Smoke will be with me!

cigar, cigarette, pipe tobacco等、タバコと私の濃密な時間

cigar scissors

2007-08-01 | cigar
 cigarの吸い口を作る時、私はギロチンカッターを使っている。
 
 小さな穴を開けるパンチカットも試したが、フラットカットはcigarの太さそのままの吸い口が出来る。だから煙がより円やかで、本来の味わいに近い…そんな風に言われている。それを信じているだけのことだが、言ってしまえば個人的な好みということに尽きる。自分の好きな方法で楽しめば良い、それが嗜好品であり、正しいシュミの在り方だと思う。話しをカット、吸い口に戻そう。

 切った時に綺麗な吸い口が出来るのはそれだけでも気持ちの良いものだが、その逆に上手く切れなかった時はちょっとだけショックを受けたりする。どのカッターも、まずは切れ味である。私は最初に吸った一本からずっと、一つのギロチンカッターしか使ってこなかったのだが、そのせいか少し、切れ味が落ちてきた気がしていた。そんな時、日本のバーで一度、ハサミを使って吸い口を作ったことがある。cigar scissorsというヤツだ。ソフトでありながら、同時にその切れ味の良さにちょっとだけ感激した。
 
 シガーシザースで作られる吸い口はフラットカット。ギロチンタイプとなんら変わりはない。しかしハサミを使って…というところには、切れ味という要素の他にギロチンタイプには無いアナログ感がある。これから始まる時間に対する敬意を払い、期待感を高めてくれるような感覚だ。きっとそんな気がするだけだとは思うが自宅でシガーシザース、これをヤリたくなった。
 
 今、手元にあるのはNat Shermanのcigar scissors。
高級感には乏しいが、その分気負わずに済む。そしてこれから煙と戯れるのだという雰囲気作りに貢献してくれている。


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Stanley CupはAnaheimへ

2007-06-15 | cigar
 今シーズン、NHLの頂点に輝いたのはDucksだった。
最後の相手、Ottawa Senatersを破ってStanley Cupを手にしたDucksはある男の祝福を受けた…

 NHLでは優勝した試合の直後リンクで表彰式が行われ、チームにStanley Cupが手渡されるのだが、ロッカールームに引き上げたあと、そこでメンバーと関係者はシャンパンとcigarで祝う習慣がある。2004年の優勝時に、私はそのロッカールームで面白い写真を見つけ、それについてこんな文章を書いた。Cohibaかどうかはわからないが、きっと今年もロッカールームはそんな風に盛り上がったに違いない。

 そしてDucksを祝福したのはcigarと縁を切っても切れない男、California州知事・Arnold Schwarzeneggerである。

 きっと彼のヒュミドールからは、とっておきのcigarがメンバーにプレゼントされたのではないかと密かに思っている。そんな情報はどこにもない。しかし私が彼なら絶対そうする。そんな仮定の話しをするならば…

 州知事就任の祝いとして贈られたCuban cigarの受け取りを断ったという逸話を持つSchwarzenegger氏のことだ、きっとDucksのメンバーにはArturo FuenteかDavidoffあたりのDominicanが渡されたはずである…少なくとも表向きには。

 全ての試合は終わり、これでNHLはシーズンオフに入る。ドラフトなど来期以降にかけてフロントは大忙しだが、選手達はそれぞれ自分の故郷に帰り短いオフを過ごす。何を隠そうDucksのメンバー、そのほとんどはカナダ人(じつはVancouver Canucksよりカナダ人率が高い)。

 彼らはカナダに里帰りをする、獲得したStanley Cupと供に。
そしてきっと…思う存分Cuban cigarを燻らせるのだ。


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自分への土産

2007-04-17 | cigar
 カナダ再入国の際、免税で持ち込めるtobaccoの本数は…cigarを50本、cigarilloを50本、cigaretteを200本…この中から一つを選ぶ。そしてこれ以外には200gのtobacco製品を持ち込める。今回は2人で再入国することになるからこの倍、である。こんな機会はそう滅多にあるものではなく、200g枠を別にすれば、100本のcigarは外せないということになり…
 
