夜明け前午前5時

徹夜明けの思いつきレベルな発想を、推敲なしでお届け

ジェイルバード

2006-03-30 23:33:10 | 本:小説

カート・ヴォネガットの比較的最近の作品
っていっても1979年だけど。


カート・ヴォネガットは、ひとつの作品の中で、「ユーモア」と「皮肉」、
「希望」と「絶望」が、ものすごい揺れ幅で入り混じるのが特徴だなー
と、本を読むといつも思うのです。
SFだから、当然物語自体の揺れ幅もすごいですが。

で、すごい揺れ幅でも、いちおう作品ごとに重心はあって、ジェイルバードは
どちらかというと、「皮肉」「絶望」寄りに感じる。
うーん、その辺がどうもあまり好みじゃない。

さらに、皮肉も、なんとなく年配者特有の空気があって、そこも気になります。

物語自体のレベルはすごく高し、いろんな人物が現れ、物語の展開が速いにも
かかわらず、無理なく読めるのはなかなかすごい。

でも、やっぱこの小説は諦念が強すぎる。
最後、ストーリーとしては救われる方向に展開していくけれど、そこに「希望」
とかは感じないのです。「諦め」の空気が強い。


ヴォネガットだと、「タイタンの妖女」がものすごく好きなのですが、その理由は
ものすごい揺れつつも、最後、あっと言わせるようなやり方で、希望とやさしさを
見せてくれたところなのです。
タイタン~の最後の展開は、本当に、泣けてくるぐらい感動したなぁ。

初期の作品で読んでないのがあるから(「猫のゆりかご」とか)、そっちを今度は
読んでみよう。