Smoke will be with me!

cigar, cigarette, pipe tobacco等、タバコと私の濃密な時間

けむりのゆくえ

2005-08-19 | book
 珠玉のエッセイと呼べる本を久しぶりに読んだ。早川良一郎の"けむりのゆくえ"である。

 故・早川氏は作家でもなんでもなく、ただのパイプスモーカーである。その彼が50歳になったときに書き、199部限定の私家版として出版した"A Study of Smoking"が日本エッセイストクラブ大賞を受賞し、本になったのだ 。パイプに興味を持ってからというもの、ずっとこの本を探していた。私が購入したのは、昭和49年に出版されたものを改定して新たに編集し直したものだが、それでも8年前の本。なかなか見つからなかった。それはさておき…

 つまり、この本に書かれているのは戦前、戦中、戦後から70年代までなのであるが、著者は実に飄々と日本にとって激動の時代を過ごしてきた。それは文章にも表れている。まさにパイプのけむりのように、である。どのエピソードにも優しさがあふれ、読む者を惹きつける。出版から30年が過ぎた今でも、それは決して色褪せていない。むしろこの飄々とした文体から著者の持つ強さを感じることさえある。それほど素晴らしいエッセイなのだ。

 きっと著者は今でも銀座をふらふらと彷徨っているに違いない。もしかしたら私が気付かないだけで、何度もすれ違ったかもしれない…そんな風に思う。是非パイプを燻らしながら、いや、パイプが無くともゆったりと読みたい本である。