 さて、どれをどんなバランスで買うかという、これまた楽しい悩みになる。出番の多い物、前から欲しかった物、ここぞと言う時に吸いたい物、長期熟成を考えたい物…いろいろな想いが頭の中を駆け巡ることになるがしかし、ここには予算というものが関わってくるから脳みそはフル回転。
 
 結局選んだのは以下の4箱である。
 
- Cohiba Siglo 1
Cohibaというブランドの神髄はLancerosやEsprendidosにあると思う、それは確かだ。中にはSigloシリーズなんてCohibaじゃないという人もいるぐらいなのだ。しかしこの小さなVitora(サイズ)にもその精神が詰まっていると私は思っている、意外とCohibaらしいじゃないかと。

- Bolivar Coronas Junior
cigarを始めて日が浅い私は、敢えてBolivarというブランドは避けてきた。あまり手を広げてしまってもいけないかな、と。少ないBolivar経験の中ではPetit Coronasがお気に入りだったが、どうも私はこのぐらいのサイズが好きなのだな。以前から気になっていたということもあり、更に短いこれを今回は手に入れた。

- Vegas Robaina Famosos
御歳88才にして今もなお、日に4、5本のcigarを楽しんでいると言うAlejandro Robaina翁のブランド。現代においてRobustoというサイズはある意味スタンダードサイズになりつつある。というのは、太くて煙量が豊かなため短い時間でも満足感が味わえる…つまり忙しい現代人にとってもってこいのサイズというわけだ。もっともその反面変化に乏しいという欠点もあるのだが…それはさておき、変化という項目を除き、味わいと香りという項目に絞ると、私の中ではこのFamososがベストRobustoである。

 ちなみにこれは今年10月にやってくる私の誕生日プレゼントである。送り主は妻。だから最低でも10月までは彼女の物、火を着ける事は禁じられている。
 
- Partagas Lusitanias。
普段はぐっと小さいShortsというサイズを吸う事が多い。Partagasらしさが凝縮されたShortsは私の最も好きなcigarの一つだ。しかしもし、時間がたっぷりあり、予算も許すならばこのLusitaniasを選びたい。Double Coronaはやはりcigarの王道だと思う。その大きなサイズ故、なかなかその機会はやってこないが、ここ一番という時に楽しみたい。
 
 さて、奇しくも今回持ち帰った4箱は全て2006年の製造。共通点は見た目(ラッパーの色)が焦げ茶色とも呼べるほどに黒っぽい。'04の物は薄茶、'05年の物は赤いと感じたが…はて、'06は焦げ茶なのだろうか?それともたまたまだろうか…ま、旨ければ文句は無いが。

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Vancouver空港のcigar shop

2007-04-03 | cigar
 日本へ帰るためVancouver空港へ行くと、辺り一帯工事中だった。すでに国内線のターミナルは工事が終わっており、すっかり模様替えが済んだ今は国際線の拡張工事が進んでいる。3年後のオリンピックを控え、空港からダウンタウン(そしていくつかの競技が行われる予定のRichmond市)まで乗り入れるSkytrain(ゆりかもめのような無人モノレール)の工事を始め、空港ターミナルも拡張中。
 
 どうやらターミナル自体の工事は終わり、レストランや免税店などの利用客にとって楽しい施設が少しずつ…完成したものから営業を始めている段階のようだ。旅行ならばもちろん、たとえそれが出張であってもなんとなくウキウキする。買い物するしないに関わらず、それらの店を冷やかすのも空の旅の一部である。フライトまでの時間に余裕があったのでぐるりと一回りしてみると、なんとそこに新しいcigar shopを発見。
 
 品揃えをチェックするとCubaの代表的なブランド、CohibaやMontecristo、Romeo Y Julietaをはじめ、BolivarやPartagas、Trinidadなどの箱が並んでいるのが確認出来た。ベテランsmokerを喜ばせるような掘り出し物はたぶん無いと思うが、代表的なブランド、ビトラは揃っていた。
 
 ウォークインと呼ぶには広過ぎるそこには大型の加湿器がむき出しで置かれていて、Humidor(ヒュミドール)は外からも見えるように全面がガラスになっている。cigarの保管には疑問符を付けざるを得ないが、これはcigar smokerの購買意欲を刺激する事を優先した結果だろう。
 
