新年あけましておめでとうございます
はやいもので、当ブログの開設(2007年3月16日)から干支をひとまわりして、ふたたびの年となりました。開設の頃は、鳥インフルH5N1が新型インフルエンザ化するのではないかと恐怖の空気を日本列島を覆い、厚労省HPには最大64万人死亡かもという数字がアップされていた頃でした。そうした雰囲気を反映して当サイトも「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」と名付けましたが、今にして思えば、これは渡航医学の、感染症理解のパラダイムシフトの号砲でした。それから12年の歳月を経てみれば、エボラはスーダンやコンゴの山奥のマニアックな病気から、日本中のメディアが繰り返し検疫所の映像を流しては大騒ぎの現実的な病気になり、中東のMERSは隣国で騒動、さらに中南米のジカ熱、代々木公園のデング熱と国境の向こうの感染症はすっかりメディアの”数字がとれる”人気テーマになり上がってゆきました。かつて日本が”輸出国”と指弾された麻疹は、排除認定を経て、「海の向こうから持ち込まれて、ある日突然、大騒動が始まる病気」へとすっかり表情を変えました。その変化のすさまじさはあらためて唸るばかりです。
さて、新年2019年の渡航医学会のトピックはどうなるでしょうか。管理人的にいくつかの予想を立ててみました。
1.麻疹の持ち込みは今年も発生。世間があっと驚く場所から入ってくる。
関空麻疹からジャスティンビーバーのコンサート、(多分タイ)⇒台湾⇒沖縄麻疹、と毎年ひと騒ぎが起こる麻疹ですが、今年は世間がアッと想定外の場所から入ってくると予想。ローマの休日を過ごした、フッレンチェ遺跡帰りの旅行者から・・とか、フランス人インバウンドとか、ダークホースはブルガリアからの・・・とか。この疾患はWHO管轄では日本が含まれるWPRO西太平洋が唯一増えてなくて、それ以外はすべて増加。なかでもポピュリスト政治家ほかに邪魔されワクチン接種レートが落ちてるイタリア・フランス・ルーマニアあたりが、ここ数年のインドネシアやタイ台湾と並んだ流入元になるかもしれません。(当サイトの常連さんはあまり驚かないオーソドックスな予想かとも思いますが、、、)ラグビーW杯のマスギャザリングも大変気になるところですが、この出場国にもイタリアだフランスだイングランドだと、麻疹国が顔をそろえています。
2.コンゴのエボラ(EVD)は600例越え
コンゴのエボラが全然おさまる気配がないのは、現地が戦乱地ということに加えて、ウガンダ国境に近い現地ではかつてのツチ族フツ族バトルを国連が停めなかった恨みで国連WHOが信用されないとか、選挙の延期と混乱とかの要素もあります。管理人は、あの国にクーデターが起こり大統領が変わり、ついでに国の名前までザイール⇒コンゴと変わってしまったあたりで、駐在地パリからこの国へ年2~3回ほど行き来しておりました。その頃の実感からは、選挙のあとにまたひと騒動起こるだろうと思っております。つまり、エボラ対策もなかなか強化できません。いま500例台ですが、次の大台にもタッチすると予想します。
3.蚊媒介疾患も、ガードが下がれば・・・
そういえば、旧年の「蚊もなく孵化もなく」キャンペーンはそれなりに盛り上がったのでしょうか。ここらへんの対策に対する一般世間のテンションが下がり緩んでくると、デングだジカだチクングニヤだと、火元のアジアで増えているものが我が国でも・・・なんて予想は当たってほしくないですね。
ともあれ、新年も、渡航医学的視点で観察し発信してゆく所存です。
なお、管理人自身は、旧年2018年に発生したいくつかの変化・・産業医業務では大阪イングリッシュビレッジの外国人対応、労働衛生コンサルタント取得、本職の大学では新学科(保健教育学科)新設にともない「感染・免疫学」なる科目担当を拝命して感染症が本職の一角をしめて好き勝手な放言ばかりでは済まなくなったこと、etc・・を受けて、それらを固めてゆく一年となります。引続きご指導ご鞭撻をいただけると幸いです。
新年も何卒よろしくお願いいたします!
2019年 元旦
勝田吉彰