薬事法にも、商業道徳にも反する武田薬品の降圧剤誇大広告
謝罪になっていない長谷川社長の記者会見
武田薬品工業が製造販売する高血圧治療薬「ブロプレス」の医師向け宣伝広告が、誇大広告であったことが発覚し、問題になっている。NHKや新聞各紙が大きく報道する中で、3月3日、同社長谷川社長が記者会見を開き、事実を認め謝罪した。しかし、長谷川社長は「不適切なプロモーションを深く反省する」と頭を下げただけで、「データの改ざん、ねつ造はない」と経営責任は認めず、誇大広告による薬事法違反もないといいきった。
<写真は、ANNニュースより>
① 何が誇大広告なのか、今回の事件の概要
2001年から05年に懸けて、武田薬品の降圧剤「プロプレス」とファイザー社などの「アムロジピン」のどちらが効くか、臨床データ(エビデンス)をとる研究が行われた。この研究のため、データセンターの京大には武田薬品から25億円もの寄付金が投じられ、また、研究員として武田の社員が送り込まれた。
研究結果は、どちらも効能には、たいして変わらないことが判明したものである。ところが武田薬品が、この研究データを自社のブロプレスの方が効果があるように見せかけて使ったのが今回の事件である。手口は、武田が宣伝用に使った学会発表用のグラフは、持続的に病気を抑える効果があるように見えることを悪用したものである。武田薬品は、データのねつ造や改ざんは無いというが、正式論文のグラフを使わず、違いがあるかに見えるグラフを使ったことは、他を偽る行為に他ならず、誇大広告以外の何者でもない。
② 今回の武田薬品の行為は、著しく商業道徳に反する行為
正式グラフで無いグラフを使い、他メーカの製品より自社製品の方が優れているという宣伝の仕方は、商業道徳違反そのものであり、プロモーション上不適切であったで済まされる問題では無い。違いが無いのに違いがあるかのようにいわれ、比較された他メーカから損害賠償請求を受けても断れないだろう。
弱肉強食の経済界とはいえ、医学学会のデータを悪用し、自社製品を売り込もうなどというやり方は、経済同友会の会長であり、業界のリーダーでもある長谷川社長として許される行為では無い。業界のトップとして失格であり、武田薬品の社長としても責任をとらなければならない重大問題である。
③ お金で臨床データ(エビデンス)を買うような武田薬品のやり方の問題点
今回の事件のもう一つの問題点は、自社製品の優位性を明らかにするために、薬効比較を大学の研究テーマとして提供し、多額の寄付金を提供した武田薬品のやり方である。お金をだしたのによい結果が出なかった為に苦肉の策として研究グラフの違いを悪用し、有利に武田の宣伝に使ったのが今回の事件に他ならない。これまでの薬害問題の中には、こうした製薬会社と大学の癒着から生まれたケースが多いが、薬害の無い薬を作る為にも製薬会社と大学・研究機関の癒着を断ち切ってもらいたいものである。
④ 第三者機関の構成は公開に
記者会見で長谷川社長は広告作成経過などを調査するために、第三者機関を設置すると発言した。しかし、それがどのような構成のものか明らかにしていない。具体的な会社名、個人名が公表され初めて公正な第三者機関といえるものである。
今から3年前、武田薬品は新設した湘南研究所(藤沢市)でバイオ排水を漏出する事故を起こしたときに、外部機関に監査を依頼すると公表したが、調査した企業名は外国に本社がある会社というだけで一切明らかにしなかった。監査内容も、管轄する藤沢市にも市民にも、武田薬品が取捨選択した報告書の抜粋を公表するにとどまった。これでは、真実は市民に明らかにならならなかった。
第三者機関の構成を公表させないと、今回のエビデンス報告のように、武田の都合のよい報告書にすり変えられてしまう恐れがある。武田は、そういう小賢しやい方に長けており、誤魔化されないようにしなければならないというのが、今回の事件の教訓である。