 世界の流れは喫煙を除外する傾向にある。
しかし名だたる空港にはこうしたcigar shopがあるのはある意味常識とも言える。世界にアピールするためにはこのぐらいの店があるべき…今までなかったのが不思議なぐらいなのだ。
 
 こんな店が存在するのであれば買ってすぐに火を着け、煙を燻らせるスペースが傍にあれば…と思うのはきっと私だけではないはず。そんな場所があれば、たとえフライトが数時間遅れようともゆったりとした時間を過ごせるからだ。しかし、残念な事にそれは用意されていない。

 もしどうしてもと言うならば、今はまだ空港内に一ヶ所だけ設けられたところへ移動するしかない。しかしそこはゆったりと煙を燻らせることが出来る…とてもじゃないがそんなスペースではない。この唯一の場所が無くなるのも時間の問題だと私は思っている。
 
 買える店が出来たのなら、それを楽しむ場所もあるべき…そう考えるのはごく自然なことだと思うが、世の中は不自然な方向へ向かっている。その流れに逆らうのは…いやいや、店が出来ただけでも良しとしなければいけないか。

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Romeo Y Julieta Short Churchills

2006-12-29 | cigar
 新しいサイズや限定モノにはトンと縁のない私だが、久しぶりに新製品に手を出した。数ヶ月前に発売されたRomeo Y Julieta Short Churchillsというcigarだ。これを選んだのはCity Cigarのオーナー・David。実は前日、彼にメールを出しておいたのだ、「明日は店にいる?一緒にcigarを吸わないか」と。
 
 「自分で選ぶ?それとも俺が選んでいいか?」

 私は彼に絶大なる信頼を寄せている、当然おまかせした。
最初に選んだのはH. Upmann Magnum46だったのだが、吸った事があると言うと(いや、実は自宅にキープしてあるぐらい私の好みだ)、じゃぁ吸った事のないヤツがいいなと選んでくれたのがShort Churchillsだった。

 すでに客と一緒に吸っていた彼は、「俺と同じテーブルに吸われよ」とラウンジに案内してくれて、早速火を着けた…以下はその感想…

 良くも悪くも"よく出来ました"的な葉巻。
旨いか不味いかと聞かれれば旨い部類に入るとは思うが、強さもそれほどなくロミオらしいフルーティな感じも少ない。基本的にウッディテイスト。あぁ、確かにキューバ産ね、でもこれってホントにロミオ?という雰囲気。

 ただ、吸ったのが自宅でなかったこと(私は自宅で吸った味わいを基本と考えている。なぜか他の場所で吸うとまるで印象が変わってしまうのだ。)、そして夕食前で少し空腹だったことを考慮すればこの葉巻がもっと美味しく感じられる可能性、余力はあると思う。まぁ、まだ若い葉巻であるし、たった一本で判断することは危険だ。しかしそれを差し引いても敢えてこれを選ぶ理由はない気がする。少なくとも、強い葉巻が好きな人やヘビーな食事の後ではちょっと物足りないだろう。吸うなら昼食後、そんな葉巻じゃないだろうか。

 ロミオらしさを求めるならば同じサイズのExhibicion No.4の方がいいと思う…
(厳密に言うとExhibicion No.4の方が少しだけ細い)

 

 

 他の客と話しながら(まあ、そのほとんどは聞いてるだけだが)、こうして彼とcigarを楽しむのは本当に久しぶり、前回がいつだったのか思い出せないぐらいだ。Davidは言う…「もっとちょくちょく来いよ、旨いcigarでリラックスすればいい。ここにはいろんなヤツが集まるから話題には事欠かないし…な?」
 
 そう、このラウンジはじつにイイ。
ここに来る人はもちろんcigarが大好きだ。基本的に、集まる人種はある種の成功を収めた人が多く、本来ならば私など出入り出来るレベルではないのだが、こういう場にありがちなハイソな雰囲気はゼロ。Vancouverらしくスーツ姿の人は誰もいない。カーゴパンツにスニーカーなんていうカジュアルな服装で、コーラなんかを飲みながらcigarを燻らせ会話を楽しんでいる。話題はcigarに限らない、むしろcigarの話しはほとんど出ないのだ。もっともこれは私の座ったテーブルがたまたま常連ばかりだったからだとは思うが…

