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「RDG レッドデータガール」(6)荻原規子

2012年12月03日 23時00分27秒 | 読書(小説/日本)

「RDG レッドデータガール~星降る夜に願うこと」(6)荻原規子

シリーズ最終巻。
一部書店では、29日に店頭に並ぶ、と聞いていた。
28日の昼休み、明日に備えて紀伊國屋書店・在庫検索をかけた。
するとどうだろう・・・「在庫あり」、と!
ソッコー紀伊國屋にTEL、「在庫あるんですか?」、と私。
「本日入荷しました」、と店員さん。
「レジに取り置き下さい」、と私。
その日は残業を早めに切り上げて、紀伊國屋に直行。
もちろん、その晩は一気読み。
そして、週末はゆっくり再読。
現在、やっと落ち着いた。

読んでいない方のために紹介すると、内容はほとんど学園もの。
日本を代表するファンタジー、と思う。
ファンタジーの難しさは表現力にある。
現実離れしたシーンのリアリズム。
そこに至る、登場人物の心理的な盛り上げ。
巧みな文章力が必要とされる。
その点、荻原規子作品は、満足度120%の仕上がり。
(比較にならないけど、「ハリーポッター」より、ずっとおもしろい)

本巻では、(登場しないけど)重要人物が示唆された。
深行君の母親・香織、である。
もし、第2部が上梓されるならキーパーソン、でしょう。
第2部、だなんて、気が早すぎ?
でも、この終わり方は、つい第2部を期待してしまう。
なぜなら、まだ主要人物たちが高校1年だから。
せめて卒業まで、あと2年間を描いて欲しい、と願う。
(今は、白紙状態でしょうけど)

いくつか文章を紹介する。
P261
「陰陽道には、則と理がある。根本的にはカオスをなすこの世のものごとに、則や理にかなった縛りを与える思想だ。だから、魔を封じるための術が基本なんだ。鈴原さんの力はそうじゃない、何でもかんでも増殖させるんだ。源泉なんだ」

P323
「泉水子と姫神が別人かどうかは、ものの見方によるだろう。姫神が過去へさかのぼった結果、もっとも念入りにやりなおしたのは、このわたしの人生だったはずだ。自分を産む者のあり方を一番どうにかしたかったのは、その立場にあれば当然だ。そのせいで、私の特徴がいろいろ染みついて、その後の性質には、最初の人格より私の人格のほうが色濃く出るのかもしれない。まあ、どう考えてもいいよ」

P335
「岩、つまりは鉱物。生命体から一番遠く、硬化して動かないと思うものでも、地球の芯にあってはちがうだろう。地上の生命よりはるかに高い波動をもっている。これが地球の本当の命であって、有機生命体はその小さなまねごとかもしれない。そういうものが地表に出てきて、降りそそぐ太陽に遠い自分たちの源を知る。それは歓びだ。神々とは、歓びが本質だよ。姫神もたぶんそういうものだ」

さて、今回のサブタイトルは「星降る夜に願うこと」・・・この意味は最後のシーンでわかる。

【蛇足】
「がんばれ!!タブチくん」というマンガがあった。
あり得ないことを「タブラン」と言った。
タブチくんのランニングホームラン、の略である。
荻原規子作品の「タブラン」は「濡れ場」、でしょう。
でも、もし「それ」に相当するシーンがあるとすれば、本作品の最終シーンではないか、と思う。

【ネット上の紹介】
泉水子は“戦国学園祭”で能力を顕現させた。影の生徒会長・村上穂高は、世界遺産候補となる学園トップを泉水子と判定するが、陰陽師を代表する高柳は、異議をとなえる。そして、IUCN(国際自然保護連合)は、人間を救済する人間の世界遺産を見つけだすため、泉水子に働きかけ始めた!?泉水子と深行は、だれも思いつかない道のりへ踏みだす。姫神による人類滅亡の未来を救うことはできるのか―。ついにRDGシリーズ、完結。
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