鈴木信夫の詩の世界 ~筋ジスと向き合った40年~

筋ジストロフィーと向き合い、2011年5月、40歳の若さでこの世を去った詩人鈴木信夫の心に響く詩を紹介します。

ああ、ないものねだり

2016-10-17 | 
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鈴木信夫の詩手紙を中心にした作品から


2008年から絵手紙作家の浅田美知子さんとの交流が始まりました。
詩手紙そのものや書き加えたコメントから選んで紹介してゆきます。
一部、詩集に載せたものもありますが、未発表のものが中心です。
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「隣の芝生」という言葉があります。
他人のものは何でもよく見えるということですが、人は誰しもこういう気持ちを持つものです。
鈴木信夫の場合はその差があまりにも大きいためこのような詩になったのかと思います。


        ああ、ないものねだり
                                    2008年3月

ぜんぶが順調で、素晴らしい人生が描かれている
そんな人ばかりしかいないように見えるのはなぜ?
ちゃんと仕事を手にして
しっかり結婚を手にして
かわいい子供を手にして
あたたかい家庭を手にして
それこそが「しあわせ」だと思い、また涙だね

僕が、もうこの世で手にすることはないもの
僕は、といえば…
仕事もできなくなって
結婚なんてあるはずもない、誰が相手にするものか
子供がいる喜びさえ味わえない
家族の手をわずらわすばかり
なんて「ふしあわせ」だと思い、また涙だね

こんな心でも、ぜんぶわかって愛してくれるのは
天国にいる「神様」くらいで
そばにいる「家族」くらいで
その外には「自分じゃなくて良かった」「かかわらないでおこう」
そんな冷ややかな現実が顔をのぞかせている
僕は、つい僕を責めてしまう…
「お前はバカか」「ここから消えてしまえ」とね
なんて「ふしあわせ」だと思い、また涙だね

ああ、いつもいつでも、ないものねだりになってしまう

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