 結局Davidと二人で話しが出来たのは閉店時間が過ぎてからのほんの30分程度。しかもShort Churchillsは期待したほどではなかったが、楽しい時間を過ごすことが出来たし、彼と彼の妻、二人への年末の挨拶も出来た。来年は月に一度ぐらいはここに来られるようにしたいと思う。

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特別な日にcigarを贈る

2006-11-08 | cigar
 cigarを選ぶという行為はとても楽しい。
前回はこういうのを吸ったから、今回はもう少しこんなヤツがいいか、それとも同じ銘柄で違うサイズを吸うべきか?など、その選択肢は無数にある。それがもし自分にとって最初の一本だとしたら慎重になるべきだろう。そして更に、それが誰かの為の一本だとしたら責任は極めて重大である。なぜなら、cigarを好きになるも嫌いになるも、選んだ一本にかかっているからだ。

 それを承知で今回、私はある人の記念日にcigarをプレゼントすることに決めた。もちろん緊張感はある、しかしきっと好きになってくれるはず…同時にそんな自信もある。そして何よりも喜んでくれると確信しているからだ。だったらその緊張と供に楽しんでしまおう、楽しまなければ損である。
 
 まず大事な事は、その人が普段cigaretteを吸うかどうかだと思う。吸う人ならばタバコを吸うという行為に対し、抵抗が少ないと考えられる。しかし同時に、吸った煙を灰に入れるという行為が喫煙だと思っている可能性も高い。もちろん吸い方は人それぞれだが、(基本的に)吹かすだけの喫煙法に馴染めないことがあるかもしれない。
 
 では、普段吸わない人はどうか?
喫煙に対する抵抗はかなり大きなものになるだろう。そしてきっとcigarの太さ、長さ…そのサイズに圧倒され、火を着ける前に引いてしまうだろう。だから最初に断っておく。

 "太ければ太いほどその味は円やかであり、長ければ長いほど味の変化を感じる事が出来る"
 
 これがcigarの基本的な考え方だ。もちろんブランドによって特徴も性格も違うから、味わいのベクトルが自分に合っていると思ったら太さの違い、長さの違いでどう変わるのか…それを探るのもイイ。もっともこれは二本目以降の話しだが…
 
 サイズが大きければ時間もかかる。
黙って煙と向き合うもよし、大好きな人と語らうもよし…実はこの"時間"こそがcigar最大の楽しみだと思う。

 特別な時間を過ごすための準備もまた大切である。合わせる飲み物は何がいいか、また直前に摂る食事はどんなものがいいか…その日は外で食事をするかもしれない。だったらその店の主に相談するといい。そこそこの店ならばcigarに関する知識は豊富なはず。運悪く禁煙の店だったらバーに移動すれば済む事だ。

 なにしろ初めてのcigarだ。届いた一本を前に右往左往するするかもしれない。しかしそれも楽しんでしまうことだ。準備する時間さえも楽しめたなら、きっといつもと一味違った記念日になるはずだ。

 残念ながらその様子をこの目で見る事は出来ないが、初めての体験に緊張し、期待感の中で火を着ける姿を想像しながら私も自分の煙を燻らせるつもりだ。初めてのcigarをネタに、大いに記念日を楽しんで欲しい。

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Monte Cristo Sandwich

2006-10-04 | cigar
 Salt Spring Islandのシンボル的カフェ・Tree House Cafeで昼ご飯を食べた。Richie &マル夫妻と妻、そして私の4人は席へ着き、どれにしようかメニューとにらめっこ。すると見慣れない、それでいながら馴染みのある名前が付けられているサンドイッチが目に入った。その名もMonte Cristo Sandwich。
 
 Montecristoと言えばHabana cigarの代名詞。Cohibaが登場するまではCubaのトップブランドだった銘柄。中でもMontecristo No.4は人気があり、モンテと言えばNo.4と言っても過言ではないほどポピュラー。文句無しに世界のベストセラーだ。しかし、メニューにあったのはMontecristoではなくMonte Cristo、モンテとクリストが離れている。はて、このサンドイッチはいったい…するとマルちゃん(フランス系カナダ人)がこう言った、

