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「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ

2021年01月05日 17時39分36秒 | 読書(小説/海外)


「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ

久しぶりに海外小説を読んだ。
評判が良いから、読んでみようかな、と。
確かに面白かった。

後半の法廷シーンも面白いが、それ以上に前半部分がすごい。
最初、母親がDVに耐えかねて出て行く。
次に、兄も出て行く。
最後、父親も出かけたまま戻ってこなくなる。
その時、カイアは6歳。

湿地の小屋でたったひとりで生きなければならなくなる。
貝を掘って売りに行き、魚を燻製にして売りに行く。
友だちはカモメだけ。

P32
高く低く鳴き声を響かせ、カモメたちが輪を描くように降下してきた。そして、カイアの目の前を飛び交い、トウモロコシの粉を放ってやると浜に降り立った。それからしばらくすると、鳥たちは静かにその場で羽を繕うようになった。カイアも膝を横に崩して砂浜に坐った。傍らに大きなカモメが寄ってきて、そこに居場所を定めた。
「今日はわたしの誕生日なの」カイアは鳥にささやきかけた。

P155
「どう言う意味なの?”ザリガニの鳴くところ”って。母さんもよく言ってたけど」カイアは、母さんがいつもこう口にして湿地を探検するよう勧めていたことを思い出した。(中略)
「そんな難しい意味はないよ。茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所ってことさ。(後略)」

P304
夕暮れの潟湖にボートを差し入れながら、カイアはサギに話しかけた。「そこにいていいのよ。その場所はあなたのものなんだから!」

【印象に残るシーン】
湿地でサバイバルする描写に圧倒される。
自然は過酷だが、美しくもある。
自然描写がすばらしい。

村人はカイアを無視し、避けようとするが、黒人の夫婦が色々と世話をやいて助けてくれる。貝を買ってくれたり、服をくれたり。そのシーンも印象に残る。

【備考】
著者は動物学者で、フィールドワークを行い、そのノンフィクションは、ベストセラーになったそうだ。
本書は、69歳で執筆した初めての小説、とのこと。

【おまけ】
読んでいて、なんとなくロバート・R・マキャモンの「少年時代」を思い出した。
老後整理のためだいぶ本を処分したが、まだ手元で持っている。
最後まで、手放せない本、と思う。

【ネット上の紹介】
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。

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