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SMILEY SMILE

たましいを、
下げないように…

別れのWaltz

2005-05-05 02:55:53 | ビルエヴァンス
意外にDebbyの録音はそう多くない。

初演のソロ、あのヴァンガードライヴ、アダレイとの共演、モニカの歌

伴などが主なものだろうか。後は、非公式のライヴ録音が残されている

だけだ。

その中に、最晩年のドイツでのライヴレコーディングが残されている。

最後の誕生日の前夜の録音、すなわち死の1ヵ月前。ドイツのファンか

ら贈られた腕時計は、ライヴの後に行われたパーティーが終わると、ポ

ツンと会場に残されたままだったという。

ピアノの前に座っているとき以外は、抜け殻だったエヴァンスを物語る

印象的なエピソード。

ここで、珍しくDebbyを演っている。

しかも、魂のこもったソロから始まるこのテイクは、姪であるDebbyへ

の、またはオーディエンスへの別れの言葉のように聴こえてしまって、

朝から、坂を登りつつ眼を潤ませてしまった。

ラファロの鳴らす音

2005-04-26 03:58:33 | ビルエヴァンス
60年のバードランドセッションは当時ラジオ放送したものを編集した

だけなので、音は悪いが、何と言ってもラファロ-モチアンという希少

音源なので、時々思い出したように聴く。

一曲目の「枯葉」のラファロのソロのすごいこと。本当にこれは同じベ

ースなんですか?と問いたくなる。そして彼のイマジネーション、神

懸ってる・・・。

エヴァンスに「なぁ、ビル、そんなんじゃ、曲が泣いてるぜ」

と平然と言ってのけるラファロ。後にも先にもこんなことエヴァンスに

言えるのは彼だけだったそうだ。

29歳の死。私と同い年か・・・。


JMB連携TB企画第39弾『音のある風景』 

2005-04-25 13:58:37 | ビルエヴァンス
写真ではないので、この趣旨とはずれてくるのかもしれないのですが、

この今のテンプレを、写真だと思ってください。すいません。

『UNDERCURRENT』

アンダー・カレント+4
ビル・エヴァンス&ジム・ホール, ビル・エヴァンス, ジム・ホール
東芝EMI

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このテンプレを選んだとき、このジャケを思い浮かべたんです。

そして、このお題が与えられて、少し考えて、このジャケになくて、

このテンプレにあるもの。






もし、ラファロが死んでいなかったら、ジムホールではなくて、

ラファロ

ではなかったか・・・。



そうだったら、きっと、このジャケにも美しい空が入っていたと思う

のです。



JMB連携TB企画 第38弾 /Just Spring!

2005-04-11 13:28:12 | ビルエヴァンス
春といえば、エヴァンスでしょう!♪

ザ・コンプリート・リバーサイド・レコーディングスのディスク-3収録の

 1.SPRING IS HERE
 3.COME RAIN OR COME SHINE
 5.BLUE IN GREEN
 8.SOMEDAY MY PRINCE WILL COME
 9.WHEN I FALL IN LOVE
10.ELSA
11.SWEET AND LOVELY

を2:30からずっと流してる。かれこれ半日。

DISC-3は『Portrait in Jazz 』と『Explorations』の一部が入っ

ている。


春の生ぬるく、気だるい雰囲気、華やかさに潜む虚無。

または、春の雨に咲き落ちる桜の花。


この選曲に「枯葉」を入れると、一気に秋になってしまうのでやめた。

でも、枯葉が散るのも桜が散るのも同じだし、枯葉と桜吹雪もこのテイ

クのイメージだと嘘みたいに散る様が想像できる。・・・いやいや、や

はり、花びらというより葉が落ちる強いタッチの演奏。春ではない。

というわけで、 1曲目に、「SPRING IS HERE」がある、本盤が、

Just Spring!

ただし、編集しないとね。






ザ・コンプリート・リバーサイド・レコーディングス
ビル・エヴァンス
ビクターエンタテインメント

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真実のエヴァンスは?