「これは昔からあるサンドイッチだよ、卵に付けたパンをグリルするんだ。ボクの大好物!」
 
 それは旨そうだ。いや、cigar smokerなら注文しないわけにはいかない。目の前で大好物だと言う人がいるのもお構い無しに私はMonte Cristo Sandwichを注文した。
 
 運ばれてきたそれは…巨大だった。分厚いパンに挟まれたハム、スイスチーズ、トマト…それはまるで布団(笑)

 パンがこのサンドイッチの特徴だ。ちょうどフレンチトーストに具が挟まっている感じとでも言えばわかりやすいだろう。シロップ抜きのフレンチトースト、そのサンドイッチ。

 ソフトな歯応え、ふんわりとしていながら重い…ボリューム満点のサンドイッチは文句無しに旨かった。
 
 どうやらこのサンドイッチのルーツはフランスらしい。
croque madame(クロックマダム)とかcroque monsieur (クロックムッシュ)とか呼ばれるホットサンドをアレンジしたものらしく、すでに1940年代にはLAにあるレストランのメニューに載っていたそうだ。

 オリジナルはベーコンとチーズと鶏肉を使うらしいが、ポイントは具ではなくやはりパンだろう。卵に浸し、バターでグリル(或いはディープフライ)すること、これがMonte Cristo Sandwichの全てだと言える。店によっては上から砂糖をふりかけてあったり、メイプルシロップが添えてあったりするらしいので、まさにフレンチトーストで作ったサンドイッチである。

 さて、このサンドイッチの語源については諸説あるようで、どれも決め手に欠ける。最も単純な理由として挙げられているのが前述のcroque monsieur。croqueとmonsieurの順番を逆にし、更にもじったものだという説。もしそれが本当であればcigarのMontecristoとは何の関係もないということになる、しかし…

 休日のブランチにMonte Cristo Sandwich、腹を満たした後にMontecristoを燻らす…cigar smokerなら一度は試してみるべきだろう。きっと合うはずだ。

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artisan & artist~ part2

2006-08-21 | cigar
 職人は綺麗な瞳をしていた、そして若かった。
どこかで会ったことがあるような気がしたのだが、Cuba人に友人はいないし、ましてトルセドールに知り合いはいない。どこにでもいそうなラテンの兄ちゃんという雰囲気だったから、そんな気がしたのだろうと家に帰った。そして2時間後…
 
 しまった!やっちまった…
思い出したのだ、あそこでcigarを巻いていた男のことを。あのトルセドールはただの葉巻職人じゃない、あの男はマスタートルセドール。職人になってわずか3年で葉巻職人の最高位・9段になったHamlet Jaime Paredes氏その人だ。何を隠そう私がRomeo Y Julieta工場に行ったのも彼に会うためだった。あの時彼はアジア各国を回っていて香港から戻ったばかり、休みを取っていて会えなかったのだ。彼が目の前で巻いたcigarに火を着けるのが私の目的の一つだったのだが、その彼がまさかあんな小さなショッピングモールにいるとは…

 しかし無情にも時計の針はすでに6時、モールは終わっていた。そしてあのデモはこの日だけ。いくつか気がつくチャンスはあったはずだが…思い出せなかった自分を悔やんだ。どこで間違ったのか…間違った場所の代わりに思い出したのは年配の女性が彼に話しかけた時のことだ。

「あんたもsmokerなの?」
「そうですよ」
「まーbad boyね」
「…(苦笑)」
「そんな葉っぱいじってると体が変になっちゃうわよ」

 彼は社会主義国・Cubaが海外に派遣するほどの人間、国の代表だ。誇りもあるだろうし、国に戻れば結構な地位だろう。もちろんそれなりのcigar shopならば、あんな会話は有り得ない。cigar smokerの間では邪険に扱われる事など決してない。しかし、あの小さなモールではこんな会話が交わされていたのだ。そのギャップを思うと笑える。
 
