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「紅子」北原真理

2019年12月19日 10時54分56秒 | 読書(小説/日本)
「紅子」北原真理

1944年、満州が舞台。(これだけでツボだ)
吉永紅子は、さらわれた子ども達を救うため、馬賊の城塞に乗り込む。
さらに、実在の人物として、甘粕正彦も登場し、金塊をめぐって、馬賊、関東軍、特務機関が入り乱れて物語が展開する。

P19
「吉永紅子といったな。純粋の日本人に見えない」
「母がドイツ人、ええと西洋人なの」
 欠耳の言葉通りだ。
「べにこ、は漢字で、紅の子と書くのか」
「そ、そうよ」
 紅子の顔が真っ赤になった。古い中国語で紅子の意味するところは胡子、即ち馬賊である。
「いかれた名前だ」

敵からの逃亡中のサスペンスシーン。
いく手に崖が立ちはだかり、勝手についてきた犬をどうするか悩む。
P237
 紅子は犬に訊いた。
「登れる?」
 犬は首を傾げた。
 紅子は情けない顔でしゃがみ、犬をふりむいた。
「私、貴方、苦手なんだけど・・・・・・おんぶ、してほしい?」
 犬は首を傾げている。

【感想】
デビュー作「沸点桜」も面白かったが、2作目にあたる本作はさらに面白く、予想以上の仕上がりだ。
シリアスなバイオレンス・シーンとコミカルなシーンが同居するが違和感はない。(「ジャパネスク」の瑠璃姫が満州に降り立ったような作品だ)
純粋なエンターテインメント小説として、本年度トップクラス、と思う。

【おまけ】
P269に聖路加病院の名称が出てくるが、ルビが「せいろか」となっている。
正式には「せいるか」である。
TVや世間でも「せいろか」と言われる事があるが、間違いである。
なぜなら、聖人ルカの漢字表記に由来するからで、「せいるか」が正式名称だ。

【参考リンク】
「沸点桜」

【ネット上の紹介】
1944年満州。馬賊の城塞に、関東軍の偵察機が突っ込んでくる。冷徹な首領、黄尚炎たちは、パイロットが絶世の美女であることに驚く。その女、吉永紅子は、子供たちを救出したいがために、荒くれ男たちのいるこの谷へ女一人で飛び込んできたという。尚炎は、この女は肝が据わっているのではなく、馬鹿なのだと呆れる。関東軍特務機関の黒磯国芳少佐は、吉永紅子が嫌いだ。甘粕正彦に可愛がられ、やりたい放題する紅子を憎いとさえ思っている。無茶で破天荒な女に翻弄される、馬賊の頭領と関東軍将校。一方、甘粕が隠匿する金塊を狙う輩たち。騙し騙され欲望が渦巻く、サスペンスフルな冒険譚。
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