2005-04-06 02:37:40 | ビルエヴァンス
ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄

河出書房新社

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エヴァンスは今でこそジャズジャイアンツの一人の数えられているジャズマンだが、当時は意外に売れなかったようだ。あの「ワルツフォーデビー」の録音された時、バンガードには数人の客しかいなかったらしい。(勿論、故意に客の少ない日曜を選んだという理由もあるのだが)
ピアノ(トリオ)自体軽んじられていたし、ましてや白人のジャズなどまだ認められていなかった。邪道、と考えられていたのだろう。
その後も60年代は『自己との対話』や『アローン』でグラミー賞をとり栄誉は与えられても、「売れっ子」にはなれなかった。
エヴァンス自身も「売れる」為に様々なことを試みた。エレピを弾いたり、オーケストラと共演したり。そしてその収入はドラッグに当てられていたというのは痛々しい事実だ。
結局本当に売れたのは死後、というのも悲しい。
エヴァンスは本国アメリカでは評価が低く、ヨーロッパと日本で熱狂的に受け入れられた。あの『モントルーフェスティバルのビルエヴァンス』での盛りあがりは「mad」という言葉を使うほどだったという。
これを読んでいて思ったのは、あれほど、死後リリースされているにも関わらず、まだまだ未発表の音源はたくさんあるということだ。
エヴァンスが許可しなかったもの、契約の関係でお蔵入りになったもの。
正規に発売されたものこそ、エヴァンスの考える美に近づけるのだとは思いつつ、「新発見」「発掘」モノに弱い、そして、そういう音源は須らく聴くに耐えない代物だったりする。私と同い年のエヴァンスの実息は自宅での練習テープや10代のエヴァンスの音源を出してくる。彼はそれを使命だと思ってくれているのか、どうか・・・。
また、太宰を引き合いに出すけれど、太宰さんの作品を読みこむことをせず、書簡集や彼の友人や親族の回想記を読んで太宰はこんなヤツだったんだ、と得意げな笑みを漏らしている姿と同じだ。美しいとは言えない。
でもそれを踏まえつつ、また作品に戻り、彼らの「思い」を汲み取りたい。
というのが、私の、「いいわけ」。

死に彩られた生

2005-04-05 03:54:02 | ビルエヴァンス
前述、エヴァンスの本を読了。

久し振りに夢中になった本だった。

電車で読み、読みながら電車を降り、駅を出ても読み、暗くて読めな

くなって初めて本を閉じる。そんなことはそうそうあることではない。

エヴァンスの伝記は一度読んだけれど、それより面白かった。中山康

樹さんの思いも伝わって来たからだと思う。


エヴァンスは、我々が想像する以上に過酷な人生だった。

ドラッグ、父の死や恋人と兄の自殺、最良のパートナーだったラファロ

の事故死、当時のジャズ業界の生き馬の目を抜くような厳しい環境。

彼に安息の場があるとしたら、ピアノを弾いているときだけだったのか

も知れない。だからこそ、あのような繊細で危うい美を表現できたの

だろう。

やはり、エヴァンスと太宰はよく似ている。

あの美しさを表現するには、尊い犠牲が必要なのだと。

死に彩られた生は、この世のものとは思えないほど、美しいものを生み

出す。死に近いからこそ、生の美しさが目映く感じられる。

芸術家の業。

どんな苛烈なものでも表わさずにいられないという業。

彼も人間であることより、ピアニストであることを選んだひとだった。


エヴァンスの弾き方

2005-03-19 05:15:04 | ビルエヴァンス
祈るようにピアノを弾くエヴァンスの姿。

ここまでピアノという楽器と向き合っている姿というのも珍しいので

はないだろうか。

ピアニストは自分の楽器を持ち歩くことが出来ない。

その場その場で、毎回のように違うピアノと付き合わなければいけな

い。だからこそ、ピアニストは異常なほどピアノの状態に気を使うの

だろう。

エヴァンスは、ピアノに入りこむように弾く。

出来る限り近くで、今鳴っている音を聴き取ろうとしているようにも

見える。

ピアノとエヴァンスが一体化している。

この状態になるのはスローな曲になればなるほど顕著だ。

そこには、ピアノと一対一で対話をしている姿がある。

我々聴衆の入る隙は、ない。

これを、自己的、利己的だとか閉鎖的ナルシシズムだという人がいる。

確かにそうかもしれない。彼自身、かなりの個人主義者だったようだ。

しかし、それだからこそ、彼にしか出し得ない音があり、

マイルスをして、

「ビルは、ピアノはこう弾くものなんだ、というように弾くんだ」

と言わしめたのだろう。

私は、勿論、彼のライヴを聴きに行ったことはないが、残された映像

を見る限りでは、違和感を禁じえない。

エヴァンスはひとりで聴くもの、という固定観念、先入観がある。

エヴァンスを聴く。

これは、前の記事にもあったけれど、彼が部屋に籠もって弾いている姿

を、ドアの隙間から盗み聴きしているようなそんな、密かな愉しみでも

あるような気がする。




悲しいときに聴く曲

2005-03-18 04:57:24 | ビルエヴァンス
すぐに思い浮かんだのが、

エヴァンスの

「WHAT KIND OF FOOL AM I?」

(『The Solo Sessions, Vol. 1・2』または、

 『The Complete Riverside Recordings 』 DISC-10・11 所収)