 それにしても、これで二回目だ。
一度は会いに行き、彼もHavanaにいたにも関わらず会えず仕舞い。今回は向こうからやって来てくれたのに私が気付かなかった…これは間違いなく縁が、いや”煙”がある。きっと三度目は一緒に煙を燻らせることが出来るはず、そう信じている。

artisan & artist~ part1

2006-08-16 | cigar
 近所のショッピングモールに買い物に行った。少し前に買ったケーブルが短かったのでそれを返品し、長い物を買い直すためだ。目指す物も目的もはっきりしていたので用事は10分ほどで済んだのだが、車まで戻ろうと出口へ向かう途中、小さな机に向かって作業をしている男が目に入った。
 
 ちょうどSamの店の前。
そこは私がcigarを始めた頃時々顔を出していたキオスクのような店で、当時その店の主人はSamと言う名の韓国人だった。Samの店というのは私が勝手に付けた名前である。しばらくしてSamはリタイア、オーナーは別の韓国人に代わった。

 そのSamの店はcigarを扱っている。スナックや雑誌、新聞やらコーラやら…そんな店にしては珍しくcigarの品揃えが豊富だ。オーナーが変わってからはヒュミドールになっている棚をチェックする事も無くなったが、それほど回転がいいとは思えない。特にCuba産は高くて売れないだろうから、モノによってはビンテージになっているものもあるんじゃないか?通る度にそんなことを思ったりして…
 
 そう、その店先に置かれた小さな机…いや驚いた。なんとcigarを作っていた。そこに腰掛けていたのは葉巻職人・Torcedor(トルセドール)だったのだ。横に控えていたのはSamの店のオーナー、の息子が(決してSamの息子ではないのでご注意を←わかる人にはわかる、わからない場合はそのままで結構というシャレです、はい)、CubaのRomeo Y Julieta工場で働いている職人だと紹介してくれた。そう言えばCuba旅行の時、Romeo Y Julieta工場併設の店に行ったっけ…Cubaの葉巻職人は自国の葉巻宣伝の為に世界各国を訪れデモを行っている。「トーキョーにも行ったことがあるよ」スペイン語訛りの残る英語で職人は言った。
 
 それにしても見事だった。
普通、cigarを作る時は葉を固めるために木型を使う。固めた後、バインダーと呼ばれる葉で巻き、最後に大外の葉・ラッパーで巻くのだが、この時はデモということもあって木型を使わず全て手で巻いていた。基本的に質問などは、そのオーナーの息子が受け付けていたのだが、それでも道行く人はお構い無しに直接職人に話しかける。そんなわけで彼自身が質問に答えなければいけない場面が結構あったのだが、その時も手は止まらなかった。目は手元から離れているのに、である。速い、そして正確。指先の感覚で作業をしていた。私がCubaで見た職人とは明らかにレベルが違う。まるで指先に目が付いているようだった。

紫煙、Berlinの空に舞う

2006-07-14 | cigar
 Italyが優勝した瞬間、ちらりと監督のMarcello Lippiが映った。World Cup優勝の瞬間であるから監督としても最高に嬉しいはず。普通ならば両手を上げガッツポーズの一つもし、よっしゃー!と声でも出すはずだ。ところが彼はくるりと後ろを向き、上着を手にした。私はその姿に違和感を感じた。そして画面は喜ぶ選手達を追い始めた…
 
 大歓声に包まれた表彰式の後、選手、スタッフ、関係者が入り乱れ、勝ち取ったカップに触ろうと皆が手を伸ばしていた。そこにLippi監督の姿もあった。当然だ、選手達を優勝に導いた彼にも触る権利がある。左手を伸ばし、嬉しそうにカップに…と、その右手にcigarがあったのを私は見逃さなかった。その時、彼の手にあった細身のcigarは1cmほど灰になっていた。まさに優勝が決まったその時、彼はcigarに火を着けたと思われる。
 
 そこで私ははっとした。彼が上着を手にした理由…あれはポケットに入っていたcigarを取るためだったのではないだろうか。



 確かヨーロッパではピッチ上は禁煙だったはずだが…BerlinのOlympic Stadiumがそうだったかどうか、私は知らない。しかし、たとえそうだったとしても、この1本は許してあげて欲しい。彼は仕事を全うし、最高の栄誉に輝いたのだから。そしてこの時、すでにその職から退くことを決めていた可能性も高い。きっとこのvictory cigarには彼の様々な想いが込められていたはずである。