謝罪になっていない長谷川社長の記者会見
武田薬品工業が製造販売する高血圧治療薬「ブロプレス」の医師向け宣伝広告が、誇大広告であったことが発覚し、問題になっている。NHKや新聞各紙が大きく報道する中で、3月3日、同社長谷川社長が記者会見を開き、事実を認め謝罪した。しかし、長谷川社長は「不適切なプロモーションを深く反省する」と頭を下げただけで、「データの改ざん、ねつ造はない」と経営責任は認めず、誇大広告による薬事法違反もないといいきった。
<写真は、ANNニュースより>
① 何が誇大広告なのか、今回の事件の概要
2001年から05年に懸けて、武田薬品の降圧剤「プロプレス」とファイザー社などの「アムロジピン」のどちらが効くか、臨床データ(エビデンス)をとる研究が行われた。この研究のため、データセンターの京大には武田薬品から25億円もの寄付金が投じられ、また、研究員として武田の社員が送り込まれた。
研究結果は、どちらも効能には、たいして変わらないことが判明したものである。ところが武田薬品が、この研究データを自社のブロプレスの方が効果があるように見せかけて使ったのが今回の事件である。手口は、武田が宣伝用に使った学会発表用のグラフは、持続的に病気を抑える効果があるように見えることを悪用したものである。武田薬品は、データのねつ造や改ざんは無いというが、正式論文のグラフを使わず、違いがあるかに見えるグラフを使ったことは、他を偽る行為に他ならず、誇大広告以外の何者でもない。
② 今回の武田薬品の行為は、著しく商業道徳に反する行為
正式グラフで無いグラフを使い、他メーカの製品より自社製品の方が優れているという宣伝の仕方は、商業道徳違反そのものであり、プロモーション上不適切であったで済まされる問題では無い。違いが無いのに違いがあるかのようにいわれ、比較された他メーカから損害賠償請求を受けても断れないだろう。
弱肉強食の経済界とはいえ、医学学会のデータを悪用し、自社製品を売り込もうなどというやり方は、経済同友会の会長であり、業界のリーダーでもある長谷川社長として許される行為では無い。業界のトップとして失格であり、武田薬品の社長としても責任をとらなければならない重大問題である。
③ お金で臨床データ(エビデンス)を買うような武田薬品のやり方の問題点
今回の事件のもう一つの問題点は、自社製品の優位性を明らかにするために、薬効比較を大学の研究テーマとして提供し、多額の寄付金を提供した武田薬品のやり方である。お金をだしたのによい結果が出なかった為に苦肉の策として研究グラフの違いを悪用し、有利に武田の宣伝に使ったのが今回の事件に他ならない。これまでの薬害問題の中には、こうした製薬会社と大学の癒着から生まれたケースが多いが、薬害の無い薬を作る為にも製薬会社と大学・研究機関の癒着を断ち切ってもらいたいものである。
④ 第三者機関の構成は公開に
記者会見で長谷川社長は広告作成経過などを調査するために、第三者機関を設置すると発言した。しかし、それがどのような構成のものか明らかにしていない。具体的な会社名、個人名が公表され初めて公正な第三者機関といえるものである。
今から3年前、武田薬品は新設した湘南研究所(藤沢市)でバイオ排水を漏出する事故を起こしたときに、外部機関に監査を依頼すると公表したが、調査した企業名は外国に本社がある会社というだけで一切明らかにしなかった。監査内容も、管轄する藤沢市にも市民にも、武田薬品が取捨選択した報告書の抜粋を公表するにとどまった。これでは、真実は市民に明らかにならならなかった。
第三者機関の構成を公表させないと、今回のエビデンス報告のように、武田の都合のよい報告書にすり変えられてしまう恐れがある。武田は、そういう小賢しやい方に長けており、誤魔化されないようにしなければならないというのが、今回の事件の教訓である。