Smoke will be with me!

cigar, cigarette, pipe tobacco等、タバコと私の濃密な時間

La Cumanesa Ricaurte Especial

2006-02-04 | cigar
 基本的にCuban Cigarが好きな私だが、決してCuba産にこだわっているわけではない。それこそ世界には一生かかっても吸い切れないほどのブランドやサイズのcigarが存在し、その中にはCuba産を超える物だってある。Venezuela産のLa Cumanesaというブランドはそんなcigarの一つだ。中でも私のお気に入りはRicaurte Especial。日本の小売価格500円、この小さなcigarには"Cuba産だけではない"というメッセージが込められている。cigarの魅力が凝縮されているのだ。

 その旨さに打ちのめされた私はしばらくの間、こればかりを吸っていた時期があった。そして吸いながら考えた…今でもこんなに旨いのだ、もし熟成したらどうなるのだろう?

 そして、しばらく寝かせてみようと決めた。そのためには…出来れば3年の時間が欲しい。しかしどういう方向に向かうのかが気になる。そこで、2年経った段階で一度味見をしようという計画を立てた。その2年が今夜だった。

 ラッパーはツヤツヤとして見るからに旨そうだった。フラットにカットした切り口も美しくコンディションは上々。ターボライターでフットを炭化させ、そのまま火を着けた…旨い、一口目から旨かった。若いcigarにありがちな嫌なエグ味も全く無く、ほのかに花の香り、そしてCumanesa特有の甘味もしっかりあった。何よりも嬉しいのはその煙の量だ。このサイズからは想像出来ないほどの煙が私を包んでくれたのだ。最後は少し辛味が感じられたが、これは時間が解決してくれるだろう。3年を迎える来年が楽しみになってきた。

*写真のリング、手前が今夜吸ったもの。
その後デザインが変更され、奥にあるリングに変わった。

ホームレスと二本のタバコ

2006-02-03 | tobacco
 ホームレスの多くはdowntownに集まっていて、小銭を拾ったり、吸い殻を漁ったりする姿をよく見かける。ところが先日、我が家から一番近いバス停に女性のホームレスが現れた。バスを待つ人たちにタバコをくれない?と聞いて回ったのだ。この辺りでホームレスの姿は稀であり、一瞬にしてその場は嫌な感じの空気に包まれたのは言うまでもない。

 当然、と言えば当然だが、タダでタバコを指し出すわけがない。持っている人が少ないということもあるだろうが、喫煙している一般市民にとってもタバコは高いのだ。聞いている本人もどうせもらえるわけがないと思っているのだろうが、まあ彼女達の仕事みたいなものだ。もしそこで、万が一貰えたら儲けものぐらいに思っているのだろう。

 どうやら何処の国でも若者は地べたに座るものらしい…バス停には地べたに座り込んでタバコを吸っている男の子がいた。ホームレスの女性はその若者にも尋ねた。すると、若者は彼女にタバコを差し出したのだ、それも2本!一番期待出来ないであろう人からの嬉しいプレゼント。彼女はその好意に狂喜乱舞、若者に抱きついて喜びを表わした。まさかホームレスにハグされるとは思わなかった若者は、それにどう応えていいかわからず戸惑ったが、何とか気を取り直して彼女をハグ。

 それまで流れていた嫌な空気が一瞬にして和み、皆いい気分でバスに乗り込んだ…という話しを妻から聞いた。実はその場に居合わせたのは妻である。「なんだかとってもイイものを見せてもらった気分」そう彼女は言った。

 時に、一本のタバコは人を幸せにする事がある。
この日、ホームレスは二本のタバコをもらった…きっとその味は最高だったに違いない。そしてその二本は、その場にいた全ての人に幸せをもたらしたのだ。

生物としての静物

2006-02-02 | book
 もしかしたら開高健の本を読むのは始めてかもしれない。少なくとも単行本を読むのは初めてだ。

 この本はある人がパイプスモーキングを始めるきっかけとなった本だと知って、どうしてもこの本を読みたくなった。読まなければならないと思った。ところが、ページをめくってみると、意外なことにパイプのことについて触れている部分はほんの少し。タバコやライターの話しもいくつかあるものの、なぜ彼はこの本を読んでパイプにのめり込んだのだろう…

 しかし、二度、そして三度と読むに従って、一つの事実が見えてきた。作者の身の回りにあるモノ達、それに対する作者の思いはモノを単なる物としてではなく自分の体の一部として、または良き相棒として受け入れ、時には正面から向き合っている。日本のヘミングウェイと称される作家は酒を愛し、釣りを愛し、タバコを愛した。パイプもまた然りである。特にパイプは"夜の虚具"と呼び、昼の虚具であるシガレットとは違い、夜こっそりと、ちびちび吸う一人の愉しみであることを強調している。

 この本が世に出たのは今から約20年前。 その時代はまだシガレットに市民権があり、パイプスモーキングはキワモノであったらしい。だからこそ作者は夜中、酒を片手に煙を燻らせた。相棒のパイプで、である。

 誰もが本物の相棒と供に暮らしたいと思うだろう。しかし本物と出会うにはそれなりの投資が必要だ。感情の起伏が激しかった作家のことであるから、かなりの投資をしたのは想像に難くない。しかし良き相棒となった物たちはいつも作家のそばにいて、彼の心を和ませてくれたはずだ。

 静物はいかにして生物(いきもの)になるのか…この本はそれを教えてくれる。そして私は、あのパイプスモーカーに少しだけ近づけた気がした。