63年1月録音だったのか・・・。62年1月くらいだと思ってた。

62年には『アンダーカレント』や『ムーンビームス』、『ハウ・マイ・

ハート・シングス』を録っている。

この年の春頃にようやく、ラファロの事故死から立ち直りつつあるよう

に感じられる。

リバーサイドに残した最後の作品は結局、お蔵入りのまま、彼の死後

まで陽の目を見なかった。あまりに生々しいので作品として発表する

のがはばかれたのでは?とも思う。


ここには、素のエヴァンスがいる。

赤裸々なひとりの芸術家の魂が露わになっている。

部屋に籠って一心不乱に弾いている彼の姿が、思い浮かぶ。


私が20代前半のとき、殊更よく聴いていた。

酒を飲みながら、「ダメな僕」のやりきれなさに浸るために・・・。

特に、「WHAT KIND OF FOOL AM I?」

エヴァンスは僕の為に弾いてくれているんだ、なんて甘ったれたこと

を考えていたのかもしれない。





一番聴くエヴァンスは?

2005-01-16 03:43:57 | ビルエヴァンス
一番聴くエヴァンス作品は、やはり、

『WALTS FOR DEBBY』

が、ダントツ。

あとは、ソロ作品が多くて

『Alone』

『Alone (Again)』

『Conversations With Myself』

『Further Conversations With Myself』

などがありますが、

『Solo Sessions Vol.1,2』と

『From Left To Right』

が、かなりお気に入りです。

前者は、落ちこんでいるときや、夜に、

後者は、穏やかなココロのときや昼間に、

よく聴きます。

裏と表みたいなものですね。


三位一体~『WALTS FOR DEBBY』

2005-01-08 00:30:01 | ビルエヴァンス
『WALTS FOR DEBBY』を聴きながら街を歩く、

というのもたまにはいい。なんて軽い気持ちだった。迂闊だった。

マイッタ。

ひとりジャズ喫茶。

エヴァンストリオの三位一体というのには、ずっと疑問を抱いていた。

どうしてもエヴァンスとラファロの対話に偏るような気がしていたのだ。

改めてイヤホンで聴いてみると、やはり偏りはある。でも、当たり前だ

よな。モチアンはドラムスなんだもの。モチアンの雰囲気作りの巧みさ

には脱帽です。

それでも、前半は三位一体に相応しいバランス。誰も突出していない、

コントロールされている。

それにしても、ラファロ。

あなたは26,7だったはず。

化け物ですよ。いまさらながらですがね。

こんなベーシストもう出てこないんじゃないですか?

現代に、過去にいますか?ジャズ通のあなた、教えてください!

音の分厚さ、アドリブのアイディアが泉の源泉のように尽きない。

何が、彼をその高みまで到達させるのか?

エヴァンスでさえも彼の才能をコントロールするのに大変だったと

語っている。

この次の彼らを聴く事ができないのは、我々にとって哀しいことだ。

でも、なにより哀しかったのは他でもない、エヴァンスだっただろう。

そして、ラファロの死後、エヴァンスは長い沈黙に入る・・・。

PEACE PIECE

2005-01-05 11:52:02 | ビルエヴァンス
エヴァンスの2枚目、『EVERYBODY DIGS BILLEVANS』収録。

レナードバーンスタインの名曲「Some Other Time」のイントロを弾い

ていたところ、天使が降りてきて、「あなたが弾きたいように弾いたら

いいんです」とビルにささやいたそうです。(妄想)

この曲をエヴァンスの傑作に数える人は多いでしょう。もはや、ジャズ

というカテゴリでは語り得ない、名演です。

「Peace Piece」これをなんと訳そう。

平穏の一片?

沈黙の作品?

平和のかけら?



NEW JAZZ CONCEPTIONS

2005-01-05 10:26:39 | ビルエヴァンス
エヴァンスのデヴュー作。26歳か・・・。

バドパウエルや、トリスターのの影響が濃いといわれるこの作品、私は

無論、好きです。エヴァンスのこういうハードな面はもともと持ち合わ

せていたんだろう。晩年のなりふり構わぬプレイと通ずるものを感じる。

いろんな可能性があふれている。

その中で、エヴァンスは選んだんだろう、彼の進むべき道を。

マイルスとの共演が何よりもエヴァンスの自信になったのだろうな。

「WALTS FOR DEBBY」の初演はこのデヴュー作で、演っている。

しかも、ソロで。

ベースのテディ・コティックはこの盤だけかな?

モチアンのドラムはいいなぁ。

56年・・・、時代の雰囲気を感じる。60年代と全然違う。ジャズは、

ピアノトリオは、このあとどんどん変わっていくんですね。