稼がない人であったから、収入を得るのも、家事も、育児もすべて晶子の肩にかかっていた。その苦労を傍で見ていた啄木は「姉と話しているような気がする」と慕っていた。

P34
晶子はまだ多産多死の、医療技術も整わぬ中で13人も産んだ。あるお産の前に有島生馬邸を訪ね「私は難産なので、今度は死ぬかもしれませんからご挨拶に伺いました」といったそうである。

P184
両者(ゴーリキーとその息子)ともスターリンによる毒殺だという説はいまもって根強い。

P192
「宗教はアヘンである」というレーニンの言葉に従い、革命後、教会は弾圧され、(中略)スターリンの命令で爆破された。(私は「イデオロギーもアヘン」と思う)

P224
「あと五(ウー)は福(フー)に通じるから、六(リュウ)は利(リー)に通じるから中国人は好きです」

P226
「走れ!走れ!汽車よ、泪せきあえずです」(林芙美子「巴里まで晴天」)

P344
「ロシアは驚木桃の木さんしょの木だ。レーニンをケイベツしましたよ」労働者であった芙美子にはこの革命が人民の名をかたりながら人民のものになっていない、ということが見えたのであろう。

【ネット上の紹介】
与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子。明治末から昭和初めの動乱期に、シベリア鉄道で大陸を横断した逞しい女性作家たちの足跡を辿り、著者もウラジオストクから鉄道で旅に出た。愛と理想に生きた三人に思いを馳せながら、パリを目指す。車中での食事、乗客とのふれあい、歴史の爪跡が残る街…世界で最も長い鉄道旅をめぐるエピソードの数々。三人と著者の旅が、時を超えて交錯する評伝紀行。
第1章 ウラジオストクへ
第2章 バイカルの畔にて
第3章 エカテリンブルクのダーチャ
第4章 「道標」のモスクワ
第5章 東清鉄道を追って
第6章 夜汽車でワルシャワ、ベルリンへ
第7章 パリ終着の三人
あとがき―旅を終えてから

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